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21 冒険者は、酒交わす。
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「「かんぱーい」」
カチャンと音を立ててグラスを合わせる。タットさんは勢い良くビールをあおり、既にジョッキの半分になってる。
俺はグラスに口を付けて1口、2口、とチビチビと飲んだ。馴染みある炭酸と若干の苦味、けどジンジャーエールの方が強い?ジュースみたいで勢い良く飲んでしまいそうだ。特別に美味しいかと言われると、まだよく分からない。
「ゆん君は少しずつ飲みなね。あと食事もお腹の中に入れよう」
「はい」
既にテーブルにはお待ちかねソーセージの盛り合わせ、サラダとジャン……なんとかが運ばれていた。タットさんは甲斐甲斐しく俺の取り皿に取り分けてくれている。
「どうぞ。たくさんお食べ」
「ありがとうございます」
さっそくフォークを手に取り、遠慮なくソーセージに突き刺し口に運ぶ。パリンっと皮の破れる気持ちの良い音と共に鼻を抜ける豚肉の香りと口いっぱいに広がる肉汁。これこれこれぇ!!俺はしっかりと噛み締め、ソーセージを味わった。
そんな様をニコニコしながらタットさんが見てる。俺がコテン?と首を傾げると、ニヤッと笑って
「はい、その後にお酒を口にしてごらん?」
と言ってきたので、ソーセージを飲み込み言われるがままにカクテルを口にした。
「うまっ!!お酒おいしっ!」
「でっしょー?これがねぇ、ビールになると苦味がより一層美味しく感じるんだよー」
してやったり、とニコニコ笑顔で教えてくれる。俺のは飲みやすくしたビアカクテルだったけど、十分美味しく感じた。
「まぁ、飲み過ぎには注意だけどね」
「はい。気をつけます」
に、しても美味しい。お酒って食事と一緒に飲むと、こんなにも美味しかったのか。
一気に飲まないように気をつけながら、食事とアルコールを楽しんだ。サラダもボリュームあって食べ応えがあったし、ジャン……
「ジャンバラヤだよ。ケイジャン料理。アメリカンな炊き込みご飯だと思って」
そうそれ。ジャンバラヤも色々なスパイスの味がして、初めて食べる味だったけど、美味しかった。2人で会話を楽しみつつ、お酒と食事も楽しみつつ、少し食事量が物足りなかったので、ガンボスープ(これもケイジャン料理らしい。魚介と野菜がめっちゃ入ってるトマトベースのスープだった)にパンを付けた。お酒も、1杯目ではあまり酔わなかったので、2杯目にビター・オレンジを頼んだ。
「さっきのより苦味が強め……?でもこのお酒も美味しいです。てか、全部美味しいです」
頼んだ食事とお酒は本当に全部美味しかった。ケイジャン料理?がウリなのかと聞いたら、別にそう言うわけでも無く、ただ単にイシヤマさんがジャンバラヤとガンボスープが好きだからメニューに置いてるだけらしい。なんとなく、イシヤマさんらしい理由だと思った。
「でっしょー?」
と、自分が褒められたみたいに、嬉しそうに笑うタットさんが可愛い。
「お酒はね、他のスタッフが作ったりもするんだけど、料理はイシヤマ本人がほとんど作ってるんだよ。イシヤマの料理は本当に美味しいんだよ!」
聞けば、ここのバーには夕飯目的で足繁く通っているらしい。お酒を飲むこともあれば、食事のみで済ます事も。お酒を飲むお店なのに、それでいいのかと聞いたら、イシヤマさんがそれでいいって言ってるとのこと。他のお客さまでも夕飯代わりに入店してくる事があるとか。
「メニュー開発のために無料で新作食べさせてくれることもあるんだよー」とニコニコと教えてくれた。
