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10 予想通りに奴が来て、想定外の奴も来る
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シファが西に来た初日、宮は色めき立った。「北の宮一の女官」と言われたシファの洗練された美しさに、女たちは憧れの、男たちはそれ以上に熱を帯びた視線を送った。
それは予想していた西の宮は、「着いてすぐにすまぬが、試合をしよう」と、にこにことシファに提案した。
そうして、西の宮とシファの試合を見ようと多くの者が修練場に詰めかけたが、帰りは皆無言だった。
試合が終わると、二人の魔法や術の被害を食い止めるために結界を張っていた魔導師たちが、力尽きてあちこちに倒れていた。
その中央で、なかなか楽しかったな、と満足そうにする西の宮に、シファはもう終わりでございますか、と残念そうである。
「当番の魔導師が尽きたから、今日のところはな。
さて、改めて皆に紹介しよう。姫の教師を務めるシファである。実力は今見たとおり。ちなみに今上侍従カイル殿の妹弟子だ。
皆、分かったな?」
興味本位で手を出してはならん、と言外に示す西の宮に、男たちはコクコクと頷いた。
シファの実力以上に男どもの心を折ったのは、カイルの名だっただろう。
そんな力を持ったシファの兄弟子が、今、西の宮の目の前にいる。思った通りの早い訪れに、己の予想が当たった西の宮は、それだけで楽しい。
万事恐ろしいほどに無駄なくことを運び、力を持ちながら自らはふるわず、人をして物事を動かす。そんな侍従が平原を越え、砂漠を渡り、この西の宮へ自ら来るのだから。
※
「カイル、久しいな。陛下はお変わりないか?」
「はい。西の宮さまもご機嫌麗しゅう、めでたく存じます」
口上を述べるカイルは、西の宮に観察されているのを感じ、この御仁にも困ったものだと思う。
かと言って、東の宮に預けるのはそれこそ危険、と判断したからこその西の宮であるが。
「して、今日は?」
わくわく、と書いてある西の宮のお顔に、カイルは申し上げる。
「件の商隊を見に」
「なるほど。お前、私への用事も考えてくれないか?」
「新たな交易路のお話を西の宮さまに伺いたく、と申し上げれば良かったでしょうか?」
「そうだな、それにしよう。そうでないと私が出かけられない」
上機嫌な西の宮に、物見高いことだとカイルは呆れる。
「では私が案内しよう」
「恐れ入ります」
一人で結構です、と言うわけにもいかず、カイルは西の宮に案内されることになった。
さて、と西の宮が腰を上げかけたところで、カイルが気付く。
「西の宮様」
カイルが言った時、西の宮もやって来る大きな力の塊に気付いたらしい。
「まあ。あれだ、訓練だと思えば」
「抜き打ちにも程がありましょう」
カイルがため息をついたとき、入口の扉が無遠慮に開かれる。そんなことができる人物は一人しかいない。
「おお、なんだ面白い奴がいるな! 俺も混ぜろ」
そう言って現れたのは東の宮であった。
扉の向こうに打ち倒された宮の兵たちが累々と続くのに、西の宮がもう少し手加減してやってくれとぼやいた。
それは予想していた西の宮は、「着いてすぐにすまぬが、試合をしよう」と、にこにことシファに提案した。
そうして、西の宮とシファの試合を見ようと多くの者が修練場に詰めかけたが、帰りは皆無言だった。
試合が終わると、二人の魔法や術の被害を食い止めるために結界を張っていた魔導師たちが、力尽きてあちこちに倒れていた。
その中央で、なかなか楽しかったな、と満足そうにする西の宮に、シファはもう終わりでございますか、と残念そうである。
「当番の魔導師が尽きたから、今日のところはな。
さて、改めて皆に紹介しよう。姫の教師を務めるシファである。実力は今見たとおり。ちなみに今上侍従カイル殿の妹弟子だ。
皆、分かったな?」
興味本位で手を出してはならん、と言外に示す西の宮に、男たちはコクコクと頷いた。
シファの実力以上に男どもの心を折ったのは、カイルの名だっただろう。
そんな力を持ったシファの兄弟子が、今、西の宮の目の前にいる。思った通りの早い訪れに、己の予想が当たった西の宮は、それだけで楽しい。
万事恐ろしいほどに無駄なくことを運び、力を持ちながら自らはふるわず、人をして物事を動かす。そんな侍従が平原を越え、砂漠を渡り、この西の宮へ自ら来るのだから。
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「カイル、久しいな。陛下はお変わりないか?」
「はい。西の宮さまもご機嫌麗しゅう、めでたく存じます」
口上を述べるカイルは、西の宮に観察されているのを感じ、この御仁にも困ったものだと思う。
かと言って、東の宮に預けるのはそれこそ危険、と判断したからこその西の宮であるが。
「して、今日は?」
わくわく、と書いてある西の宮のお顔に、カイルは申し上げる。
「件の商隊を見に」
「なるほど。お前、私への用事も考えてくれないか?」
「新たな交易路のお話を西の宮さまに伺いたく、と申し上げれば良かったでしょうか?」
「そうだな、それにしよう。そうでないと私が出かけられない」
上機嫌な西の宮に、物見高いことだとカイルは呆れる。
「では私が案内しよう」
「恐れ入ります」
一人で結構です、と言うわけにもいかず、カイルは西の宮に案内されることになった。
さて、と西の宮が腰を上げかけたところで、カイルが気付く。
「西の宮様」
カイルが言った時、西の宮もやって来る大きな力の塊に気付いたらしい。
「まあ。あれだ、訓練だと思えば」
「抜き打ちにも程がありましょう」
カイルがため息をついたとき、入口の扉が無遠慮に開かれる。そんなことができる人物は一人しかいない。
「おお、なんだ面白い奴がいるな! 俺も混ぜろ」
そう言って現れたのは東の宮であった。
扉の向こうに打ち倒された宮の兵たちが累々と続くのに、西の宮がもう少し手加減してやってくれとぼやいた。
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