地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第二章:本編

21-マチナカサガリ は、迷う

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「モヤモヤしちゃうからって、俺の所に来ちゃう兄さんって、実は凄く可愛いんじゃないかな?」

弟のタケルが良い笑顔で紅茶と焼き菓子をテーブルに置いた。

なんとなしに連絡をしたら試験休暇に入ったと返事が来たので、弟に会うため実家に戻った。
キリが自分の思い通りに行かな過ぎて、気張らしではないが、誰かと話したかった。

「タケルの方が可愛いだろ。キリには負けるがな」

兄弟故に、気安い言葉が交わせる。

「んっふー。兄さんのそう言うところ、本当に変わったよね。前までは俺が一番だったのになぁ。あーあ、さみしい!」

「ぜってぇ思って無ぇだろ」

「バレた?」

某菓子屋のキャラクターを真似た舌の出し方は、己の容姿をしっかり把握しての仕草だった。

「で、キリ君の事を惚気に来たの?俺は大歓迎だよ。今度はどんな可愛い話をしてくれるの?」

「惚気じゃねぇよ。なかなか思い通りに行かねぇなって話だ」

タケルが淹れてくれた紅茶を啜って焼き菓子を齧る。因みに、焼き菓子はタケルの手作りだ。今日も美味い。

「当たり前じゃん。他人なんだから。兄さんはキリ君を囲み過ぎなんだよ。あの人だって僕らよりずっと年上の男の人でしょ?」

「だがキリだ」

「うわぁ……」

タケルがあからさまに嫌悪の表情をしたので軽く睨んだ。

「なら聞くが、タケルはキリが側に居ると世話焼きたいとは思わないのか?お前とキリが2人きりで居る時の事は全部知ってんだからな?」

「あは!情報源はキリ君だよね。そりゃ、お世話したいに決まってるよ。あの人不思議だよね。ずっと年上なのに庇護欲がとても刺激される。俺が作ったお菓子を美味しそうに食べてくれるのも嬉しいんだ。モグモグしてる所が小動物みたいで可愛いんだよね。つい色々あげたくなっちゃう」

「ほら」

囲み過ぎだと苦言しているタケルだって世話をしたがる。なら恋人の俺が、それ以上にキリを囲ったって不思議では無い。

「あは……確かに……でも、さ。別に兄さんが悪いとかそう言う意味は一切無いけど、もう少し、キリ君の気持ちを尊重しても良いと思うよ」

「してるよ」

正論を言われ、つい語調が強くなってしまった。

「してるから、……もどかしいんだよ。何も強要出来ねぇ……」

「ふふ。兄さん可愛い」

タケルの手が、俺の頭に伸びてフワフワと撫でてくる。俺が良くタケルにする仕草だ。

「俺はね、ずっと兄さんの事を尊敬しているし、ずっと大好きだったけど、今が一番兄さんの事、大好きだよ」

「なんだそりゃ?」

「兄さんがキリ君と付き合うようになってから、凄く人間味が出てきた。俺ね、何でも知ってて何でも出来るスーパーマンみたいな兄さんも好きだけど、こうやってキリ君の事で悩んじゃう兄さんが大好き。もちろん、今も何でも出来るスーパー兄さんの事も尊敬してるけどね」

弟に頭を撫でられる兄ってどうなんだ?と思うが、思った以上に気持ち良くて享受してしまう。

「キリは折れない所はとことん折れねぇんだよ。俺が口八丁手八丁丸め込もうとしてもさ」

「見守る事も大切だよ?それこそ、父さん母さんが俺らにしてくれたみたいにさ。守る囲うだけが愛情じゃないでしょ?」

「……正論が痛い」

「ふふっ!やっぱり兄さん可愛くなった!キリ君のおかげだね!久しぶりに俺とハグする?」

可愛い云々は解せないが、俺は誘われるがままに、両手を広げてタケルとハグしあった。

「お前……大きくなったなぁ」

「兄さんもね!」

小さい頃は当たり前の様にハグし合ってた仲だ。
だいぶゴツゴツとした男性らしい体付きに、驚きながら家族の温もりを堪能した。
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