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第二章:本編
42-マチナカサガリは、マチナカにさせたい
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キリが、叔父の養子に入りマチナカの姓を名乗りたいと言ってくれた。
おかげでマチナカ家はお祭り騒ぎだ。
特に母親が今までに見たことの無い喜びようを見せ、タケルと俺は若干引いた。
ただ、手続きに関しては叔父と顔合わせてから進めると言うことになり、意思確認の段階で停滞している。
別に急いでいるわけでも無いしな。
言質は取れたので、その後の事はのんびりと構えていたら年が明け、ラキの全国ライブハウスツアーが始まった。
キリは養子の話しどころでは無くなっている。
毎日の様にSNSに張り付いてファンのライブレポをチェックしたり、ラキのSNSの拡散、レスと、スマホばかり眺めている。
しかも、デイブも結構なラキファンなものだから、出張と言い張ってラキのライブ遠征をしており、休みが合えばキリをそれに連行している。
俺?俺は呼ばれてない。
熱量の差か?別にいいけどさ。
……拗ねてない。
キリが楽しそうにしていれば、それで十分だ。
養子の手続きの件も、たまに思い出したようにキリも気にしてくれているが、肝心の叔父が連絡は取れるのだが物理的に掴まらない。
父親に、今叔父さんがどこにいるのか聞いたら「聞いたことのない外国の名前を出してきた」と、途方に暮れていたので笑っておいた。
「今は海外に行っちゃってるから、戻って来たら手続きしようぜ?」
叔父さんの性格を考えれば、予測の付く展開だったが、父親は了承して貰った手前、早く手続きを進めたいみたいで、キリにはかなり申し訳なさそうにしていた。
けれども、キリはキリで今はラキのツアーに集中したいのだろう。
キリは「気にしてない」とうちの両親に伝えれば、それがキリの気遣いなのだと勘違いした父親が、ちょっと涙ぐんでいた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
夜、叔父さんから電話がかかってきた。
父親が何か言ったのだろうか?
電話に出ると、物凄い勢いのある英語で話しかけてきた。
……これ英語か?一応聞き取れるのだが、聞いたことのない単語だったり、明らかに英語と違う発音が入り混じっている。
なんとか俺も聞き取れる範囲で英語で受け答えしていると、今度は段々と日本語が混ざってきた。
そして、とうとう全てが日本語に落ち着いた時に、キリと話をしてみたいと言われた。
まぁ、日本語だからいいか。
俺の横でゴロゴロしているキリに話しかける。
「キリ、叔父さんから電話。出られるか?」
「出てもいいの?」
急な事で、キリは緊張している。
本人がアレだから、全く気にする必要は無いんだけどな。
「叔父さんがキリと話したいんだって。気さくな人だから身構えなくて大丈夫だ」
そうフォローしながらスピーカーフォンに切り替えてキリにスマホを渡した。
「あの、はじめまし……て……」
キリらしい控えめなあいさつに、被せるように叔父さんの怒涛トークが始まった。
『ハイ!キリ!未来の息子!なかなかそっち帰れなくてごめんよ。けど私は会える日をとても楽しみにしてる!』
「あの、僕も。楽しみにしてます」
『本当?嬉しいよ!そうだ。ちょっと未来の練習してみようよ。私の事を、お父さんて呼んでみて』
「え?」
『だって私たちは親子になるんだろ?私は、お父さんと呼ばれる事を楽しみにしてるんだ』
「え……え~~……」
『ダメかな?やっぱり書類上だけかい?』
キリは戸惑っていたが、勢いに押されながら叔父さんの事を「……お父さん……」と呼んでいた。
それを聞いて、俺の鳩尾がキュッと縮こまった。
……いいな、実感が湧く。
と、思ったのは叔父さんも一緒だったらしい。
『うはぁぁ!!!なんだい!!息子!!欲しいものはあるかい?お父さんが何でも買ってあげるよ!車かい?マンションかい?』
だいぶテンションが上がっていた。
モノで釣ろうとする言動が叔父さんらしい。
「うわわわわ!!サガリ君!サガリ君!助けて!叔父さんが!!叔父さんが!!」
キリは慌てて俺に助けを求めてきので、電話を代わった。
ファーストコンタクトはコレで十分だろ。
「叔父さん、キリをからかわないで。困ってるから。そう言うのは手続きが終わってからだよ。だから早くこっちに帰ってきてね」
『分かったよぅ。アニキの息子。私の未来の息子の事もよろしくね。で、君の就職祝いは車かい?マンションかい?』
「どっちも間に合ってるよ。それより老後の資金にでもしといてよ」
『そんなもの腐る程あるよ。じゃぁどっかの会社でも買収するかい?』
「それも要らない」
キリだけでは飽き足らず、俺にまでモノで釣るムーブをかましている。
そんなモノは要らないから、早く帰って来て、会いたい、と改めて伝えた。
