書きの種 ’25(エッセイ)

佐藤遼空

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『SAND LAND』を見て思う

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鳥山明原作のアニメ『SAND LAND』。もう、最高です! 二話目で戦車登場。なんかこの作品は、元の原作漫画で鳥山明がオッサンと戦車が描きたい、といって始まったらしい。オッサンも戦車もカッコいいよ!

戦車が普通の戦車じゃなくて、重力制御装置がついてたりするSFというか、ファンタジー設定が少し入った感じもいい。特に、内部のディテールが凄くて、ほんとにカッコよかった。これは原作にあるのか、アニメオリジナルなのか。なににしろ、戦車の描写がカッコイイ。

そして世界観がいい。球体みたいな飛行機が出てきたと思ったら、実は水のタンクを運んでいた。本体はアメンボみたいな構造なのも、実に鳥山明のセンスが出ていていい。それは実は大統領が水源を独占している、という証で、それを軍隊を使って維持してるのだ。そういう権力者の汚さがよく描けている。

余談ではあるが、ちょっと前に『SPY FAMILY』のアニメの2ndの一巻を見ていて、秘密警察のユーリがジャーナリストを逮捕する話を見た。秘密警察は盗聴して逮捕して、「処刑してやる!」とかすぐに喚いて最悪だと思ったが、ここではジャーナリストの方が国賊扱いで辟易した。

挙句、ユーリがジャーナリストの親父を「経済的に援助はしてやる」とか温情を見せる、みたいなシーンが入るのだが、「はあ?」とか思った。最近の公安警察の冤罪事件や、特攻警察の無実の人間に対するリンチ殺人とかを知らんのだろうか?

一度、そういう連中に睨まれると、徹底的に親類縁者も監視対象になる。援助とか到底ない話だ。そんな風に、権力サイドが個人を保護してくれると思ってるのなら、右寄り連中がよく左寄り連中に揶揄する「頭がお花畑」そのものだ。むしろ権威に依ってるんだから、タチが悪い。

『SAND LAND』には、そういう権力に対する幻想がかけらもない。当たり前だ、権力者は富と暴力を占有してるから権力者なのだ。例えば『ガチアクタ』の階級社会の描き方なんかには、そういう社会構造の上部に対する幻想がないが、『SPY FAMILIY』や『鬼滅の刃』には、上部に対する幻想があって、たまに嫌になる。世代によって、感性が異なるのかもしれない。
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