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第三章・血斗
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思わず背後を仰ぎ見る。どうやら想像以上に深いところまで降りてきたらしい。呆然と立ち尽くす勇三を尻目に、ほかの三人がエレベーターから離れていく。
慌てて追いかけると幅広の道路にトラックが二台、どちらもエンジンをかけた状態で停車していた。全長のやや短い七トントラックで、荷台にはオリーブドラブの車体と同系色の幌がかかっている。
ヤマモトはドーズとヘザーに声をかけると、前に停めてあるトラックへと歩いていった。そのあとを追おうとした勇三の首根っこを、またしてもヘザーが捕まえてくる。振り返ると、彼は後ろのトラックのほうをあごでしゃくった。
エレベーターからあらわれた後発隊の最後の四人が追い抜いていくなか、なかば引きずられるようにして車体の後ろまで行く。
荷台の中ではすでに他のメンバーたちが、両側に渡された板切れ同然の長椅子に座っていた。ヘザーも勇三を離して荷台へとのぼり、ドーズのの隣に腰をおろす。
勇三はわずかに躊躇したのち長椅子の後端、ドーズの向かい側に腰かけた。男たちが余裕なくひしめき合っているせいで、尻が半分宙にはみ出た体勢になってしまった。
荷台の前方にいる人間が運転席を叩くと、トラックのエンジン音が大きくなる。勇三の視界から、ナトリウム灯が照らす出発地点が緩やかに遠ざかっていった。
規則的なエンジンの振動が響くなか、トラックはトンネル内を時速四十キロほどで流していく。
不意に膝を指でつつかれ、勇三は荷台の景色から視線を転じた。見ると、正面のドーズがラッキーストライクの箱から煙草を一本を差し出している。
「ああ……いや、いい」
身振り手振りでどうにか断ると、ドーズは両方の眉をおおげさに持ち上げてみせた。思わぬ愛嬌を披露したこのマッチョな男は、次に煙草を隣のヘザーに寄越す。
ヘザーは煙草を抜き取ると、別の誰かから差し出されたジッポライターで火をつけてふかしはじめた。
見れば荷台のそここで紫煙がたちのぼっている。かと思えば、いっぽうでは煙草の葉を噛んでいる。勇三は備え付けのバケツに吐き出されるニコチン混じりの唾のにおいでさらに辟易させられた。
ふと視線を戻すと、正面でドーズとヘザーがこちらを盗み見るようにしては笑い合っていた。言葉の正確な意味こそわからないものの、自分が冗談の種にされていることだけは理解できた。
(いいさ、勝手にしろよ)ふたたび車外を流れていく景色に目をやりながら思う。(どうせ四日間の短い付き合いだ)
同時にそれが、単なる強がりだということも承知していた。
外国人ばかりのここでは、自分こそが異質な存在なのだ。この国では標準的な体格であっても、この一団の中ではいちばんのチビな痩せっぽちだ。歳も若く、煙草すらまともに吸ったことがない。普段は相手を威嚇するような赤い髪も、高岡言うところの「クソガキ」が虚勢をはっているようにしか見えない。
さしあたってレギオンに襲われるという不安がない分、孤独感ばかりが深まっていく。
心に芽生えた疎外感を覆うように、勇三は静かに目を閉じた。
慌てて追いかけると幅広の道路にトラックが二台、どちらもエンジンをかけた状態で停車していた。全長のやや短い七トントラックで、荷台にはオリーブドラブの車体と同系色の幌がかかっている。
ヤマモトはドーズとヘザーに声をかけると、前に停めてあるトラックへと歩いていった。そのあとを追おうとした勇三の首根っこを、またしてもヘザーが捕まえてくる。振り返ると、彼は後ろのトラックのほうをあごでしゃくった。
エレベーターからあらわれた後発隊の最後の四人が追い抜いていくなか、なかば引きずられるようにして車体の後ろまで行く。
荷台の中ではすでに他のメンバーたちが、両側に渡された板切れ同然の長椅子に座っていた。ヘザーも勇三を離して荷台へとのぼり、ドーズのの隣に腰をおろす。
勇三はわずかに躊躇したのち長椅子の後端、ドーズの向かい側に腰かけた。男たちが余裕なくひしめき合っているせいで、尻が半分宙にはみ出た体勢になってしまった。
荷台の前方にいる人間が運転席を叩くと、トラックのエンジン音が大きくなる。勇三の視界から、ナトリウム灯が照らす出発地点が緩やかに遠ざかっていった。
規則的なエンジンの振動が響くなか、トラックはトンネル内を時速四十キロほどで流していく。
不意に膝を指でつつかれ、勇三は荷台の景色から視線を転じた。見ると、正面のドーズがラッキーストライクの箱から煙草を一本を差し出している。
「ああ……いや、いい」
身振り手振りでどうにか断ると、ドーズは両方の眉をおおげさに持ち上げてみせた。思わぬ愛嬌を披露したこのマッチョな男は、次に煙草を隣のヘザーに寄越す。
ヘザーは煙草を抜き取ると、別の誰かから差し出されたジッポライターで火をつけてふかしはじめた。
見れば荷台のそここで紫煙がたちのぼっている。かと思えば、いっぽうでは煙草の葉を噛んでいる。勇三は備え付けのバケツに吐き出されるニコチン混じりの唾のにおいでさらに辟易させられた。
ふと視線を戻すと、正面でドーズとヘザーがこちらを盗み見るようにしては笑い合っていた。言葉の正確な意味こそわからないものの、自分が冗談の種にされていることだけは理解できた。
(いいさ、勝手にしろよ)ふたたび車外を流れていく景色に目をやりながら思う。(どうせ四日間の短い付き合いだ)
同時にそれが、単なる強がりだということも承知していた。
外国人ばかりのここでは、自分こそが異質な存在なのだ。この国では標準的な体格であっても、この一団の中ではいちばんのチビな痩せっぽちだ。歳も若く、煙草すらまともに吸ったことがない。普段は相手を威嚇するような赤い髪も、高岡言うところの「クソガキ」が虚勢をはっているようにしか見えない。
さしあたってレギオンに襲われるという不安がない分、孤独感ばかりが深まっていく。
心に芽生えた疎外感を覆うように、勇三は静かに目を閉じた。
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