4 / 9
第4話・勘違いの理由、その2
しおりを挟むそもそも、カレンとレイトンが婚約することになったきっかけは、レイトンがライーナに一目惚れしたことから始まった。
九年前、第二王子の誕生日パーティーの日のことである。
第二王子にストレスがかからぬよう、6歳~8歳くらいの年が近しい貴族子息・子女が集められたパーティーで、レイトンはライーナと出会った。
一人っ子であり、祖父母から溺愛されていたレイトンは、典型的な傲慢子息で、ライーナに一目惚れしたあと、すぐに祖父母へと掛け合った。
ビーストア家からの婚約要請を、アバースト家は受け入れたが、なんとビーストア家はうっかり名指しすることを忘れていたのである。
順番的に、ライーナの方が年が上なので、本来ならばライーナが婚約するはずだったが、カレンがそれに猛反対したのだ。
過去にないぐらいの癇癪をおこし続け、疲れ果てた伯爵家当主がレイトンの婚約者をカレンとしたのである。
ここから、勘違いの歯車が回り始めた。
その事をビーストア家に伝えると、ビーストア家も最初は抗議した、が、元々ビーストア家から申し込んだ婚約の上、アバースト伯爵夫人は侯爵の出である。
反抗することなど、到底出来なかった。
だが、その事をレイトンに知られれば嫌われると危惧した祖父母は、名前はぼかして、アバースト家の令嬢との婚約が成立した、とだけ伝えたのである。
婚約者(カレン)の誕生日パーティーに招待されるときも、パーティーには必ずライーナの姿が見え、カレンのそばで笑いながら祝福の言葉を受け取っていた(実際に受けっとていたのはカレン)ため、レイトンはライーナが婚約者だと信じ切ってしまった。
なんと、馬鹿な祖父母と馬鹿な子息と姉馬鹿な子女のせいで起こった勘違いである。
カレンは、言葉を失うと同時に考えた。
でも、何故婚約破棄要請を…?と。
陛下は、重々しく口を開いて仰った。
「実は、レイトンには別の恋人がいるんだが、その恋人と婚約がしたいと言ってな。しかも、自分を誑かしたライーナ嬢に恥をかかせてやりたいんだと。」
そこで、カレン思い出した。
そう言えば、今日は誕生日パーティー。
レイトンも、ライーナも、他の貴族達もいる。
【恥をかかせてやる】絶好の機会なのではないか。
カレンは、すぐさま馬を出し、パーティー会場へと向かった。
33
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる