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第16羽 竜の封蝋
しおりを挟む合宿が終わり、日常が戻ってきた――はずだった。
でも、朝教室に座って、私の机の上にあったのは……一通の封筒。
封は金色のワックスシール。竜が巻きついた模様。
……なにこれ。すごく、豪華……。
「おおっ、なになにそれー!?」
ぴょこんと顔を出してきたのは、もちろんみほちゃん。
「うわ、手紙! 本物の封蝋? しかもドラゴン柄!? 絶対やばいやつ! 開けて開けて!」
「えっ、ちょ、そんなに急かさないでよ~」
ドキドキしながら封を開けると、中から現れたのは――。
〈竜王家親善パーティーへご招待〉
招待者:一色あや様
日時:今週金曜日 午後七時
場所:王都・空中城ホール
「え……っ! 親善パーティー……? これって……?」
「きゃーっ! やばいやばいやばい!!!」
みほちゃんが思いっきり机をバン!と叩いた。
「それ、絶対シウくん関係だよ! 竜王家ってことはつまり、もう、王族レベル! てか空中城! ファンタジーガチじゃん!」
そんな……わたしなんかが、行っていいの……?
まるでおとぎ話みたいな招待状に、現実感が追いつかない。
「ねえ、行くよね? 行くよね! ドレスとかどうする? ヘアメイクもプロ呼ばないと! あーっもう!」
「ちょ、ちょっと待って! 落ち着いてみほちゃん!」
「落ち着けないっしょこれはあああ!」
あまりのテンションに、教室中がざわつく。
――そのとき。
「静かにしろ。席に戻れ、清水。」
ぴたりと声が止まる。
振り返ると、そこにはシウ=ドラティール。
涼しげな表情。でも、その視線は真っ直ぐに、わたしを見ていた。
「その招待状は、俺が用意させたものだ。」
「え……やっぱり、シウくんが……?」
「一色。お前には、“紹介”したい者たちがいる。俺の家族と――この世界での、お前の立ち位置を。」
その瞳は、いつもより少しだけ優しかった。
けれど、どこか“決意”を含んでいるようにも見えた。
紹介……家族……? それって――。
まさか、これって両親に挨拶ってやつ!?
「おい、ちょっと待て」
鋭い声が割り込んでくる。
「僕は聞いてないぞ、そんなこと」
金色の髪。長い耳。
ロイ=フォレスターくんが、不服そうに立ち上がった。
「俺もあやちゃんをパーティーに誘うつもりだった。だけど、それを出し抜いて“招待”とはね。王族らしい手回しだな」
「文句があるなら、正式な手段で申し込め。」
「そのつもりさ。“エルフ王家枠”でな」
な、なにこれ!? なんでわたし、王家に取り合いされてるの?
教室中が静まり返る中、わたしだけが頭を抱えていた。
でも――胸の奥には、確かに“ときめき”があって。
わたし、ちゃんと応えなきゃ……。
こんなすごい世界に引き込まれていく。
その中心に、自分がいる――。
夢じゃない。これは、現実なんだ。
また、右腕から紋章が浮かび上がってきた。
――羽の模様が、私に勇気をくれるんだ。
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