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ガロード編■魔法都市

24.奇襲

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「ガロードォ、街の方に二体行っちまったぞォ!」

10メートルほど離れた場所からアイザックが俺に向かって叫ぶ。

分かっている。
分かっているんだが、既に三体を相手にしている俺は手一杯だ。

「アイザック、奴らの足元を凍らせて時間を稼げ!!」

「分かった、任せろ!」

アイザックの杖から放たれた氷魔法が、地面を蛇のように這いつつ直線上に凍らせていく。
足ごと凍らせられたオークゾンビ達は、そのまま立ち止まる。

よし、このまま畳みかければ──!!






夜襲をかけてきている敵軍は、オークゾンビおよそ300体とドラゴンゾンビに跨るハイオークで編成されているようだ。

ハイオークとドラゴンゾンビは後方で待機しているようで、オークゾンビ達が蜘蛛の子を散らすようにバラバラに、無秩序に攻めてきている。

オークゾンビはともかく、残りの強敵が出陣する前に何とか有利な状況に持っていかなくてはならない。




力の弱い人間族は、複数人のパーティを組んで戦うのが基本だ。

高度な魔法が使える訳でもなく、身体能力も特出している訳ではないため、他の種族のように単騎決戦に向かない。
役割を明確にし、お互いをサポートしつつ相手の弱点を付くことが最大であり基本の戦術なのである。


ナハトヴァールも同様の戦術を取り入れており、総司令官のアラドを含めた20名を4人ずつの隊に分けて行動している。

軍の内訳は、アラドの属する指揮隊、小隊長のリディの前線特化隊、ディラルド率いる魔法が効かない相手専門の特殊隊、リリアーナ率いる回復隊、そして俺達の防衛隊で構成されている。


俺とアイザックのパーティは残りの2人が回復専門のアイナとリーダーである防御の要のハミルトンで、攻防補回と全て揃っているため、ナハトヴァールの5隊の中でも特に安定した編成となっている。

ハミルトンがアイナの前でヘイトを集め、補助魔法が得意なアイザックが足止めをして、俺が範囲攻撃魔法を撃つというスタイルで、多数を相手にしても手数の少なさをカバー出来る布陣だ。

それぞれの専門分野が違っているために非常に安定感はあるのだが、弱点が一つだけあるとすれば、誰か一人でも欠けるとパーティが崩壊する危険性がある点だろうか。
特にヒーラーのアイナが欠けた場合、非常に辛い戦いとなる。

つまり、アイザックとハミルトンの防衛網がパーティの生命線という訳だ。

他の隊はそれぞれが隊ごとに明確な役割があるが、我々のパーティはナハトヴァール自体を縮小したような編成であるため、ある程度自由に動く事が出来るのである。





「喰らえ!!」

俺は重力魔法で地面ごとオークゾンビ3体を崩落させて燃やした後、アイザックが足止めをしている2体に向けて火炎魔法を放って消し炭にする。
火属性以外ほとんど効かないのが難点だが、やってやれないこともない。

我々のパーティの近くにいる奴らはあらかた片付けたが、妙だ。

他のモンスターの姿が見えない。

ナハトヴァールの他の隊も離れた場所で戦っているようだが、状況が分からない今は駆けつけるのが最優先だろう。


「援護に向かうぞ!」

ハミルトンの指示で俺達は仲間の元へ急ぐ。






「馬鹿......な......」

小隊長のリディが率いる前線特化隊は、壊滅的な打撃を受けていた。

「他のパーティはどこへ行った......!!」

ディラルドは、リリアーナは、アラドはどこへ行ったんだ!?

そう叫ぶ前に、リディの首をオークゾンビの投槍が貫通した。
回復も援護も受けられず、前線特化隊は『魔法が効かない』オークゾンビ達による攻撃を防ぐことが出来ずに全滅した。
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