地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第一章:本編

15-マチナカ サガリ は、先を見る。

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開演時間を迎えると、辺りが暗くなった。ラキのデビュー曲のイントロが流れると、扉にライトが当たる。
ゆっくりと扉は開き、その先にはエンパイアラインのウェディングドレスを着たラキが居た。
…………可愛い……
キリなんて目がハートになってる。

「みんなー!今日は私のアイドルデビュー5周年記念イベントに来てくれてありがとう。みんな楽しんでね!」

……確かに、この本気は凄い。
結婚式でも披露宴でも無く、一人の地下アイドルのイベントでここまでの規模を企画するのは、かなり大変だっただろう。企画運営は詳しくは無いが、彼女の苦労が思い知れた。
入場と共にデビュー曲の披露、各テーブルを巡ってから正面へ、数曲連続で披露。
ドレスなんて動きにくいだろうに、それでもラキは良く動いていた。
その後、MCの時間に入りファンと共に乾杯をする。

「私はノンアルだからね!」

と、グラスを掲げて、あろう事か一気に煽ってた。
乾杯が終わると、コースメニューが運ばれてきた。
食事のクオリティもなかなかに高い。
スタンダードなフルコースメニューではあるが、割とラキが好む食材が使われている。
MC中に、「私だって食べたいんだもん!みんな、食べる時間頂戴ね?」と言っては、運ばれてきた皿を持って、各テーブルを回りながら食べ歩きをしていた。
自由だな。
まぁ、披露宴とは違うし、いいのか。
演出なのか、はたまた本気で食事をしたかったのか、分からないが、正面モニターに彼女の過去映像が流れてきた。その間、ラキは良く食べていた。
シンガーソングライターを目指していたのは知識として知っていたが、ジュニアアイドルをしてたのは初耳だった。彼女の過去の活動も観れて、なかなか楽しかった。
まぁ、ラキも俺の推しアイドルだしな。
見た事の無い映像は面白い。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


途中、衣装替えでラキはステージをはけた。
何を考えたのか、彼女は着替えの模様を音声のみで実況している。
歌舞伎なんかは化粧を施すところから舞台が始まるなんて聞いた事があるし、ソレでも意識してるのか?

「ねぇー!なんでこんなにギッチギチにコルセット付け……はぁっはぁ!取れたっ。らくちんっ!花嫁さんって大変なのね。将来旦那さまになる人たちは未来の花嫁さんを大事にするんだよ!」

いや、単なるパフォーマンスか。
ラキのドレスへのボヤきと着替えの布ズレの音で、キリが顔を真っ赤にして手で覆っている。
何を想像してんだか。
見てるこっちが恥ずかしくなってしまい、思わず彼の後頭部を軽く突っ込んだ。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


着替えが終わったラキは、新しい衣装で再登場した。
かかった曲も、恐らく新曲。
メロディと歌詞は、いつも通りラキが作ったと分かる特徴があったが、雰囲気が違う。編曲の違いか?
ダンスの振りも違う。
アレンジャーと振付師を変えたのか?

新曲発表は嬉しいは嬉しいが、その中に潜む違和感が、かなり気になった。

曲が終わると、ラキはペットボトルの水を飲み、あろう事かまた料理を食べ、一息ついた頃に大切なお知らせがあると俺らに向かって伝えてきた。

「えっとね、今までフリーで活動してきたのですが、ヒラキラキは今後、事務所に所属する事になりました。CANDY STAGEさんのお世話になります!」

事務所に所属するのか。まぁ、フリーで活動するにはデカくなりすぎたもんな。彼女を守ってくれる後ろ盾が出来るのは良い事だ。
活動の幅も広がりそうだし、ラキ本人も前向きに考えてるみたいだし、良い知らせなのだろう。

CANDY STAGEに所属したのなら、今回の新曲も納得だ。あそこのお抱えアレンジャーと振付師が手掛けたのなら、あんな感じになるな。
「CANDY STAGE」は、もともと秋葉原にあるコンセプトカフェだ。カフェとライブステージが併設されていて、アイドルデビューを目指してる子が働いている……らしい。地下アイドルを推してれば必ず耳にするコンカフェだ。その大元の会社が芸能事務所も立ち上げたのだとか。
良い意味でアキバカルチャーがラキの曲に入り込んできてる。
これでまた新しい層のファンの獲得でも狙うのだろう。

その後、また何曲か歌ってアンコールもこなし、イベントは終了した。
最後に見送りとして、ラキが一人一人に土産を手渡して一言二言ファンと言葉を交わしていた。

俺は、キリの後だったが、いつもの笑顔で迎えられた。

「来てくれてありがとう。これからもよろしくね!」

「これからも応援してる」

定型句であったとしても一人一人の目を見て全員の相手をするのは骨が折れる事だろうに、ラキは丁寧に対応をしていた。

こうやって、彼女はどんどん大きくなって行くのだろう。
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