異世界留学!隣の席は、銀髪クールな竜人プリンス様だった!

飢杉

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第13羽 合宿に混浴!?

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 ペア発表の翌日。
 いよいよ――合宿スタート。

 場所は、学園敷地内の「異文化交流寮」。
 木の温もりを感じる、ちょっぴりオシャレな洋館風の建物だ。

「ここが……交流寮……!」

 ドアを開けた瞬間、ふわっと香る花の匂い。

「うわ、広っ! めっちゃ綺麗!」

 みほが目を丸くして感動してる隣で、わたしはふと、同じ空間にいる“彼”の気配を感じてドキリとする。

 そう、ここでは――ペアごとに部屋割りされる。
 つまり、異種族同士で、ひとつ屋根の下!
 べ、別に同じ部屋ってわけじゃないよね!?

 そう思ってた矢先、如月先生がにこにこしながら言った。

「各ペアには1室ずつ与えられます! ルームシェア、楽しんでね!」

「え、えええええええっ!?」

 叫んだのは、わたしだけじゃなかった。

「ちょ、待って! 男女同室ってこと!?」

「もちろん、部屋の中に仕切りはあります! 異文化ですからね!」

 いやいやいや、そーいう問題じゃなくない!?

 しかも相手は、あのシウくん。
 クールで、完璧で、謎めいてて、しかも竜人の王子様……!

「……荷物は、こっちに置けばいいのか?」

 静かに声をかけてきたシウくんに、わたしの脳内はパニック。

「あ、あのっ! これって本当に一緒の部屋なんですか……?」
「そう聞いたが。」

 彼の黒曜石みたいな瞳がこちらを見つめる。
 冷たいようでいて、どこか穏やか。
 その視線だけで、頭がぽーっとしてしまう。

「……不都合があるのか?」

「い、いえっ! そ、そんなこと……っ」

 あるよ!? あるけど、でも、ないって言うしかないじゃん!?

「ふん、人間の女子は繊細なのね」

 そう言って、ミアさんが自分のルームキーをクルクル指で回しながら、わたしたちを見下ろす。

「私はロイとでもよかったのに。ねえ、ロイ?」

「え、えぇぇ!?  僕、ミアちゃんとはまだそんな……!」

 ロイくんの顔が引きつってる。みほは黙ってこっちを見てる。

 ……なんか、いろんな方向に火花が飛んでる気がする。

「まあまあ、まずは慣れるところから始めましょう」

 如月先生が爽やかに笑う。

「ちなみに――お風呂は交代制。今日のペア順に、時間を割り当てます!」

 その瞬間、張り出されたスケジュールを見て……固まった。

「ま、待って……うそでしょ……」

 わたしとシウくん、お風呂時間、まさかの“同時”。

 理由は――「竜人族は高温のお湯が苦手なので、低温設定のお湯に入る人間と共用でも可」という配慮らしい。

 だけど、だけど!
 む、無理無理無理無理!
 わたしの慌てぶりとは裏腹に、シウくんはただ一言。

「俺は気にしない。」

 そのクールな一言が、なぜか余計に恥ずかしい。

「き、気にしてよぉ~~~~っ!」

 叫んだわたしの声が、寮の廊下に響き渡った。


    ◇



 同室生活、1日目の夜。

「……よし、今日は早く寝よう……」

 ベッドに潜り込みながら、わたしは大きく息を吐いた。
 今日一日、ほんっとに緊張の連続だった。
 共同生活スタート。ルームメイトは……あのシウくん。竜人族の王子様。

 でも、ちゃんと部屋の真ん中に仕切りカーテンもあるし……!
 見えない。声も、そんなに通らない。……はず。
 むしろ、意識しなければきっと、普通に生活できる――はずだったのに。

「……一色。」
「ひゃっ!?」

 突然、名前を呼ばれた。びくっとして跳ね起きる。
 仕切りの向こうから、低くて、落ち着いた声がする。

「寝たか?」
「えっ、ええっと……まだ、寝てませんっ」
「そうか。」

 静寂。え、これ……なに?
 おやすみの挨拶? それともただの確認?

「……その、なにか、用ですか?」
「……いや。なんとなく。」

 なんとなくってなに!?
 言葉に詰まるわたしに、シウくんがぽつりと続ける。

「夜が静かだな。竜王の城では……風がもっとうるさい。」
「えっ、あ……そうなんだ」

 そっか。竜王の城って、夜の静けささえ違うんだ。
 そんな、なんてことない雑談なのに、ちょっと嬉しくなる。

「……シウくんは、ホームシックになったりしないの?」
「……ならない。一色はどうなんだ?」

 ホームシックかぁ。ここに来てから、驚くことの連続だった。
 一度も、現代のことを考えたことなかったな……。
 まだ、シウくんと一緒にいたい……。

「私は、異世界に来て楽しいよ。元の世界に帰りたいとは思わないよ。」
「そうか。」

 その返事は、ほんの少し間があった。
 でも、それを否定するように言葉が続く。

「ペアに一色を選んだのは、俺の意思だ。一色……お前に興味を持ったから。」
「――えっ」

 心臓が、跳ねた。

 仕切りの向こうにいる彼の顔は見えない。
 でもその言葉は、まっすぐに届く。

「お前が、俺を見て、笑った。驚いた。それが……面白かった。」

 少し照れたような、でも真剣な声だった。

「俺たちの世界では、顔色を気にするやつは少ない。だが……お前は、すぐ顔に出るな」
「だ、だって……人間だもん……!」

 布団の中で、頬を抑える。
 声だけの距離なのに――近すぎる。

 顔が見えないからこそ、余計に照れる。
 余計に、心が近づく気がしてしまう。

「……おやすみ、一色」
「……おやすみ、シウくん」

 カーテン一枚の向こうにいる彼を思いながら、わたしはそっと目を閉じた。

 ――おかしいな。
 いつもより、胸がトクントクン、うるさいよ。
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