ReaL -墓守編-

千勢 逢介

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第三章・血斗

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<サムソン&デリラ>のテーブル席についた高岡は、持参した端末をタッチペンで操作しながらトリガーに仕事の紹介をはじめた。
 紹介、とは言っても高岡が案件に対して数言添えるだけだった。トリガーは端末の画面に目を落としたまま、長くて数秒で首を横に振ってしまう。

「あとは、警備です」そんなやりとりを十分近く繰り返したのち、高岡はそう言った。
「警備か……」それまでほとんど口をきかなかったトリガーが、はじめて熟慮するような様子を見せた。「どんな内容だ?」
「兵站の点検です」言いながら高岡が端末に指を走らせる。「近々南関東のセクションで大規模な作戦があるので、部隊を送る前に設備の破損状況や棚卸などを依頼しています」
「なるほどな。日数は?」
「四日間です」
「レギオンの反応は?」
「ここ数日は特に反応もありません。もっとも、これから先どうなるかの保障もありませんが……あの、トリガーさん」
「どうした?」
「内容をご確認くださっていることは我々としても助かりますが、やはり入江がいないことには」
「それもそうだな。時間を取らせてしまってすまない」

 こうしたやりとりを傍らにあるカウンターから眺めていた勇三は、テーブルに置かれた端末に目を落とした。

「なんだ?」端末とのあいだに顔を挟むようにして、高岡が訊ねてくる。「ガキが首を突っ込む話じゃない」
「その最後の仕事、レギオンを殺すことが目的じゃないんだよな?」
「だったらなんなんだ?」
「それならおれがやる」

 この言葉に高岡とトリガーが勇三を見つめてくる。

「ガキの遊びじゃないんだぞ。大人しく――」
「そっちこそごちゃごちゃ言うなよ、人手が足りなくてここに泣きついてきたんだろ」
 高岡はトリガーを振り返ると、「なんなんですか、この……彼は?」

 トリガーは高岡を見つめ返したものの、なにも言おうとしない。

 視線を合わせるふたりの隙をつくように、立ち上がった勇三はテーブルの上に置かれた端末とタッチペンを取り上げた。それからカウンターの上に置いたそれに素早く目を通すと電子書面の最下部にある同意欄に自分の名前を書き込み、高岡が肩をつかんでくると同時に送信ボタンを押した。

「こいつ、なにを勝手に!」

 高岡が殴りかからんばかりの剣幕で肩をつかんでくる。
 振り向いた勇三はこう言った。

「言っただろ、おれがやるって」
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