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8-マチナカ サガリ は、限界オタク。
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「マチ君、限界オタクみたいだね」
お前のせいだろ。
とは言わないけど。
キリや現場のドルオタ達がこういう仕草をするのを冷めた目で見ていたが、こういう事か、理解した。
「あー……たった今、限界オタクになったわ俺」
キリのな。
ラキのじゃねーから。
とは言わないけど(2回目)
「そっかぁー、ようこそ!こちら側へ!もっと推し活が楽しくなるね」
「あー、な」
ニコニコと笑ってやんの。
普段は陰キャのクセに、慣れるとこんなに表情が出るものなのか。
キリは、普段の食生活が貧しいせいか体型はガリガリだ。髪の毛もいつ美容院に行ったんだ?と思うくらいもっさりしていて前髪で目が隠れている典型的な陰キャの格好をしている。
だから、気づきにくいんだよ。
意外と目が大きくてまつ毛が長かったり、鼻筋通ってて形が綺麗だったり、唇は小さくぷっくりと膨れて熟れた果実みたいだったり……そう、良く言えば美少女系。
……なんて事に気付いてしまい、思わず苦笑いした。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、
キリは調子に乗って2曲目を歌い出した。
俺も料理しながらコールする。
なんだコレ楽しいかよ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「ふふんふんふん~♪」
機嫌良く鼻歌を歌いながら片付けをしているキリを横目に出来上がったメニューをテーブルに置いていく。
今日のメインはタレに漬け込んでおいたスペアリブ、副菜はサラダ、かぼちゃのポタージュスープ。
貧相な食事しかしてないだろうキリには肉の塊はインパクトあるはずだ。
思った通り、彼はスペアリブに釘付けになっている。
任せていた部屋の片付けも、かなり綺麗になっていた。
「僕が手伝えること、ある?」
そう申し出てくれたが、丁重に断わって座らせた。
「家にある食材で作ったから、そんな洒落たモンは作ってねーけど、肉は正義だろ?」
ニヤっと笑って余裕を見せてみたけど、半分嘘で半分事実。
最近は、キリがSNSで俺が作った飯に反応してくれるから、予定無くてもキリに食わせたいメニューを作りがちになっていたので、そこそこ洒落込んでいる。
ついでに、ラキに仲良しアピールするために肉の上で2人でピースして写真に撮った。
あとでタグ付けして投稿してやる。
前回の特典会のマウント返しだ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
2人で食事をすれば、キリはいちいち感動してくれた。
胃袋は掴めそうだな。
食事が終わる頃には、
「マチ君てナニモノなの?」
なんて聞かれたけど、学生でしかない。
そんな普通の答えをしたが、向こうは納得してなかった。
「違う、そうじゃない。なんでハタチそこそこの男の子がこんな料理上手なの!?美味しいっ!すごく美味しいよ!あとオシャレ!すごくオシャレ!あとお家もなんかお金持ちみたいだし!」
「あー、実家は確かに金持ちだな。それとは別に俺も資産運用してるけど。料理は趣味みたいなもんだし、これくらい普通だろ」
そう、俺にとっては「普通」だが……過去の知人友人達の反応を思い出して補足した。
「あー、キリからしたら普通じゃないかも知れないけど、俺はずっとこの生活だったからコレが普通なんだよ」
「そっか……マチ君的にはコレが普通なんだね。なんか住む世界が違うって感じ……」
羨望と嫉妬。
俺の普通を羨ましがる人間は何人と見てきた。
キリも結局あいつらと一緒かと心の中で溜息を吐く。
すると、キリは俺の想像の斜め上の思考に進んだ。
「だからこそ、全然接点の無い僕たちが、ラキちゃん推してる事で出会ったって思うと、なんか不思議な感じがする」
「お?……確かにな……うん……まぁ……」
これは……
「そう思うと、ラキちゃんって本当にラッキーの女神だなって改めて思うよ!あ、マチ君にとってラッキーかは分からないけど。僕はマチ君に出会えてラッキーだなって思ったよ」