……随分と信頼を寄せてるんだな……
なんとなく、俺のみぞおちの部分がギュッと縮こまった。
「イシヤマさんと仲良いんですね」
別に機嫌悪いわけではないのだが、出た口調は、ちょっとツンケンした言葉だった。タットさんは、ん?と一拍置いて、直ぐに俺の態度に気づいてくれた。
「イシヤマはね、学生の頃のバイト先の先輩でね、無類の女の子好きなんだよ。何だかんだの縁で、今も付き合いが続いてるけど、それだけだよ。まぁ、料理の腕は認めてるけどね」
学生の頃は良く手料理たかってたなぁ。なんて笑いながら教えてくれたけど、それでもみぞおちの収縮は治まらない。いいな……学生時代のタットさん。ご飯だったら俺だって作れるのに。確かにここのメニューは美味しいけど、俺だって……と、ここまで考えて、あぁ、これはヤキモチだなと自覚した。俺より仲の良い友だちとの、俺の知らないエピソード。なんで俺はそこに居なかったのだろう?なんで俺はもっと早くタットさんと知り合わなかったのだろう?そんな今更どうにもならない事ばかり。
せっかくお祝いで連れて来てもらってるのに、こんな態度は失礼だと思い、なんとか取り繕うと思ったら、タットさんが身を乗り出して俺の頭をサラサラと撫でてくれた。
俺がキョトンとしてると
「ゆん君、かわいい。俺、何度も言うけど、ゆん君の事が好きなんだからね。その気じゃなかったら、あまりかわいい態度取らないで?嬉しくなっちゃうから」
と、ニコニコしながら今度は頬をフニっと摘まれた。あぁ、バレてる。割と態度に出やすい性格だから当然か。
でも、こうやってタットさんに触られると、気持ちが落ち着いてきた。うん、イシヤマさんの事も、割とどうでも良くなってきた。
「さっきまで、なんかモヤモヤした気持ちがありましたが、タットさんに頭撫でられたので、治りました。ありがとうございます」
「だから、その言動もだよ」
タットさんは少し困った顔しながら笑ってた。
カチャンと音を立ててグラスを合わせる。タットさんは勢い良くビールをあおり、既にジョッキの半分になってる。
俺はグラスに口を付けて1口、2口、とチビチビと飲んだ。馴染みある炭酸と若干の苦味、けどジンジャーエールの方が強い?ジュースみたいで勢い良く飲んでしまいそうだ。特別に美味しいかと言われると、まだよく分からない。
「ゆん君は少しずつ飲みなね。あと食事もお腹の中に入れよう」
「はい」
既にテーブルにはお待ちかねソーセージの盛り合わせ、サラダとジャン……なんとかが運ばれていた。タットさんは甲斐甲斐しく俺の取り皿に取り分けてくれている。
「どうぞ。たくさんお食べ」
「ありがとうございます」
さっそくフォークを手に取り、遠慮なくソーセージに突き刺し口に運ぶ。パリンっと皮の破れる気持ちの良い音と共に鼻を抜ける豚肉の香りと口いっぱいに広がる肉汁。これこれこれぇ!!俺はしっかりと噛み締め、ソーセージを味わった。
そんな様をニコニコしながらタットさんが見てる。俺がコテン?と首を傾げると、ニヤッと笑って
「はい、その後にお酒を口にしてごらん?」
と言ってきたので、ソーセージを飲み込み言われるがままにカクテルを口にした。
「うまっ!!お酒おいしっ!」
「でっしょー?これがねぇ、ビールになると苦味がより一層美味しく感じるんだよー」
してやったり、とニコニコ笑顔で教えてくれる。俺のは飲みやすくしたビアカクテルだったけど、十分美味しく感じた。
「まぁ、飲み過ぎには注意だけどね」
「はい。気をつけます」
に、しても美味しい。お酒って食事と一緒に飲むと、こんなにも美味しかったのか。
一気に飲まないように気をつけながら、食事とアルコールを楽しんだ。サラダもボリュームあって食べ応えがあったし、ジャン……
