異世界探偵・不知火 明

不報 刀姫

文字の大きさ
2 / 6

指輪とペット

しおりを挟む
「たんてい?」

「と言っても、浮気調査や失せ物探しばっかり依頼されてるし、推理小説を読んで探偵気分に浸ってると言われれば否定しづらい。
そんなしがない探偵生活を日々送ってる」

「……」

「まあなんだ、警察や弁護士より知恵のあるものではないけど
事件を解決するってことは一緒の職業だ」

「……よかった…ほんとうに…よかった」

気がつけばリーシャの頬にまた涙の軌跡が出来ていた。

「また何故か涙が出たのか?」

「……いや、感極まったのだ」



ほとぼりが冷めて一段落したところで
俺はまだリーシャに聞きたいことがあった。

「もう手遅れだと分かっているし、
責め立てるってわけじゃないんだが。
リーシャ、俺を助けてくれたように
俺の両親を助けることは出来なかったのか?」

「お前さんには聞き苦しい話だが
お前さんの御両親は即死であった。
だが、お前さんは心臓をひと刺しされただけでギリギリまだ息があった。
私の魔法が間に合ったのは正直、奇跡だよ」

「そうか…」

九死に一生をえたわけだ

「あと、お前さんの世界では倫理的にどうこう
うるさいと思うが
私はお前さんの御両親を生き返らせることが出来る」

「…………は?」

え、え?

「私が淡々とお前さんの御両親の死を告げたのはこの手段があったからだ。
ただ時間がかかる。生物の蘇生は術式が難しくてな」

「え、嘘だろ。生き返らせるって……」

「ここはお前さんの世界とは違うんだよ」

「でも待て、もう俺の家にはワープゲートを作れないんじゃ?」

「いや、恐らく出来る。
お前さんの家でのみワープゲートの精製速度が速かった。あの化け物がいたときより遅くなるがお前さんの家はなにか特別なものがあるのだと私は踏んでいる」

一般家庭なのだが。

「ひとまずお前さんの御両親を私の家に運ぼう」

「リーシャ」

「ん?」

「ありがとな」

「お互い様だ」



俺は目が覚めたベッドでまた横になっていた。
身体はもう充分動けるところまで回復してきた。
今頃別室でリーシャが俺の両親に蘇生の魔法をかけているであろう。
とはいえ、時間がかかるとリーシャは言っていた。
どれだけ時間がかかってもいい、それで両親が助かるなら。
小一時間してリーシャが戻ってきた。