もっさりした髪の毛から見える目を細めて、キリはニッコリと笑っていた。嘘も建前もない真っ直ぐな言葉のせいで俺はまた、限界オタクみたいなポーズになっていた。
お前のせいだろ。
とは言わないけど。
キリや現場のドルオタ達がこういう仕草をするのを冷めた目で見ていたが、こういう事か、理解した。
「あー……たった今、限界オタクになったわ俺」
キリのな。
ラキのじゃねーから。
とは言わないけど(2回目)
「そっかぁー、ようこそ!こちら側へ!もっと推し活が楽しくなるね」
「あー、な」
ニコニコと笑ってやんの。
普段は陰キャのクセに、慣れるとこんなに表情が出るものなのか。
キリは、普段の食生活が貧しいせいか体型はガリガリだ。髪の毛もいつ美容院に行ったんだ?と思うくらいもっさりしていて前髪で目が隠れている典型的な陰キャの格好をしている。
だから、気づきにくいんだよ。
意外と目が大きくてまつ毛が長かったり、鼻筋通ってて形が綺麗だったり、唇は小さくぷっくりと膨れて熟れた果実みたいだったり……そう、良く言えば美少女系。
……なんて事に気付いてしまい、思わず苦笑いした。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、
キリは調子に乗って2曲目を歌い出した。
俺も料理しながらコールする。
なんだコレ楽しいかよ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「ふふんふんふん~♪」
機嫌良く鼻歌を歌いながら片付けをしているキリを横目に出来上がったメニューをテーブルに置いていく。
今日のメインはタレに漬け込んでおいたスペアリブ、副菜はサラダ、かぼちゃのポタージュスープ。
貧相な食事しかしてないだろうキリには肉の塊はインパクトあるはずだ。
思った通り、彼はスペアリブに釘付けになっている。
任せていた部屋の片付けも、かなり綺麗になっていた。
「僕が手伝えること、ある?」
そう申し出てくれたが、丁重に断わって座らせた。
「家にある食材で作ったから、そんな洒落たモンは作ってねーけど、肉は正義だろ?」
ニヤっと笑って余裕を見せてみたけど、半分嘘で半分事実。
最近は、キリがSNSで俺が作った飯に反応してくれるから、予定無くてもキリに食わせたいメニューを作りがちになっていたので、そこそこ洒落込んでいる。
ついでに、ラキに仲良しアピールするために肉の上で2人でピースして写真に撮った。
あとでタグ付けして投稿してやる。
前回の特典会のマウント返しだ。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
2人で食事をすれば、キリはいちいち感動してくれた。
胃袋は掴めそうだな。
食事が終わる頃には、
「マチ君てナニモノなの?」
なんて聞かれたけど、学生でしかない。
そんな普通の答えをしたが、向こうは納得してなかった。
「違う、そうじゃない。なんでハタチそこそこの男の子がこんな料理上手なの!?美味しいっ!すごく美味しいよ!あとオシャレ!すごくオシャレ!あとお家もなんかお金持ちみたいだし!」
「あー、実家は確かに金持ちだな。それとは別に俺も資産運用してるけど。料理は趣味みたいなもんだし、これくらい普通だろ」
そう、俺にとっては「普通」だが……過去の知人友人達の反応を思い出して補足した。
「あー、キリからしたら普通じゃないかも知れないけど、俺はずっとこの生活だったからコレが普通なんだよ」
「そっか……マチ君的にはコレが普通なんだね。なんか住む世界が違うって感じ……」
羨望と嫉妬。
俺の普通を羨ましがる人間は何人と見てきた。
キリも結局あいつらと一緒かと心の中で溜息を吐く。
すると、キリは俺の想像の斜め上の思考に進んだ。
「だからこそ、全然接点の無い僕たちが、ラキちゃん推してる事で出会ったって思うと、なんか不思議な感じがする」
「お?……確かにな……うん……まぁ……」
これは……
「そう思うと、ラキちゃんって本当にラッキーの女神だなって改めて思うよ!あ、マチ君にとってラッキーかは分からないけど。僕はマチ君に出会えてラッキーだなって思ったよ」
もっさりした髪の毛から見える目を細めて、キリはニッコリと笑っていた。嘘も建前もない真っ直ぐな言葉のせいで俺はまた、限界オタクみたいなポーズになっていた。
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