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ぽかぽかとしたぬくもりに包まれたまま――
気づけば、俺はまだ隼の腕の中にいた。
「隼……今日さ。俺、図書室で勉強して待ってるから、その後ちょっとパス練付き合ってくんない? 俺もちょっと身体を動かしたいから」
「付き合う」
やっぱり隼は、部活がなくても一緒にいてくれる。
……そのことが、なんだか嬉しかった。
「おーい、お前ら。ホームルーム始めるぞ。いつまで青春やってんだ」
「ぎゃっ!」
俺は慌てて教室へ滑り込み――
みんながくすくす笑う中、顔を真っ赤にして自分の席へ。
少し遅れて隼が入ってきて、美羽ちゃんをちらっと見る。
その口元には、余裕と挑発がにじんだ笑みが浮かんでいた。
……なんなんだ?
そのあとも、気づくと隼のことばっか考えてて……授業なんて全然入ってこなかった。
やっと放課後になって、図書室で宿題と試験勉強を片づけて――
また大学案内を開いていた。
朝はあんなに選択肢があると喜んだのに、
長く描いていた未来が、ぽんと消えてしまった途端――
新しい未来を描こうとしても、真っ白で何も浮かばない。
それでも決めなきゃいけない。
焦りが、じわじわ胸を締めつけた。
扉の開く気配で顔を上げると――
ジャージ姿の隼が立っていた。
すらりとした背、汗を少しだけ含んだ髪、
切れ長の男らしい目がまっすぐに俺を射抜いて――
……かっこいい。
え? 今、俺なんて?
心臓が、どくどくとうるさい。
「い、今行く!」
その鼓動をごまかすように、急いで立ち上がった。
川原の一角。錆びたフェンスに囲まれた多目的コート。
俺たちはパス練をしている。
久しぶりに身体を動かす感覚が心地いい。
――やっぱり、俺はバレーが好きだ。
俺がトスを上げ、隼が跳躍し、
宙を切るようにスパイクが叩き込まれる。
フェンスが「ガンッ」と鳴り響く。
息もタイミングもぴったりで――すげぇ気持ちいい。
だけど、もう一緒に試合には出られない――
胸がきゅっと痛んだ。
「隼、今日はありがと」
「明日も」
一瞬、返事に詰まった。
有力大学から声がかかる選ばれた人に、
選ばれなかった俺の相手なんてさせていいのか――。
「ずっと一緒」
低く、圧のある声が静かに落ちた。
隼の優しさは、救いのようで、同時に怖かった。
このまま隼の優しさに包まれていたら、俺は一人で歩けなくなるんじゃないか――
うつむいた俺の前に、隼の手がそっと差し出された。
気づけば、その手を取っていた。
きゅっと包まれる。
大きくて、温かくて――絶対に離す気なんてない手。
その力が、揺らいでいた自分を支えてくれているようで心強かった。
「ハラセンが来月の練習試合、直央にベンチ入れって」
ドクン、と心臓が鳴った。
やっとスタメンになったのに外されて、
しかも一年に取られて……
どんな顔をして、みんなに会えばいいの?
俺なんかいたら、みんなも気まずいんじゃないの?
……怖い。
「ごめんっ……俺……俺はっ……」
うまく息ができない。
ああ、ダメだ……俺、すげぇダサい……
部活ひとつで、こんなにも脆い……。
その時――
隼が、ぎゅっと俺を抱きしめた。
「いいよ、どっちでも」
隼が俺の汗ばんだおでこにそっとキスを落として――
そのまま、頬やこめかみへ、
ぽつ、ぽつ、と優しいキスを降らせてくる。
「何で」とか、「やめて」とか……
そんな言葉、なにも浮かんでこなくて。
ただ、あたたかくて、
そのひとつひとつに心が救われていくみたいで――
苦しかった呼吸がゆっくり整っていった。
コツンと、おでこ同士が触れて、
隼が、甘くて、とろけるような瞳で見つめてくる。
キスしそうな距離……また、あの濃厚なのをするのかな。
思わず、隼のくちびるに視線が落ちた。
「直央、好き」
敏感なくちびるに、隼の甘い息がふっと触れて――
「ん……」
あ、この「ん」は――と思った瞬間、
柔らかくついばむようなキスが降ってきて。
もう――どっちでもいい。
ただ、隼がこうして触れてくれるのが――
俺のくちびるに自分のを重ねてくるのが――
どうしようもなく自然で、しっくり来てしまって。
こうあるべきだったと思ってしまったから。
キスを受け入れている自分は、隼のことを恋愛として好きになってきてる。
――そう気づき始めていた。
気づけば、俺はまだ隼の腕の中にいた。
「隼……今日さ。俺、図書室で勉強して待ってるから、その後ちょっとパス練付き合ってくんない? 俺もちょっと身体を動かしたいから」
「付き合う」
やっぱり隼は、部活がなくても一緒にいてくれる。
……そのことが、なんだか嬉しかった。
「おーい、お前ら。ホームルーム始めるぞ。いつまで青春やってんだ」
「ぎゃっ!」
俺は慌てて教室へ滑り込み――
みんながくすくす笑う中、顔を真っ赤にして自分の席へ。
少し遅れて隼が入ってきて、美羽ちゃんをちらっと見る。
その口元には、余裕と挑発がにじんだ笑みが浮かんでいた。
……なんなんだ?