「ジャンバラヤだよ。ケイジャン料理。アメリカンな炊き込みご飯だと思って」
そうそれ。ジャンバラヤも色々なスパイスの味がして、初めて食べる味だったけど、美味しかった。2人で会話を楽しみつつ、お酒と食事も楽しみつつ、少し食事量が物足りなかったので、ガンボスープ(これもケイジャン料理らしい。魚介と野菜がめっちゃ入ってるトマトベースのスープだった)にパンを付けた。お酒も、1杯目ではあまり酔わなかったので、2杯目にビター・オレンジを頼んだ。
「さっきのより苦味が強め……?でもこのお酒も美味しいです。てか、全部美味しいです」
頼んだ食事とお酒は本当に全部美味しかった。ケイジャン料理?がウリなのかと聞いたら、別にそう言うわけでも無く、ただ単にイシヤマさんがジャンバラヤとガンボスープが好きだからメニューに置いてるだけらしい。なんとなく、イシヤマさんらしい理由だと思った。
「でっしょー?」
と、自分が褒められたみたいに、嬉しそうに笑うタットさんが可愛い。
「お酒はね、他のスタッフが作ったりもするんだけど、料理はイシヤマ本人がほとんど作ってるんだよ。イシヤマの料理は本当に美味しいんだよ!」
聞けば、ここのバーには夕飯目的で足繁く通っているらしい。お酒を飲むこともあれば、食事のみで済ます事も。お酒を飲むお店なのに、それでいいのかと聞いたら、イシヤマさんがそれでいいって言ってるとのこと。他のお客さまでも夕飯代わりに入店してくる事があるとか。
「メニュー開発のために無料で新作食べさせてくれることもあるんだよー」とニコニコと教えてくれた。
……随分と信頼を寄せてるんだな……
なんとなく、俺のみぞおちの部分がギュッと縮こまった。
「イシヤマさんと仲良いんですね」
別に機嫌悪いわけではないのだが、出た口調は、ちょっとツンケンした言葉だった。タットさんは、ん?と一拍置いて、直ぐに俺の態度に気づいてくれた。
「イシヤマはね、学生の頃のバイト先の先輩でね、無類の女の子好きなんだよ。何だかんだの縁で、今も付き合いが続いてるけど、それだけだよ。まぁ、料理の腕は認めてるけどね」
学生の頃は良く手料理たかってたなぁ。なんて笑いながら教えてくれたけど、それでもみぞおちの収縮は治まらない。いいな……学生時代のタットさん。ご飯だったら俺だって作れるのに。確かにここのメニューは美味しいけど、俺だって……と、ここまで考えて、あぁ、これはヤキモチだなと自覚した。俺より仲の良い友だちとの、俺の知らないエピソード。なんで俺はそこに居なかったのだろう?なんで俺はもっと早くタットさんと知り合わなかったのだろう?そんな今更どうにもならない事ばかり。
せっかくお祝いで連れて来てもらってるのに、こんな態度は失礼だと思い、なんとか取り繕うと思ったら、タットさんが身を乗り出して俺の頭をサラサラと撫でてくれた。
俺がキョトンとしてると
「ゆん君、かわいい。俺、何度も言うけど、ゆん君の事が好きなんだからね。その気じゃなかったら、あまりかわいい態度取らないで?嬉しくなっちゃうから」
と、ニコニコしながら今度は頬をフニっと摘まれた。あぁ、バレてる。割と態度に出やすい性格だから当然か。
でも、こうやってタットさんに触られると、気持ちが落ち着いてきた。うん、イシヤマさんの事も、割とどうでも良くなってきた。
「さっきまで、なんかモヤモヤした気持ちがありましたが、タットさんに頭撫でられたので、治りました。ありがとうございます」
「だから、その言動もだよ」
タットさんは少し困った顔しながら笑ってた。
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