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予想外

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祭壇の前で膝を折ったイブの祈りを全員が静かに見守る。


すると、フロア中の貴族たちが窓の外を見てざわつき始めた。


「雨よ!!」

「本当に、雨が降った……」

「聖女様はお力を取り戻したんだな」

「ああ長かったわね。ダメ聖女には心配させられたわ」

「これでやっと安泰だ」


窓の外に細い雨を見たものたちが口々に感想を述べる。クリスはガバッと立ち上がり、窓に張り付いて外を見た。


「信じられない!!本当に雨を呼んだ!」


見上げるほど背の高いクリスの後ろに立って、アーサーがにやつく。


「これが聖女の力だよ」

「俺がこんなにあっさり負けてしまうなんて!おもしろ!」


アーサーが口端を上げて微笑む。

クリスは、本当に降り始めた雨に口をあんぐり開けて唖然としていた。


「感激だ!!このものすごい力を持った聖女様にご挨拶させてくれ!」

「もちろん」


玩具がほしくてたまらない目をしたクリスが、アーサーの手を両手で握って興奮した声を出す。


アーサーは満足に頷いて、祭壇に目をやった。


(これで、良い条件が付けられる……ってあれ?)


祭壇の前で祈りを終えたイブの様子がおかしかった。

真っ青な顔でふらついた次の瞬間、イブは脱力して床に倒れてしまった。


「聖女?!」


アーサーがすぐに倒れたイブに駆け寄るが、イブの顔に血の気が全くない。アーサーが迷わずイブを横抱きに抱き上げる。


「ビクター先生を呼べ!」


使用人に指示を出して、アーサーは抱き上げたイブをニナの待つ部屋へと運んだ。


アーサーがイブを抱いて去る様子を傍観していた国王は、足を組みかえて深いため息をついた。


「もう発作か?あまりにも早すぎる」


国王が左右に控えた老貴族たちに視線を送れば、誰もが頷く。


「やはりダメ聖女か。

我が妻には遠く、及ばないな」


老貴族たちは、命を捧げて祈り、雨を降らせた聖女をクツクツ嘲った。

  
   
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