「ど、どうなんだ?蘇生の魔法ってのは」

「難しくはあったがなんとか…な。あとは心臓とその他傷口の修復、そして意識が戻るか否か。これは待つしかあるまい。まあでも成功だよ」

「……ほっ」

良かった、この異世界というか魔法に感謝だな。
俺のいた世界じゃあ、蘇生なんてオカルトだもんな。

「まだ私、お前さんの名前知らなかったわ」

突然の発言にびっくりしたが。

「そういえばそうだっけか、あははは」

両親が無事ということで気が抜けた。

「不知火明(しらぬいあきら)だ。よろしくなリーシャ」

「……そうか、では明、早速だがお前さんを試させてもらう」

「試す?」

「知恵のない私ではあるが、練りに練った試練を考えた。これは、いずれ知恵のあるものと手を組んだときその者の実力を計るためのもの」

「その試練がクリア出来なかったらどうする?」

「……え?あー、えーと」

そこは考えてなかったのね。
 
「あ!……お前さんの御両親の蘇生を中止すると言ったら?」

「思いつきで言うなよリーシャさん」

そして黒いよリーシャさん。
出来ない嘘はつかないもんだぜ。

「まあ、つまり絶対失敗するもんかってことでいいんだよな」

「その通り、では試練内容だが難易度は高いぞ?」

……ごくり。

「私の指輪を探して欲しい」

「あぁ探偵っぽい。失せ物探しか」

「難易度が高いと言ったのには訳がある。
まず、答えがない。」

「…え、あ、うん」

隠したとかじゃなく、本気で無くしたんだな。

「この家の敷地内で無くしたのは確実だが、
なにしろ指輪だからな。布団の隙間、クローゼットの中、庭に野ざらし。どこにあるやら」

「だいたいそういう身につける物をなくす時は
外す瞬間に何かあるもんだ」

「ほう」

「てか家じゃ普通指輪つけないだろ?
外したあと定位置に置かなかったのか?」

「うーん、家に帰ってきてからはピィちゃんと戯れるのが日課だからのう。指輪を外すのはその後だな」

「ピィちゃん…?」

「飼ってるペットだよ」

俺のいた世界にも居たなぁ、
鳥のペットにはだいたいピィちゃんって名前つける奴。

「ピィちゃんのいるところへ案内してくれないか。
戯れているうちに外れたのかもしれない」

「ピィちゃんの周辺ももちろん隈無く探したのだが…ではついて来てくれ」



リーシャに連れられ俺は初めてこの家の中を歩いた。
俺が寝てた部屋からは差ほど遠くない距離。
360°ガラス張りの大きな部屋…というより建物に近い。
高さ10メートルはあるんじゃないかな。
中には無数の見たことのない植物で溢れかえっていた。
温室植物園みたいな感じか、この世界にもあるんだなぁ。

「これ全部、リーシャが育ててるのか?」

「明…皮肉かの?私の管理が行き届いていない証拠だよ
この植物はみな雑草だよ。勝手に生えてきたのだ。
私が育ているのはピィちゃんだけだよ」

「雑草⁉」

植物の力を甘くみてはならない、とは言うが
度が過ぎる。
ここでピィちゃんを育ててるって
そんなにデカいのかピィちゃん。

「ピィちゃんはの、鳴き声がピィピィ可愛くての、だからピィちゃんと名付けたのだ。
すごい可愛いからお前さんも虜になるぞ?」

親バカ…いや飼い主バカ…?
名付け親バカかな?

「まあ、鳥だったらだいたいピィちゃんだよな。
犬はポチ、猫はタマ、みたいにな」

「…鳥?何の話だ?」

「え、だからピィちゃんの話」

「ピィちゃんはこの植物の向こうにいる━」

リーシャが指差した方へ目を向けると
数多の植物よりひときわ大きい植物がこの植物園の奥にいた。
そしてリーシャの言う可愛い鳴き声が建物内に響きわたる。

「ピッギャァァアアア」

「肉食植物のピィちゃんだ」

『ピ』しか合ってない。

「お前、あんなのと戯れるのが日課なのか?」

「あんなのとは失礼だな。肉食植物といっても
私の育ての甲斐あって、今は果物中心の食生活になっておる
まず、お前さんは食われまい」

なら良いが。

「ここ数日は繁殖期でな。
繁殖期になるといつもあのような鳴き声になる」

「あ、あれお前にも聞こえてるんだ。てっきりピィちゃんを溺愛しすぎてお前の脳内じゃデフォルトされた鳴き声になってるかと思ってた」

「なにをワケのわからんことを…。だが少し変なのだ。」

「変?」

「ピィちゃんの繁殖期は年に三回程度」

四ヶ月に一回ペースか。

「だが今回は前回との開きが妙に短い」

急に繁殖期になったってか?
たとえ異世界といえど生物の仕組みというか
根本は変わらないんじゃ。

「そういえばリーシャ。指輪をなくしたのを
気づいたのはいつ頃だ?」

「一週間前かのう」

この世界も一週間とかあるんだ。
てか、一週間ってことは練りに練った試練じゃないじゃん。
…今はいいか。

「この植物園を隈無く探しても見つからないとなると…」

「わかったか?指輪の居場所」

「推理でもなんでもなく、
数ある可能性を一つずつしらみ潰ししていく形になるが…」

「…てことはまたこの植物園を探すのかのう?」

「いや、俺が一番怪しいと思うところにあればすぐ終わる」

「………どこだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...