---------
明日、最終話となります。
最後まで、よろしくお願いします。
おかげでマチナカ家はお祭り騒ぎだ。
特に母親が今までに見たことの無い喜びようを見せ、タケルと俺は若干引いた。
ただ、手続きに関しては叔父と顔合わせてから進めると言うことになり、意思確認の段階で停滞している。
別に急いでいるわけでも無いしな。
言質は取れたので、その後の事はのんびりと構えていたら年が明け、ラキの全国ライブハウスツアーが始まった。
キリは養子の話しどころでは無くなっている。
毎日の様にSNSに張り付いてファンのライブレポをチェックしたり、ラキのSNSの拡散、レスと、スマホばかり眺めている。
しかも、デイブも結構なラキファンなものだから、出張と言い張ってラキのライブ遠征をしており、休みが合えばキリをそれに連行している。
俺?俺は呼ばれてない。
熱量の差か?別にいいけどさ。
……拗ねてない。
キリが楽しそうにしていれば、それで十分だ。
養子の手続きの件も、たまに思い出したようにキリも気にしてくれているが、肝心の叔父が連絡は取れるのだが物理的に掴まらない。
父親に、今叔父さんがどこにいるのか聞いたら「聞いたことのない外国の名前を出してきた」と、途方に暮れていたので笑っておいた。
「今は海外に行っちゃってるから、戻って来たら手続きしようぜ?」
叔父さんの性格を考えれば、予測の付く展開だったが、父親は了承して貰った手前、早く手続きを進めたいみたいで、キリにはかなり申し訳なさそうにしていた。
けれども、キリはキリで今はラキのツアーに集中したいのだろう。
キリは「気にしてない」とうちの両親に伝えれば、それがキリの気遣いなのだと勘違いした父親が、ちょっと涙ぐんでいた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
夜、叔父さんから電話がかかってきた。
父親が何か言ったのだろうか?
電話に出ると、物凄い勢いのある英語で話しかけてきた。
……これ英語か?一応聞き取れるのだが、聞いたことのない単語だったり、明らかに英語と違う発音が入り混じっている。
なんとか俺も聞き取れる範囲で英語で受け答えしていると、今度は段々と日本語が混ざってきた。
そして、とうとう全てが日本語に落ち着いた時に、キリと話をしてみたいと言われた。
まぁ、日本語だからいいか。
俺の横でゴロゴロしているキリに話しかける。
「キリ、叔父さんから電話。出られるか?」
「出てもいいの?」
急な事で、キリは緊張している。
本人がアレだから、全く気にする必要は無いんだけどな。
「叔父さんがキリと話したいんだって。気さくな人だから身構えなくて大丈夫だ」
そうフォローしながらスピーカーフォンに切り替えてキリにスマホを渡した。
「あの、はじめまし……て……」
キリらしい控えめなあいさつに、被せるように叔父さんの怒涛トークが始まった。
『ハイ!キリ!未来の息子!なかなかそっち帰れなくてごめんよ。けど私は会える日をとても楽しみにしてる!』
「あの、僕も。楽しみにしてます」
『本当?嬉しいよ!そうだ。ちょっと未来の練習してみようよ。私の事を、お父さんて呼んでみて』
「え?」
『だって私たちは親子になるんだろ?私は、お父さんと呼ばれる事を楽しみにしてるんだ』
「え……え~~……」
『ダメかな?やっぱり書類上だけかい?』
キリは戸惑っていたが、勢いに押されながら叔父さんの事を「……お父さん……」と呼んでいた。
それを聞いて、俺の鳩尾がキュッと縮こまった。
……いいな、実感が湧く。
と、思ったのは叔父さんも一緒だったらしい。
『うはぁぁ!!!なんだい!!息子!!欲しいものはあるかい?お父さんが何でも買ってあげるよ!車かい?マンションかい?』
だいぶテンションが上がっていた。
モノで釣ろうとする言動が叔父さんらしい。
「うわわわわ!!サガリ君!サガリ君!助けて!叔父さんが!!叔父さんが!!」
キリは慌てて俺に助けを求めてきので、電話を代わった。
ファーストコンタクトはコレで十分だろ。
「叔父さん、キリをからかわないで。困ってるから。そう言うのは手続きが終わってからだよ。だから早くこっちに帰ってきてね」
『分かったよぅ。アニキの息子。私の未来の息子の事もよろしくね。で、君の就職祝いは車かい?マンションかい?』
「どっちも間に合ってるよ。それより老後の資金にでもしといてよ」
『そんなもの腐る程あるよ。じゃぁどっかの会社でも買収するかい?』
「それも要らない」
キリだけでは飽き足らず、俺にまでモノで釣るムーブをかましている。
そんなモノは要らないから、早く帰って来て、会いたい、と改めて伝えた。
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明日、最終話となります。
最後まで、よろしくお願いします。
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