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4話
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その音は鈍く、まるで車の衝突事故
のように不快感のある音だった。
その音は今目の前で大きく鉈のように
変形した右腕を受け止めた
自分の右腕から響いている。
(クソッ、一人間に合わなかった…!)
進は男の空いている脇腹に左拳を放つ。
「ヴギィ!?」
最早人間の出す声にならない奇声を
漏らしながら、
男は後方に大きく吹っ飛んだ。
何とか踏ん張ったものの頭が大きく項垂れている。
この隙を進は逃さなかった。
ダン!
力いっぱいに地面を蹴り、一瞬のうちに
男との距離を詰める。
「ッラァ!」
そして丁度いい高さに下がった頭を
ボレーキックのようにして飛び蹴りを
喰らわせる。
「ヴギャア!!」
奇声を上げながら横に倒れると
それまで焦点の定まっていなかった
瞳孔が目からフェイドアウトし、
泡を吹いた。
ひとまず終わった。
安堵感に少しため息をつくと、
もうタンパク質の塊となってしまった、
小太りの亡骸に近ずき、手を合わせる。
「せめてそっちで、安らかに眠って下さい。」
横目に見るとこの哀れな被害者の同僚が
目を白黒させながら、
こちらを見ている。
これ以上人目に付くのは不味いと思い
合唱を終えた後、近くの民家の屋根に、
飛び乗った。
◆
「なんだったんだ…あれ…」
あまりの急な展開に理解が追いつかない
仁だったが、とにかく自分の身は無事のようだ。
「とりあえず警察呼ぼう。」
薫も何がなんだか分からないという顔を
している。
安堵感により力が抜けてしまった。
腰を抜かしたの方が正しいのか、
いやどうでもいいか。
警察を呼び、事情聴取を受けた二人だったがいきなり襲って野上の命を奪った
あの男、そして男から自分達を助けた
仮面の男、と色々ありすぎて二人とも
どこから話せばいいのか分からなかった
防犯カメラに一部始終が
全て写っていた為信じては貰えたが、
野上は帰って来ないという事実が
受け入れられなかった。
◆
野上の葬式が終わり、いつになく重い
足取りで家へと帰っている最中、
仁はそこでかけられた言葉の一つ一つが
頭の流れていった。
そのどれもがテンプレ通りであり、
労わられているはずなのに何故か気分は
下がる一方だった。
あの時、
狙われたのが自分で会ったならどんなに良かっただろうと
自分で自分に傷をつけた。
そんなことしようが死者は蘇らない。
それでも自身を傷つけていた方がまだ
マシだった。
だがそれでも視線はゆっくりと下に落ちていく。
さながら拗ねている子供そのものだった。
肩に来た軽い衝撃に現実に引き戻される
どうやらぶつかった様だ。
「すみません。」と謝り、顔を上げた。
その顔に見覚えがあった。
「いえいえ…
って仁さんじゃないですか。
どうしました?顔色が悪いですよ。」
進だった。
少し驚いたが今の時間と学生服からして
下校途中なのだろう。
近くに駅もあることだし
「あぁ…久しぶりだね…
ちょっと色々あってね…」
それが限界だった。
年甲斐もなく悲しみに暮れる感受性は
あったのだと少し驚いていた。
そして進は知るよしも無いことを
口走り始めた。
「その……野上さんの件はお悔やみ申し上げます。」
のように不快感のある音だった。
その音は今目の前で大きく鉈のように
変形した右腕を受け止めた
自分の右腕から響いている。
(クソッ、一人間に合わなかった…!)
進は男の空いている脇腹に左拳を放つ。
「ヴギィ!?」
最早人間の出す声にならない奇声を
漏らしながら、
男は後方に大きく吹っ飛んだ。
何とか踏ん張ったものの頭が大きく項垂れている。
この隙を進は逃さなかった。
ダン!
力いっぱいに地面を蹴り、一瞬のうちに
男との距離を詰める。
「ッラァ!」
そして丁度いい高さに下がった頭を
ボレーキックのようにして飛び蹴りを
喰らわせる。
「ヴギャア!!」
奇声を上げながら横に倒れると
それまで焦点の定まっていなかった
瞳孔が目からフェイドアウトし、
泡を吹いた。
ひとまず終わった。
安堵感に少しため息をつくと、
もうタンパク質の塊となってしまった、
小太りの亡骸に近ずき、手を合わせる。
「せめてそっちで、安らかに眠って下さい。」
横目に見るとこの哀れな被害者の同僚が
目を白黒させながら、
こちらを見ている。
これ以上人目に付くのは不味いと思い
合唱を終えた後、近くの民家の屋根に、
飛び乗った。
◆
「なんだったんだ…あれ…」
あまりの急な展開に理解が追いつかない
仁だったが、とにかく自分の身は無事のようだ。
「とりあえず警察呼ぼう。」
薫も何がなんだか分からないという顔を
している。
安堵感により力が抜けてしまった。
腰を抜かしたの方が正しいのか、
いやどうでもいいか。
警察を呼び、事情聴取を受けた二人だったがいきなり襲って野上の命を奪った
あの男、そして男から自分達を助けた
仮面の男、と色々ありすぎて二人とも
どこから話せばいいのか分からなかった
防犯カメラに一部始終が
全て写っていた為信じては貰えたが、
野上は帰って来ないという事実が
受け入れられなかった。
◆
野上の葬式が終わり、いつになく重い
足取りで家へと帰っている最中、
仁はそこでかけられた言葉の一つ一つが
頭の流れていった。
そのどれもがテンプレ通りであり、
労わられているはずなのに何故か気分は
下がる一方だった。
あの時、
狙われたのが自分で会ったならどんなに良かっただろうと
自分で自分に傷をつけた。
そんなことしようが死者は蘇らない。
それでも自身を傷つけていた方がまだ
マシだった。
だがそれでも視線はゆっくりと下に落ちていく。
さながら拗ねている子供そのものだった。
肩に来た軽い衝撃に現実に引き戻される
どうやらぶつかった様だ。
「すみません。」と謝り、顔を上げた。
その顔に見覚えがあった。
「いえいえ…
って仁さんじゃないですか。
どうしました?顔色が悪いですよ。」
進だった。
少し驚いたが今の時間と学生服からして
下校途中なのだろう。
近くに駅もあることだし
「あぁ…久しぶりだね…
ちょっと色々あってね…」
それが限界だった。
年甲斐もなく悲しみに暮れる感受性は
あったのだと少し驚いていた。
そして進は知るよしも無いことを
口走り始めた。
「その……野上さんの件はお悔やみ申し上げます。」
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