ReaL -墓守編-

千勢 逢介

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第三章・血斗

14

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   Ⅴ


 二十分ほど走ったのち、二台のトラックは一基の昇降機の中へと乗り入れていった。その際トラックが大きく揺れたので、勇三は幌からぶら下がった紐を慌てて掴まなければならなかった。

 背後のゲートが閉じると、昇降機はさきほどのエレベーターとは比べ物にならないような振動を伴って地下深くを目指していった……怪物の住む地下世界、<アウターガイア>へと。

 たどり着いた施設は<アウターガイア>の南端、市街地から離れた小高い丘の上に建っていた。<特課>の部隊にここを引き渡すまでの四日間、警備をしながら点検を済ませるのが勇三たちの仕事だった。

 闇夜のような空間を進んだ車列が、敷地の周囲を囲むフェンスの一角で停止した。
 トラックの運転席から、ヤマモトがこちらに声をかけてくる。これも英語で、勇三が眉根を寄せるのを尻目に、正面のドーズが地面へと降り立った。しばらくすると前方からブザー音とともに、金網が揺れるがしゃがしゃという音が聞こえてきた。

 ふたたび走り出したトラックがフェンスを通り抜けて敷地内へと入る。どうやらスライド式のゲートになっていたらしく、フェンスの一部が五メートルほどの幅で切り取られており、その傍らの操作盤のそばにドーズが立っていた。

 ゲートを抜けた少し先でもう一度トラックが止まってエンジンが停止すると、誰ともなく荷台の中から降りはじめた。それに従うというより押し出されるように、勇三も外に出る。

 ドーズが敷地のこちら側に入って操作盤をいじると、またぞろブザー音とともにゲートが閉じていった。
 閉ざされたフェンスを見て、勇三は自分が囚人にでもなったような気がした。

 この仕事にあたる十二人の<グレイヴァー>たちは二台のトラックのそばで輪を作った。
 ヤマモトたちが周囲を見回しながら声をかけると、誰ともなく荷台へと向かった。

「まずは荷降ろしだ」行き来する男たちをかきわけながらやって来たヤマモトが前のトラックを指す。

 勇三はトラックのそばに陣取ると、荷台から運び出されたプラスチックケースや日用品、それに食料と趣向品の入った段ボールを次の<グレイヴァー>に手渡していった。

 訪れた施設はもともと<アウターガイア>で働く独身職員のために建てられた宿舎で、レギオンとの戦いのため再利用されているという。
 荷台の中身をそっくり運び終えた勇三たちは、次に本館内に潜んでいるレギオンがいないか、手分けして巡回を行った。本館、とは言っても敷地内にあるのはその一棟だけで、あとはその隣に寄り添うように小さな倉庫が建っているだけだった。

 どことなく学校の校舎にも似た二階建て本館の中を、勇三はまだ手に馴染みきっていないライフルを手に、しんがりのドーズにせっつかれながら進んでいった。
 ありがたいことに施設内にレギオンの姿はなく、別ルートで巡回していた他の面々も含めて全員が無事だった。

 それから彼らは二階中央の食堂に集まると、放置されていた長机とパイプ椅子を並べて、無線機をセットした。これで<セントラルタワー>と連絡を取り合うらしい。
 ヘザーが身振りでそのことを伝えてくれた。無線の構造や通信相手など判然としないところは多かったが、誰かに声が届くということは勇三を安心させた。
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