そのあとも、気づくと隼のことばっか考えてて……授業なんて全然入ってこなかった。
やっと放課後になって、図書室で宿題と試験勉強を片づけて――
また大学案内を開いていた。
朝はあんなに選択肢があると喜んだのに、
長く描いていた未来が、ぽんと消えてしまった途端――
新しい未来を描こうとしても、真っ白で何も浮かばない。
それでも決めなきゃいけない。
焦りが、じわじわ胸を締めつけた。
扉の開く気配で顔を上げると――
ジャージ姿の隼が立っていた。
すらりとした背、汗を少しだけ含んだ髪、
切れ長の男らしい目がまっすぐに俺を射抜いて――
……かっこいい。
え? 今、俺なんて?
心臓が、どくどくとうるさい。
「い、今行く!」
その鼓動をごまかすように、急いで立ち上がった。
川原の一角。錆びたフェンスに囲まれた多目的コート。
俺たちはパス練をしている。
久しぶりに身体を動かす感覚が心地いい。
――やっぱり、俺はバレーが好きだ。
俺がトスを上げ、隼が跳躍し、
宙を切るようにスパイクが叩き込まれる。
フェンスが「ガンッ」と鳴り響く。
息もタイミングもぴったりで――すげぇ気持ちいい。
だけど、もう一緒に試合には出られない――
胸がきゅっと痛んだ。
「隼、今日はありがと」
「明日も」
一瞬、返事に詰まった。
有力大学から声がかかる選ばれた人に、
選ばれなかった俺の相手なんてさせていいのか――。
「ずっと一緒」
低く、圧のある声が静かに落ちた。
隼の優しさは、救いのようで、同時に怖かった。
このまま隼の優しさに包まれていたら、俺は一人で歩けなくなるんじゃないか――
うつむいた俺の前に、隼の手がそっと差し出された。
気づけば、その手を取っていた。
きゅっと包まれる。
大きくて、温かくて――絶対に離す気なんてない手。
その力が、揺らいでいた自分を支えてくれているようで心強かった。
「ハラセンが来月の練習試合、直央にベンチ入れって」
ドクン、と心臓が鳴った。
やっとスタメンになったのに外されて、
しかも一年に取られて……
どんな顔をして、みんなに会えばいいの?
俺なんかいたら、みんなも気まずいんじゃないの?
……怖い。
「ごめんっ……俺……俺はっ……」
うまく息ができない。
ああ、ダメだ……俺、すげぇダサい……
部活ひとつで、こんなにも脆い……。
その時――
隼が、ぎゅっと俺を抱きしめた。
「いいよ、どっちでも」
隼が俺の汗ばんだおでこにそっとキスを落として――
そのまま、頬やこめかみへ、
ぽつ、ぽつ、と優しいキスを降らせてくる。
「何で」とか、「やめて」とか……
そんな言葉、なにも浮かんでこなくて。
ただ、あたたかくて、
そのひとつひとつに心が救われていくみたいで――
苦しかった呼吸がゆっくり整っていった。
コツンと、おでこ同士が触れて、
隼が、甘くて、とろけるような瞳で見つめてくる。
キスしそうな距離……また、あの濃厚なのをするのかな。
思わず、隼のくちびるに視線が落ちた。
「直央、好き」
敏感なくちびるに、隼の甘い息がふっと触れて――
「ん……」
あ、この「ん」は――と思った瞬間、
柔らかくついばむようなキスが降ってきて。
もう――どっちでもいい。
ただ、隼がこうして触れてくれるのが――
俺のくちびるに自分のを重ねてくるのが――
どうしようもなく自然で、しっくり来てしまって。
こうあるべきだったと思ってしまったから。
キスを受け入れている自分は、隼のことを恋愛として好きになってきてる。
――そう気づき始めていた。
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