子守 〜元盗賊の使いっ走りが皇子の守役になる話〜

すみよし

文字の大きさ
2 / 14
本編

2 小さいのは蛇を食う

しおりを挟む
 慌てたリヒトは、ガレス皇子を結界で守ると同時に、手近の石で蛇を打ち据える。

 自分の獲物を横から仕留められて怒るガレス皇子は、駆けつけたリヒトに掴みかかる。そんなガレス皇子の首根っこを難なく押さえ、目の前に死んだ蛇をぶら下げて、リヒトは叱る。

「よろしいですか若様、これは毒蛇! 触っちゃダメなやつです! 頭が三角じゃなくったって毒を持ってるのは多いんです。さあ、よっくご覧になって、この模様を覚えて下さい! 毒!」

 この蛇に噛まれ、解毒や中和ができなければ、身体の大きな荷引用の馬でも死ぬ。いつも解毒の魔法が間に合うとは限らない。

 リヒトの投擲に潰れた蛇の頭から、透明な毒の液が一筋垂れる。

 その不気味さと、リヒトの迫力に呑まれたガレス皇子は、こくりとうなずく。

「はい。じゃあ、この蛇は焼けば食えますから、後で一緒に頂きましょう」

 リヒトは短刀で手早く蛇の頭を飛ばす。腹を裂き、糞と内臓物を出した蛇を、その辺に落ちていた枝で作った簡易な櫓に吊り下げ干す。手の汚れは、砂にまぶして擦り落とす。

「ほら、宮様のおそばをお離れになっちゃなりませんよ」

 一連の作業を興味深そうに見ていた小さい殿下を、リヒトは再び東の宮に預ける。

「宮様! 目を離されちゃ困ります」
「見てたんだがなあ」
「見てたんじゃダメです、目を離さないで、ずっとおててでも繋いでて下さい」
「面倒臭い」
「放っときゃ、もっと面倒なことになりますよ。ご一緒に遊んでて下さい」
「遊ぶ? どうやって」

 リヒトは思い当たる。この厳つい御仁は、剣や槍を持てないような小さな子どもと遊ぶ事は無かっただろう。

 この豪腕がやっても危なくない遊び……。やや考えて、リヒトは思い付きを言う。

「あー、『たかいたかい』とか?」
「ああ、こうか?」

 無骨なクマがいきなり幼子を掴み上げ、片手で高く放り上げる。

 余計な事を言ったとすぐ後悔したリヒトだったが、放り投げられたガレス皇子は大喜び。落下して無事東の宮の腕に収まると、もう一度やれとねだる。

「俺の知ってる『たかいたかい』と違いますけど、物凄く高いですけどそれで宜しいです。ずっと地面にお下ろしにならないで下さい」
「分かった」

 そして、流石の東の宮も腕が重くなる程の回数「たかいたかい」を繰り返したガレス皇子は、リヒトがこんがり焼いて骨を取ってほぐしてやった蛇を食べ、今は東の宮の膝で丸くなってクウクウ寝ている。

「動くと大泣きしますよ」

 リヒトに脅されて、東の宮は大いに困惑するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...