地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました？

第二章：本編

35-カナタキリ は、離れる

母さんとのやり取りをしてから、家族からの連絡は来なくなった。
この流れだと、父さんからも連絡来るかな？って思ったけど、今のところ何もなし。
母さんと妹と弟は、父さんに何か僕の事を言ったのかな。
まぁ、何を言われても別に良いんだけどね。
母さんとあの2人は、事あるごとに何か言わないと気がすまないタイプだけど、父さんは僕の事は、どうでもいいと思ってた気がする。
どうでもいい僕に、わざわざ何か連絡して来る事も無いか。

もともと、家族とは滅多に連絡は取り合って無かったからね。
もとの生活に戻ったって感じかなぁ。

変化と言えば、戸籍だ。
サガリ君と休みが被った平日に、役所に連れられて「分籍」と言う手続きをした。
これは、家族の戸籍と僕の戸籍を分ける手続きなんだって。

「支援措置にはならないけど、これで正当な理由無くお前の家族が容易に戸籍謄本を取得する事は出来なくなる。まぁ、あの家族がそこまでやる知恵があるかって言うと無さそうだがな」

サガリ君はニッコリ笑っていたけど、僕は良く分からなかった。
こう言う法律？とか役所の手続き関係って難しいよね。

「分籍しとけば、俺とキリが結婚しても親の戸籍には載らないんだよ」

だって。
そもそも同性の結婚は日本ではまだ認められていない。
けど、その気持ちが嬉しい。
僕だって出来るならサガリ君と結婚したい。

「まぁ……結婚は法の関係もあるけどさ、現実的な話、養子縁組だって可能性はゼロじゃないだろ？それをキリの親に容易に見られるのも癪だからな」

「そうなんだ？」

難しい手続きは、やっぱり分からない。

「まぁ、キリは難しい事は考えなくていいよ。ずっと俺の側に居てくれれば十分だ」

「うん。ずっと一緒に居ようね」

サガリ君の手をギュッと握って、自分の胸に抱え込んだ。
大きな手、温かくて安心する手。
ずっとこの手を握っていられますように。
たくさんの時間を一緒に過ごして、2人でオジサン⋯⋯おじいちゃんになっても、この手を離さずに歩んでいけたらいいな。

そんな気持ちを込めて、僕はサガリ君の手にキスをした。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


母さんとのやり取りと、戸籍の事を、キムラさんにも報告した。

「今までだって、そんなに連絡してなかったのですが、少し心が軽くなった気がします」

そう伝えると、キムラさんはウンウンとしきりに頷いていた。

「カナタさんが違和感を覚えてから、かなりスピーディーに進んだ気がします。おつかれさまでした。分籍は、親子関係が無くなるわけではありませんが、意思表示の一つとして良い選択だと思います」

そう言って嬉しそうにしてるので、僕も嬉しくなった。

「僕の家は、もともと関係が薄くて、今回たまたま変な事になっただけなので、多分もう連絡してくる事は無いかなって思います。向こうも僕を拒否してますからね」

「ふふっ！そうですね！」

恐らく、こんな事を言うのは良くないのだと思う。
僕の頭の片隅にある一般的な常識が、「家族に対してなんて事を言うの？」「血が繋がっているんだよ？」「家族は大切にするものだよ」と、言ってくる。
けど、

「家族であっても、合わないものは合わないし、『家族だから』を理由に嫌な思いをし続ける必要は無いんです。それを強要する人がいたら、その人とも距離を取れば良いんです。分かりやすくて便利ですよ？」

キムラさんがイタズラっぽく笑っていたので、僕もフフっと笑ってしまった。
そう言う関係があっても、良いのだと。

僕は思う。