26 / 30
26 それではヨシュアさん、さようなら ※暴力・残酷描写有り
しおりを挟む
一瞬で刺客たちは全て消えた。否、一人がシファの結界によって遠くの木に捕らえられている。ヨシュアがよく見れば、男はシファの槍に肩を貫かれ、木に打ち付けられていた。
ゆっくりと男に近づいたシファは振り返ってヨシュアに聞く。
「ヨシュアさんこの男の方に見覚えは」
「ああ、確か今朝、そう、今朝、関所で行き合いました」
遅れて木のそばに来たヨシュアが答える。
「あの時はごく普通の旅の商人のなりでしたが、やけに手続きが早く終わる者がいると妙に思ったので覚えています」
「さようでございましたか」
シロお願い。
シファは囁くと同時にいきなり槍を抜く。
男の肩から血が噴き出る。だがその一滴でさえ、シファの結界を抜けることは無い。返り血を浴びることもないシファの顔は綺麗なままだ。痛みにか失血にか、男が失神した。
シファに止血をしてやる気はない。上半身を見る見る血に染めていく刺客をシロが咥えてどこかへ消える。
「西の宮さまのところへやったのですか?」
「ええ。あなたの前では絶対に死人を出してはならぬと西の宮さまに申しつかっております」
とは言っても、西の宮の地下牢で結局彼らは死ぬ。
貴方の見えないところで手を血に染める人間がいる。
貴方の見えないところで貴方に関わったばかりに死ぬ人間がいる。
シファがそう示してやっても、ヨシュアの顔色は変わることはなかった。
それなら北の宮の前にでも捨てて大騒ぎにしてやった方があの刺客としてはまだ報われたかもしれない。そんな風にシファは考えて、随分自分は気が立っていると思う。
シファは改めてヨシュアを見る。
槍を片手に人気の無い防砂林をお散歩する女など普通でない。
ヨシュアはそんな女に不用意に近づいてきたりする。刺客相手とはいえ、シファの残虐な様を見ても顔色一つ変えない。
呑気なのか鈍感なのか、そんな男はもう勝手にすれば良い。シファがあれこれ気にすることも、いい年した男の将来を案じてやることも無いのだ。
「お掃除は終わりましたから私は帰ります」
槍についた血の始末をし、戻ってきたシロにヨシュアを宿まで送るように頼む。そしてシファは自分の身に日覆いをかけ直す。
「日覆いは残りの依頼料の代わりとして頂きます。ですから来月からの支払いは結構です」
「それだと随分と安く買い叩かれたことになりますが」
ヨシュアが苦笑するのに、シファは笑って告げる。
「それではヨシュアさん、さようなら」
あくまで自分に執着するのなら、無手のまま北の宮に行って喰われてしまえばいい。
そうなっても、この愚かな男は少しも後悔しないだろうから。
でももし、ヨシュアがそんなことになったなら。
シファは日覆いをやわりと掴む。そうしたまま、ヨシュアがシロに咥えられて消えるのを見送った。
※
それから一週間後。シファは北の都にいた。
ゆっくりと男に近づいたシファは振り返ってヨシュアに聞く。
「ヨシュアさんこの男の方に見覚えは」
「ああ、確か今朝、そう、今朝、関所で行き合いました」
遅れて木のそばに来たヨシュアが答える。
「あの時はごく普通の旅の商人のなりでしたが、やけに手続きが早く終わる者がいると妙に思ったので覚えています」
「さようでございましたか」
シロお願い。
シファは囁くと同時にいきなり槍を抜く。
男の肩から血が噴き出る。だがその一滴でさえ、シファの結界を抜けることは無い。返り血を浴びることもないシファの顔は綺麗なままだ。痛みにか失血にか、男が失神した。
シファに止血をしてやる気はない。上半身を見る見る血に染めていく刺客をシロが咥えてどこかへ消える。
「西の宮さまのところへやったのですか?」
「ええ。あなたの前では絶対に死人を出してはならぬと西の宮さまに申しつかっております」
とは言っても、西の宮の地下牢で結局彼らは死ぬ。
貴方の見えないところで手を血に染める人間がいる。
貴方の見えないところで貴方に関わったばかりに死ぬ人間がいる。
シファがそう示してやっても、ヨシュアの顔色は変わることはなかった。
それなら北の宮の前にでも捨てて大騒ぎにしてやった方があの刺客としてはまだ報われたかもしれない。そんな風にシファは考えて、随分自分は気が立っていると思う。
シファは改めてヨシュアを見る。
槍を片手に人気の無い防砂林をお散歩する女など普通でない。
ヨシュアはそんな女に不用意に近づいてきたりする。刺客相手とはいえ、シファの残虐な様を見ても顔色一つ変えない。
呑気なのか鈍感なのか、そんな男はもう勝手にすれば良い。シファがあれこれ気にすることも、いい年した男の将来を案じてやることも無いのだ。
「お掃除は終わりましたから私は帰ります」
槍についた血の始末をし、戻ってきたシロにヨシュアを宿まで送るように頼む。そしてシファは自分の身に日覆いをかけ直す。
「日覆いは残りの依頼料の代わりとして頂きます。ですから来月からの支払いは結構です」
「それだと随分と安く買い叩かれたことになりますが」
ヨシュアが苦笑するのに、シファは笑って告げる。
「それではヨシュアさん、さようなら」
あくまで自分に執着するのなら、無手のまま北の宮に行って喰われてしまえばいい。
そうなっても、この愚かな男は少しも後悔しないだろうから。
でももし、ヨシュアがそんなことになったなら。
シファは日覆いをやわりと掴む。そうしたまま、ヨシュアがシロに咥えられて消えるのを見送った。
※
それから一週間後。シファは北の都にいた。
0
あなたにおすすめの小説
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる