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第一章・墓標を立てる者
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Ⅴ
階段は思ったほど長くは続かず、三、四階分を降りきったところで終わった。
そこは上下三車線が敷かれた巨大なトンネルだった。少女を追ってここまでやってきた勇三は、地下にあらわれた巨大な建造物に思わず嘆息した。
少女の姿を探してはみたが、目の届く範囲には見当たらない。いよいよ途方にくれかけたそのとき、すぐそばの壁にかけられたプレートに書かれた文字が目に止まる。
【〝イ〟號地区――第八昇降機ゲート連絡通路】
それ目に首を傾げる勇三に対して、ナトリウム灯をはね返す金属性のプレートは答えの代わりに矢印を示してくるだけだった。
昇降機ゲートということは、この先にエレベーターのようなものがあるというのか。ひとまずプレートの案内にしたがって進むことにする。
歩きはじめて数歩目のところで、勇三は驚きの声をあげてしまった。
地下水でも漏れ出していたのか、薄暗いなか地面にできた大きな水溜りに足を踏み入れてしまったのだ。冷たい水が、見る間にスニーカーへと染みこんでいく。
「くそ……」
悪態をつきながらも、少女の姿がないか視線をめぐらせた。彼女のことを捜していたのはもはや純粋な興味というより、この迷路のような巨大施設から抜け出すためだった。
というのも、ひとりで地上まで戻れる自信がなかったからだ。
いますぐ引き返せばあの白い廊下までは戻れるだろう。しかしそこからどうやってゲームセンターまで……いや、地上まで戻ればいいのかがわからない。
あの無機質な空間を彷徨う自分を思い描き、勇三は思わず身震いした。そもそも、階段をあがりきったあの踊り場で扉に阻まれてしまうのではないか。
あれだけ厳重なセキュリティロックのかかった入り口だ。ノブをひねってもドアが開いてくれるという保障もない。
情けない話ではあるが、あの少女を頼るほかに方法を思いつけなかった。
冷水がさらに靴に染みこみ、勇三は普段から寄せている眉根にさらに深いしわを作った。
と、そこで彼は思わぬ手がかりと出会うことができた。
水溜りのすぐ脇に、ふたまわりほどサイズの小さな足跡がついていたのだ。それが道の先へ点々と続いている。
少女の履いているブーツだろう。勇三は追跡を再開した。
トンネルは大きなカーブを描きながら延々と続いていた。
どれだけの時間、こうして走ったのだろう。同じような景色のなかでは正確な時間も距離も計れず、短いようにも長いようにも感じてしまう。
この状況にあって幸いだったのは、道がずっと一本のままだということだった。
すでに少女の足跡は途絶えていたので、分かれ道にでも突き当たったら追跡を断念するか、心もとない勘に頼らざるを得なくなる。
言い知れぬ不安を無視しながら、勇三は目の前に伸びる道の上でひたむきに脚を動かした。
階段は思ったほど長くは続かず、三、四階分を降りきったところで終わった。
そこは上下三車線が敷かれた巨大なトンネルだった。少女を追ってここまでやってきた勇三は、地下にあらわれた巨大な建造物に思わず嘆息した。
少女の姿を探してはみたが、目の届く範囲には見当たらない。いよいよ途方にくれかけたそのとき、すぐそばの壁にかけられたプレートに書かれた文字が目に止まる。
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それ目に首を傾げる勇三に対して、ナトリウム灯をはね返す金属性のプレートは答えの代わりに矢印を示してくるだけだった。
昇降機ゲートということは、この先にエレベーターのようなものがあるというのか。ひとまずプレートの案内にしたがって進むことにする。
歩きはじめて数歩目のところで、勇三は驚きの声をあげてしまった。
地下水でも漏れ出していたのか、薄暗いなか地面にできた大きな水溜りに足を踏み入れてしまったのだ。冷たい水が、見る間にスニーカーへと染みこんでいく。
「くそ……」
悪態をつきながらも、少女の姿がないか視線をめぐらせた。彼女のことを捜していたのはもはや純粋な興味というより、この迷路のような巨大施設から抜け出すためだった。
というのも、ひとりで地上まで戻れる自信がなかったからだ。
いますぐ引き返せばあの白い廊下までは戻れるだろう。しかしそこからどうやってゲームセンターまで……いや、地上まで戻ればいいのかがわからない。
あの無機質な空間を彷徨う自分を思い描き、勇三は思わず身震いした。そもそも、階段をあがりきったあの踊り場で扉に阻まれてしまうのではないか。
あれだけ厳重なセキュリティロックのかかった入り口だ。ノブをひねってもドアが開いてくれるという保障もない。
情けない話ではあるが、あの少女を頼るほかに方法を思いつけなかった。
冷水がさらに靴に染みこみ、勇三は普段から寄せている眉根にさらに深いしわを作った。
と、そこで彼は思わぬ手がかりと出会うことができた。
水溜りのすぐ脇に、ふたまわりほどサイズの小さな足跡がついていたのだ。それが道の先へ点々と続いている。
少女の履いているブーツだろう。勇三は追跡を再開した。
トンネルは大きなカーブを描きながら延々と続いていた。
どれだけの時間、こうして走ったのだろう。同じような景色のなかでは正確な時間も距離も計れず、短いようにも長いようにも感じてしまう。
この状況にあって幸いだったのは、道がずっと一本のままだということだった。
すでに少女の足跡は途絶えていたので、分かれ道にでも突き当たったら追跡を断念するか、心もとない勘に頼らざるを得なくなる。
言い知れぬ不安を無視しながら、勇三は目の前に伸びる道の上でひたむきに脚を動かした。
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