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「どうだあいつは」
様子を見に来た、という東の宮に、西の宮が手紙をやると言うたはずだがと言いつつ、教えてやる。
「なかなかやりおる。あやつ、他の商隊にわざと自分を追わせ、砂嵐だ魔物だで進退窮まったところを助けてやって、色々交渉しておるようだ」
「それはかなり危険なやり方ですね」
カイルが宮の兵達を助け起こしながら言うのに、西の宮も頷く。
「そうさな。だが、あの若者、私が護衛をつけようというのを、護衛も追いつけまいと言いよった。大きな口を叩くものだと思うて試しに後を付けさせてみたが、本当に振り切りおった」
西の宮が楽しげに笑う。
「そうなると、あとは」
暗殺を懸念するカイルに、東の宮が言う。
「だからあいつは夜は砂漠で休んでおるんだろう? それにことが起こる前までには西から引き揚げるつもりだろうよ。後の面倒は西の宮に押し付けてなあ?」
笑う東の宮に、西の宮も苦笑する。
「そうであろうな。引き際を見誤らぬ自信もあるようだ。それぐらいの面倒は何ほどでもない。それ以上の成果があればな」
さて、と西の宮は今度こそ腰をあげる。
「では行くか、カイル」
「おう。西の市は面白いから楽しみだ」
当然のようについて来ようとする東の宮をカイルが半眼で見る。
「その前に東のは兵達を回復させてやってくれんかな」
「おおそうか」
東の宮が何か唱えると、たちまち兵達の顔に生気が戻る。時間稼ぎにもならない。
「よし行こう」
晴れ晴れと言う東の宮である。
諦めような、と西の宮がカイルの肩をポンと叩いた。
東西の宮二人に今上侍従のお忍び。
何かあれば大問題必至の面子に、西の宮の重臣たちは真っ青になる。
せめて護衛をお連れください! と西の宮に取りすがった重臣たちは、「撒くに決まっておろう。俺より弱い護衛などつけてどうする」と東の宮に呆れられ、黙るしかなかった。
御一行さまは悠々と出発した。
※
西の都の市場には、東の都を経て異国の様々な品が届く。主に陶器や織物がやってきて、西の都特産の細工物と交換されるのである。
男たちが荷下ろしに行き交う中をシファが歩いている。無遠慮な視線が四方八方から注がれているが、当のシファは気に留めていないようだ。
シファが西の都に来て大分経つが、まだシファを知らない者がいる。その中の一人がシファに声をかけようとして、仲間に必死に止められている。
どうやら朝方から酔っているらしい男は、仲間の忠告を聞かずシファに近づき、しつこく口説か始めた。
シファは差し障りない応えで、のらりくらりとかわそうとする。そんなシファに焦れたのか、酔っ払いの男がシファの手を取ろうとした。
すると次には男が悲鳴をあげていた。
せっかくですが、またの機会にしてくださいまし、とおっとりと言うシファのどこにそんな力があるのだろうか、シファに手を捻り上げられた男は、酔っているとはいえ、全く逃れられないでいた。
魔法か術かで抑えられているのかも知れない。
最初に止めた仲間の男がシファに謝り倒し、ようやく酔っ払いは解放された。
※
荷下ろしが終わり、露店の客も落ち着いたので、遠くから一連の出来事を眺めていた青年がいた。件の商隊を率いるヨシュアである。
様子を見に来た、という東の宮に、西の宮が手紙をやると言うたはずだがと言いつつ、教えてやる。
「なかなかやりおる。あやつ、他の商隊にわざと自分を追わせ、砂嵐だ魔物だで進退窮まったところを助けてやって、色々交渉しておるようだ」
「それはかなり危険なやり方ですね」
カイルが宮の兵達を助け起こしながら言うのに、西の宮も頷く。
「そうさな。だが、あの若者、私が護衛をつけようというのを、護衛も追いつけまいと言いよった。大きな口を叩くものだと思うて試しに後を付けさせてみたが、本当に振り切りおった」
西の宮が楽しげに笑う。
「そうなると、あとは」
暗殺を懸念するカイルに、東の宮が言う。
「だからあいつは夜は砂漠で休んでおるんだろう? それにことが起こる前までには西から引き揚げるつもりだろうよ。後の面倒は西の宮に押し付けてなあ?」
笑う東の宮に、西の宮も苦笑する。
「そうであろうな。引き際を見誤らぬ自信もあるようだ。それぐらいの面倒は何ほどでもない。それ以上の成果があればな」
さて、と西の宮は今度こそ腰をあげる。
「では行くか、カイル」
「おう。西の市は面白いから楽しみだ」
当然のようについて来ようとする東の宮をカイルが半眼で見る。
「その前に東のは兵達を回復させてやってくれんかな」
「おおそうか」
東の宮が何か唱えると、たちまち兵達の顔に生気が戻る。時間稼ぎにもならない。
「よし行こう」
晴れ晴れと言う東の宮である。
諦めような、と西の宮がカイルの肩をポンと叩いた。
東西の宮二人に今上侍従のお忍び。
何かあれば大問題必至の面子に、西の宮の重臣たちは真っ青になる。
せめて護衛をお連れください! と西の宮に取りすがった重臣たちは、「撒くに決まっておろう。俺より弱い護衛などつけてどうする」と東の宮に呆れられ、黙るしかなかった。
御一行さまは悠々と出発した。
※
西の都の市場には、東の都を経て異国の様々な品が届く。主に陶器や織物がやってきて、西の都特産の細工物と交換されるのである。
男たちが荷下ろしに行き交う中をシファが歩いている。無遠慮な視線が四方八方から注がれているが、当のシファは気に留めていないようだ。
シファが西の都に来て大分経つが、まだシファを知らない者がいる。その中の一人がシファに声をかけようとして、仲間に必死に止められている。
どうやら朝方から酔っているらしい男は、仲間の忠告を聞かずシファに近づき、しつこく口説か始めた。
シファは差し障りない応えで、のらりくらりとかわそうとする。そんなシファに焦れたのか、酔っ払いの男がシファの手を取ろうとした。
すると次には男が悲鳴をあげていた。
せっかくですが、またの機会にしてくださいまし、とおっとりと言うシファのどこにそんな力があるのだろうか、シファに手を捻り上げられた男は、酔っているとはいえ、全く逃れられないでいた。
魔法か術かで抑えられているのかも知れない。
最初に止めた仲間の男がシファに謝り倒し、ようやく酔っ払いは解放された。
※
荷下ろしが終わり、露店の客も落ち着いたので、遠くから一連の出来事を眺めていた青年がいた。件の商隊を率いるヨシュアである。
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