地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第一章:本編

9-マチナカ サガリ の、距離。

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2人キッチンに並んで食器を洗う。キリが洗って俺が拭いて食器棚にしまう。大した量では無いし、あとで俺が片付けると言ったのだが、キリ的には気が休まらないみたいだった。
部屋を片付けてくれたんだし、それでトントンで良くね?とも思ったが、実際に2人でキッチンに立っていると、なかなかに楽しいものだった。
キリはどう思ってるのだろう?と気にすれば、

「一緒になにかするって楽しいね」

不意に言われて俺の顔が一瞬緩む。
見られたくなくて顔を背けると、俺が不機嫌になったと勘違いしたのか、

「あ……ご……ごめ………ごめん……図々しかったね……」

申し訳なさそうに言うと、食器を洗ってたキリの手が止まった。
そうじゃない。
そうじゃなくて、と言い訳をする。

「いや、こっちこそごめん。直ぐに反応出来なくて。……うん、俺も楽しい。キリと一緒に何かするの、楽しい」

正直に言うと安心したのか、キリはまた食器を洗い始めた。
ただ、少し気まずい雰囲気になってしまって、黙々と2人黙って食器を片付け続けた。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


キッチンもリビングのテーブルも全部片付く頃には、そこそこ遅い時間になっていた。
キリがチラチラとスマホの時計を気にしている。そろそろ帰りたいのだろう。

「もう帰るのか?」

そう聞くと、若干歯切れの悪そうな反応ではあったが、お互いに仕事と大学があるからと、キリは理由付けていた。

「まぁ……」

俺は明日は午後からだし、別に遅くなっても良いのだが……
けど、ここで強引に引き止めてもキリは楽しくないだろう。
その代わり、SNS以外の繋がりを持つべく連絡先の交換を持ちかけた。

「なぁ?連絡先交換しねぇ?もうここまで来たらSNSだけとか有り得なくないか?」

「確かに。でもいいの?僕と交換なんて」

僕みたいな陰キャ、と聞こえてきそうな口調だった。

「キリと交換したいんだよ」

そう言って、お互いスマホを取り出して個人の連絡先を交換した。フルネームと携帯電話……そこから連動して連絡アプリの情報も得た。ここからまた何か情報を引っ張ってこれないだろうかと思案。そこはおいおいでいいか。

「わ、マチ君て下の名前サガリ君て言うんだ?」

連絡先を交換したので、俺のフルネームも向こうの情報に載る。
下の名前で呼ばれるのもいいな。

「おぅ、呼びたかったら下の名前で呼んでいいぜ?」

コレを機にキリも俺の事を名前で呼んでくれたらと若干期待したのだが、

「んー?マチ君」

「呼ばねーのかよ」

「うん」

ニコニコで答えてやんの。
刷り込みなのだろう。最初に呼び始めた名前ってなかなか変えにくいもんな。

「俺はキリの事名前で呼んでるのに……」

名前を呼ばれないもどかしさはあるので、ボソッと文句を吐いてみたが、キリには聞こえなかったみたいだ。
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