異世界留学!隣の席は、銀髪クールな竜人プリンス様だった!

飢杉

文字の大きさ
3 / 22

第3羽 モテるって、異世界仕様!?

しおりを挟む

「初めまして。僕はロイ=フォレスター。ようこそ、異世界蒼天そうてん高校へ」

 目の前の金髪エルフ――ロイくんは、微笑んだまま軽く手を取ってきた。
 えっ、何この人、初対面なのに距離が近い! しかもその指、細くて綺麗で、まるで演奏者みたい……って、いやいや!

「うん、君が一色あやさん? なるほど、たしかに話題になるのもわかるよ。すごく可愛い」

 ――は?
 え、可愛いって、え、私? いやいやいや、絶対にこれはテンプレの挨拶か、何か……。
 周囲がざわついている。さっきから廊下の女子たちが「きゃああっ」って悲鳴あげてるけど、それ、ロイくんのせいだよね……。

「ロイ。人のペアに手を出すな。」

 低く、冷えた声。
 見ると、シウくんがロイくんの手をぴしっと払いのけていた。
 普段は無表情の彼が、眉をほんの少しだけ寄せている。……あ、これって、もしかして怒ってる?

「これはご挨拶だよ、シウ。心配しないで、僕は手段を選ばないけど、礼儀はわきまえてる」
「なら、節度を持て。」

 相変わらず、シウくんの王子様オーラが全開だった。というか、ロイくんも王子様みたいなオーラが漂っている。
 異世界に来て早々、二人の王子様が私の目の前で、睨み合ってる……。こ、これって、どういう状況なの――!?
 
「ふふっ、そうやって眉間にしわを寄せると、ますますあの時を思い出すな。……懐かしいよね、二年前の魔法大会」

 ぴりぴりとした空気に、私の背筋が凍る。えっ、なに、ふたりって昔から因縁がある感じなの?
 魔法大会って、やっぱり、異世界には魔法とかそういうのってあるんだ。

「ふーん、ロイがこんなに反応するなんて……」

 唐突に聞こえた声。だけど、聞き覚えがはっきりある。
 振り向くと、ミアさんが優雅な足取りで歩いてきていた。後ろには、取り巻きの女の子たちが数名、わざとらしく笑いながらついてきている。

「いつもはもっと冷たいのに。やっぱり珍しいものって、興味を引くのね」

 珍しいものって、私のこと?

「人間界からこの学園に来た子なんて、片手で数えるほどしかいないんだから」

 くすっと笑うミアさんは、やっぱり綺麗で、お嬢様らしい余裕がある。
 だけど、その言葉のひとつひとつが、胸に棘が刺さってくるようにズキズキしてくる。
 考えてみれば、確かに。地味で奥手で、まともに目を合わせて話すことすら出来ない私に、異世界の王子様たちが私に寄ってくるなんてふつうじゃあり得ないよね。
 
「それに、シウとペアだなんて、本当にもったいない。彼は、竜人の中でも最上級の名家のドラティール家なのよ。だから、あまり……勘違いしないでね?」

 返す言葉が見つからなくて、私は視線を落とす。
 私、何もしてないのに……。でも、何も言い返せないのが、悔しい……。

「そこ! まだ授業中よ? 席につきなさい」

 如月先生が、騒ぎを止めるために仲裁してくれた。
 今思えば、本当にそうだ。新しい世界、新しい種族。それにイケメンな王子様。夢のような舞台に、私は浮かれていた。
 でも、現実的に考えたら、私なんてただの人間。魔力もなければ、取り柄もない。それが、人間ってだけで珍しいという理由でちやほやされてるだけなんだ。
 そう考えてたら、自然と目から涙が出てきそうだった。ううん、零れ落ちてたかも。

 「そう下を向くな。レポートが提出できなくなる。」

 シウくんは目を逸らすように横を向きながら、ハンカチを差し出してきた。
 黒くて闇に包まれたようなハンカチだった。でも、すごく心が温かくなった。

「うん、ありがとう」

 自然と、言葉が出てきた。ネガティブなことばっかり考えてちゃ駄目だ。せっかく、新しい世界に来て、新しいことだらけなんだから、楽しまなくちゃ。
 それに、新しい自分になって羽ばたきたいって想って来たんだから!

    ◇


「気にするな。あれが彼女なりの表現だ。」

 授業後。レポートを作成しながら、シウくんはそう言ってくれた。
 ミアさんに言われたこと、気にしないようにって思っていた。けれど、やっぱり気にしないなんて出来ないし、心の奥で引っかかってる。私がさっき、しょんぼりしてたのを見てたのかな。
 でも、正論だからこそ、何も言えない。私は何の取り柄もないし、ここに来たのだって偶然で……。

「特別な感じがするんだ。」

 ぴたりとペンを書く手が止まって、シウくんが私を見た。いつものクールな瞳が、少しだけ揺れてるように見えた。
 ちょっと目線を逸らしながら、私に語りかけてくれた。

「君は……笑ってた。俺のことを、いや、竜人族に対して驚きながら、怖がらずに。あの時、教室で。初めてだ。そういう反応をする異種族は。」

 心臓が、またドキンって跳ねた。それって……それって、もしかして、ちょっとだけ褒めてくれたってこと?
 ……いや、でもたぶん、気のせいかもしれない。勘違いだったら恥ずかしいし!
 どうしよう。この間が恥ずかしくて、胸がムズムズしてきた。何か言わなきゃ。

「あの、シウくんって……どんな人なんですか?」

 やばい。ど、どうしよう。変な質問しちゃった! 気が動転して、おかしくなっちゃいそう。

「昔はドラティール家という、竜王の家系に誇りを持っていた。だが今は、無駄なものを削ぎ落とした。全て。」
「じゃあ、今の私は……無駄じゃない、ってこと?」

 ふと漏れた言葉に、自分で驚いた。また暴走しちゃった、私。止まれ、止まれっー!

 でも、彼はほんの少しだけ口角を上げて――。

「……少なくとも、騒がしくはない。」

 それ、ほめてます? てか、えっ、今の、笑った?

 シウくんが、私にだけ、笑った……!?

 や、やばい……なにこの世界。トキメキが多すぎて心臓がもたない……!
 こんなの今までだったら、無縁だったのに!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

処理中です...