ReaL -墓守編-

千勢 逢介

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第二章・墓標に刻む者

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   Ⅳ


「あいつも一緒に?」

<アウターガイア>へと降りるため別室で準備を進めていた霧子は、トリガーからの連絡に思わず眉をしかめた。

「そうだ」それに対してトリガーの口調は、至極穏やかなものだった。「その場で待機していてくれ。すぐに合流させる」
「なにを吹き込んだ?」霧子の声が険を含んで低くなる。
「おれはあくまで自分なりの考えを言っただけだ。あとは勇三自身が決めた」
「わたしは反対だ!」
「だったら本人を直接説得するんだな」

 沈黙のなか、霧子の息づかいばかりが大きく響く。

「<アウターガイア>に入るのは簡単だ」トリガーが続ける。「少しのコネがあって自分さえ望めば、誰でも世界の裏側を見ることができる。だがここから出るのは容易じゃない……ニンフズ、おまえもそのくらいわかっているはずだ。ここから抜け出すためには他人の面倒なんて見ている余裕なんて無い、ただひたすら前に進むしかないんだ」
「わかってるさ……だからわたしは、あの日あんな決断をしたんだからな。いまの関係だって、あのとき思い知ったから――」霧子はそこで口を噤んだ。「すまない、そんなつもりで言ったんじゃないんだ。許してくれ」
「いいさ、事実だからな。それよりあの日のことを悔いているなら、やり直してみないか?」
「あいつを罪滅ぼしのダシに使おうっていうのか?」
「罪滅ぼし……それでもいいじゃないか。もう一度ふたりでやってみよう。今度は、違うかたちで」

 深いため息をついた霧子だったが、それまでの怒りはあらかたおさまっていた。

「相変わらず丸め込むのがうまいな」
「伊達に歳は食っちゃいないさ。それに勇三だが、なかなか見どころがありそうじゃないか。おれたちがサポートしてやれば案外うまくいくかもしれないぞ」
「それでも、勇三はただ巻き込まれただけなんだ。あいつの事情は、わたしたちとは違う……」
「そうかもしれないな」
 霧子はため息を繰り返すと、「いいよ、あいつを寄越してくれ。わたしが説得する」
「ああ、期待してるよ」

 通信を終えると、霧子はゆっくりと天井を見上げた。

「ほんとに、丸め込むのがうまい……」
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