【R18】サ終のゲームに取り残されました! 〜最推し3種に迫られて身体がもちません〜

浅岸 久

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前日譚、そして

前日譚3.導手のなかに、もうひとりいる(騎士ウィル)

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『バグ王、バグってるぅ……!』

 そんな声が響いてきて、俺はため息をついた。
 あー……アイツ・・・の声だ。導手の声とダブって聞こえやがる。
 俺は、すぐ近くで王サマに指示出してる導手の方に視線を向ける。その姿に、ハッキリとはしないものの、別の姿がダブって見える気がした。

 ……チッ。
 ユイ・・のやつ。
 バグ王バグ王って、あのヤロウばっかかよ。ちっとは俺も戦闘で使えっつーの。
 マジ、王サマ先頭だと俺は出番ねェからな。後ろでこうして見物ばっかだっての。ケッ。

 俺は悪態をつきながらも、流れ弾が導手に向かってこないか、周囲の警戒は怠らない。
 ……それでもよォ。もう、いいんじゃねーかな。
 なにがって?
 王サマがいりゃ、もういいだろ。俺、必要なくねえ?

「おうおう、何ふて腐れてやがんだ? 若造」

 って、不機嫌なのがオッサンに見つかった。

「るせェ。つーか、テメエよくそんなに呑気に見てられるよな。クソ。もう俺ら留守番でいいだろ、留守番で。城で寝る」
「どうせ嬢ちゃんが心配でじっとしていられねェくせに」
「…………るせェ」
「王サマが俺らの手足になってるって思やァいいんだ。高みの見物キメてりゃあいい。楽だろ? 実に」

 ったくよ。
 オッサン未来の俺は、ああ言えばこう言う。
 俺は将来こんなヤロウになっちまうのかと思うと、マジでげんなりする。つか、俺の目指してた騎士像とちがいすぎねえ?
 裏社会で生きるハメになるとか、俺、どれだけ堕ちンの?

 髭をたくわえ、銃斧を担いだ厳ついオッサン。身体中傷だらけで、目元の傷も増えてやがる。
 本来俺も、あるべき道を進んだら、どっかで悲惨な目にあうんだろうな。
 ……まあ、苦労した先で主を見つけたことは喜ばしいけどよ。

 でも、この状況ややこしすぎねえ?
 ええと? この時空でのホンモノの俺は、この首領と呼ばれるオッサンで?
 俺は別の時空から飛ばされてきたと。で、元の時空にはもう帰れないらしいんで? 俺は未来の俺と仲間として、一緒に戦っているっつーわけだ。
 しかも、未来の俺はひとりじゃない。
 さらに別の時空の俺も呼び出されて、合計3人全部俺。なんだそりゃ。

 そのうえ、3人揃って、同じヤツを主として認めちまった。
 ……まあ、俺だしな。求める主も結局同じヤツになるのは当然か。

 つーわけで、そんな唯一の主の意志で、こうして戦いに借り出されてるわけだ。
 ま、今戦ってるのは、別の俺だけどよ。
 ったく。
 若ェ俺にももう少し頼ってくれてもいいだろ? なあ? ユイ? 俺だって十分戦えるぞ?
 なんて思いながら、俺は導手の方に視線を向ける。

「……っ」

 ――ああ、導手の姿が揺らぐ。
 その姿の向こうに、もうひとつの強い存在を感じるから、いつも目が離せなくなるんだ。

 あの女の周りは、こういった不思議な現象がよく起こる。
 導手……いや、ユイ。
 掴めそうで掴めない、俺の唯一。



 ――導手のなかに、もうひとりいる。

 それに気がついたのは、たしか、彼女に出会って間もなくのことだったか。
 まだコイツらの味方になる前のことだ。
 俺の前に現れた、この城のリーダーの姿に、そして声に、ずっと違和感を感じていた。
 そう、何かがダブって見えやがったんだ。ずっと。

 導手に出会ってからその感覚はずっと続いていて、強く意識するたびに、その存在がはっきりと感じ取ることができるようになる。
 そう。
 導手にダブって見える女がいたんだ。
 というより、導手の向こうに見えるその誰かこそ、本当に俺たちを導いてくれる誰かなのだとわかった。

 俺たちは導手についていってるが、おそらく、あの姿導手自身はただの人形だ。
 なにかの器。
 ――ヒトじゃねえ。
 で、俺たちの頭には、ずっと認識を阻害するかのような魔法がかかっていやがる。
 
 でも、それを打ち消して気がついた。アレを動かしている別の意志みたいなのがあって――そいつの名前は、ユイというらしい。
 どういう仕組みかはわからねェ。だが、いわばそれは、世界の意思に近いのだろう。それ以外に説明がつかねえんだ。

 最初は当然、認識阻害魔法の存在も、導手の存在自体も疑いにかかったさ。
 でも、すぐにそんなものはバカらしくなった。
 だって、導手にダブるあの声は、女は、やっぱり俺たちのそばにいて、素直な気持ちをいつもぶつけてきたから。
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