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第六章・炎と水と
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Ⅴ
<アウターガイア>へと降りる昇降機の前で、輝彦は手にしていた長さ一メートル強の頑丈そうなケースを開けた。中には透明な円筒形のシリンダー埋め込まれており、その内側には鈍い銀色をした物体が横たわっていた。だがシリンダーには霧状のもやが満たされており、その正体は判然としない。
「またここに戻ってきますよね?」シリンダーを開けながら輝彦は霧子に訊ねた。
「ああ。帰りもこの昇降機を使うつもりだ」
「なら、ケースはここに置いておくか」
言いながら輝彦は閉じたケースを壁際の一端に置くと、立ち上がってふたりに向き直った。はたして、その手には大きな剣が握られていた。
「へえ、<特課>の代物か」霧子が輝彦の武器をまじまじと見つめながら、嬉しげな表情を浮かべる。
剣は段平か、あるいは鉈のような見た目で、武骨な見た目が輝彦の醸す雰囲気と似つかわしくない。銀色を基調とした柄の部分はつかんだ拳同士のあいだじゅうぶんな隙間を作れるほどできる長く、幅広の刃の長さはさらにその二倍近くあった。その刃は透明で、水槽か純氷を覗いたときのように向こう側の景色を屈折して映していた。
だがこれが、まるまるあのケースにおさまっていたとは思えなかった。いま目の前にある長大な刀身は、ケースの全長を遥かに越えていたからだ。
霧子の持つ、銃口が二つある拳銃もじゅうぶん変わっていたが、この一点においても輝彦の武器はさらに異質と言えた。
「X―33PMW、通称エンデュミオン、水を高圧で固めた、個人質量兵器です」
「噂に聞いたことはあるが……初めて見たよ」霧子は結晶のような刃に顔を近づけながら言う。「よく手に入ったな」
「ちょっとしたツテがありまして」と、そこで輝彦は視線に気づくと、勇三にも見えるようにエンデュミオンを掲げてみせた。「こいつの刃は約五トンの水を固めて作ってあるんだ。その重みを一点に収斂して、対象を切断することができる。言ってしまえば水圧カッターと似たような原理だな」
「なるほど、だから質量兵器か」霧子が頷く。
「ちょっと待てよ」久しく耳にしていなかった<アウターガイア>絡みの小難しい話に頭を抱えながら、勇三は言った。「五トンって……そんな重いもの持てるわけないだろ」
勇三の経験則から言っても、それほど重たいものを持ち上げられるとは思えない。一瞬、輝彦が自分以上の怪力の持ち主なのでは、という懸念がよぎったがすぐに思い直した。この呪いのような特性を自分の友人も持っている可能性など、考えたくもなかったからだ。
<アウターガイア>へと降りる昇降機の前で、輝彦は手にしていた長さ一メートル強の頑丈そうなケースを開けた。中には透明な円筒形のシリンダー埋め込まれており、その内側には鈍い銀色をした物体が横たわっていた。だがシリンダーには霧状のもやが満たされており、その正体は判然としない。
「またここに戻ってきますよね?」シリンダーを開けながら輝彦は霧子に訊ねた。
「ああ。帰りもこの昇降機を使うつもりだ」
「なら、ケースはここに置いておくか」
言いながら輝彦は閉じたケースを壁際の一端に置くと、立ち上がってふたりに向き直った。はたして、その手には大きな剣が握られていた。
「へえ、<特課>の代物か」霧子が輝彦の武器をまじまじと見つめながら、嬉しげな表情を浮かべる。
剣は段平か、あるいは鉈のような見た目で、武骨な見た目が輝彦の醸す雰囲気と似つかわしくない。銀色を基調とした柄の部分はつかんだ拳同士のあいだじゅうぶんな隙間を作れるほどできる長く、幅広の刃の長さはさらにその二倍近くあった。その刃は透明で、水槽か純氷を覗いたときのように向こう側の景色を屈折して映していた。
だがこれが、まるまるあのケースにおさまっていたとは思えなかった。いま目の前にある長大な刀身は、ケースの全長を遥かに越えていたからだ。
霧子の持つ、銃口が二つある拳銃もじゅうぶん変わっていたが、この一点においても輝彦の武器はさらに異質と言えた。
「X―33PMW、通称エンデュミオン、水を高圧で固めた、個人質量兵器です」
「噂に聞いたことはあるが……初めて見たよ」霧子は結晶のような刃に顔を近づけながら言う。「よく手に入ったな」
「ちょっとしたツテがありまして」と、そこで輝彦は視線に気づくと、勇三にも見えるようにエンデュミオンを掲げてみせた。「こいつの刃は約五トンの水を固めて作ってあるんだ。その重みを一点に収斂して、対象を切断することができる。言ってしまえば水圧カッターと似たような原理だな」
「なるほど、だから質量兵器か」霧子が頷く。
「ちょっと待てよ」久しく耳にしていなかった<アウターガイア>絡みの小難しい話に頭を抱えながら、勇三は言った。「五トンって……そんな重いもの持てるわけないだろ」
勇三の経験則から言っても、それほど重たいものを持ち上げられるとは思えない。一瞬、輝彦が自分以上の怪力の持ち主なのでは、という懸念がよぎったがすぐに思い直した。この呪いのような特性を自分の友人も持っている可能性など、考えたくもなかったからだ。
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