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第二章

27 向き合う(2/2)

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 第四王子との話──といっても一方的に王子が苦しげに吐き出すのを宰相が聞くだけだったが──が終わった。

 宰相も知らなかった王室の内情を話してしまった第四王子は、いよいよ王国には戻れないだろう。少なくとも第二王子が王国に健在である間は。もちろん、第四王子の話が本当かどうかはこれから一つ一つ確かめなければならないが。

 一国の王子の母国との決別は、あっけないものだった。生まれ育った王国に第四王子を取り戻したいと願うのは、彼の生母くらいであろう。彼が王国からいなくなったとて、王国は何も変わらない。むしろ安定する。

 王国大使に持ち帰らせた関税の引き下げをあっさり承諾してきたのは良いが、この後味の悪さには見合わない。
 
 今頃、心優しき海の王は、我が身の不甲斐なさと愛しい末子の不運を嘆いて見せていることだろう。
 王国大使に続き、第四王子の処理まで帝国に投げてきた王に、宰相は舌打ちをしたくなった。

「私は一旦失礼いたします。殿下は今日のところはお休みくださいませ。お食事はこちらへ運ばせましょう」

 宰相が言うのに、第四王子はようやく頷いた。
 頷くというより、かしいだような王子の様は、まるで糸が切れた操り人形のようで、この上なく弱々しいものだった。

 この王子は、ここから立ち上がることができるだろうか?

 あるいは、帝国の傀儡としての生を全うするだろうか?

 それとも、と宰相は考え、その先の困難な道のりを想像し、しかし、そうであればいいと思う。

 いずれにせよ、全ての道の第一関門は、当分の間王子を預かることになる宰相夫人の殺気を、宰相がなだめられるかどうかだった。

 何で自分がこんな目に。

 王国にはいつか、この腹立たしい思いの対価を払わせてやる。そう決心して、宰相は扉を開けた。



※─────
・王国大使に持ち帰らせた関税の引き下げ
→第一章16話「王子の行く先と護衛二日目」
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