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第一章:本編
33-カナタ キリ は、懐に入る。
何度かラキちゃんのイベントやライブに行くにつれて、何故かミシナミさんとも仲良くなった。
ミシナミさんは、ラキちゃんが所属している芸能事務所の社員なんだって。
アイドル現場って、アイドルに憧れて現場に足を運ぶタイプの子も居るらしくて、スカウトするには良い場所らしい。
あくまでも、ミシナミさんの経験上の話とは言ってたけど。
「で、マチキリ君の気はいつ変わるのかな?」
ミシナミさんは、サガリ君と僕をセットで呼ぶし、会う度に挨拶するみたいにスカウトしてくるし、名刺のデザインが変わると毎回くれる。
僕の周りのラキちゃんファン達の間では、このやり取りはお馴染みになってるみたいだし、ミシナミさんも断られる事を分かって聞いてくる。
「んもぅ、僕はラキちゃんの推し活と仕事で精一杯だし、何度も言いますが芸能界には興味無いんですよぅ」
ミシナミさんにも慣れたお陰で、かなりハッキリと言えるようになった。
「他当たってください」
サガリ君も容赦ない。
それでもミシナミさんは楽しそうに笑ってた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「アイツ、絶対に面白がってるよな」
ライブの帰り、勿論ミシナミさんにはスカウトされたし、ナントカマークが名刺に付いたからと新しい名刺も貰った。
「なんか、憎めないよね。ミシナミさんて」
僕がまだ陰キャ丸出しで断っていた時、ミシナミさんが、
「君もアイドルになればそのうちラキと同じステージに上がれるし、なんらツーマンとかコラボも出来るんじゃない?どう?魅力的でしょ?」
と、ラキちゃんの名前を出てきたものだから、僕は一瞬だけ脳内でステージでラキちゃんと僕が一緒になって歌って踊る姿を想像してしまった。
当然ながら僕はなんて恐れ多い事を想像してしまったのだろうと両手で顔を隠して「無理……無理です……余計に無理……」と恐怖で泣いてしまった。
オタク、感情昂ると直ぐ泣くからね。
その姿にミシナミさんがドン引いちゃったみたいで、ちょっと強引な感じから、態度が優しくなった。
それから、だんだん慣れて今みたいな気軽な会話が出来るようになったんだ。
「毎回声をかけてくれるけど、真剣味は無いよね。おはよーって言うノリとおなじに芸能界どう?って言ってる感じ」
「それな」
ふふっと、2人で笑う。
「もっと可愛い子をスカウトすればいいのにね」
ファンの中には、ラキちゃんみたいなアイドルになりたいって努力している子だって居るはず。
毎回断っている僕なんかに声かけるより、そう言う子に声かければいいのに。
「あの現場で言ったらキリより可愛いやついねーだろ。せいぜいラキくらいじゃねーの?」
「へ……えへへ」
相変わらずサガリ君は僕のことを可愛いと言ってくれる。
他の人からも言われるし、ミシナミさんのスカウトの事を考えたら、自覚みたいなものが芽生えてきた。
なので、僕も自分のことを可愛いと少し思うようになってきた。
「あ、あのサガリ君」
「あ?」
「えっと……僕ってそんなに可愛いかな?」
もう一度聞きたくて尋ねちゃう。
しつこかったかな?
「…………」
サガリ君の事だから直ぐにでも「かわいい」と返してくれると思ったのに、無言だった。
あ、あれ? もしかして変な事聞いちゃったのかな? そう思い不安になっていると、サガリ君が急に僕の頭を撫でてくれた。
「え? あの……」
「可愛いよ」
「っ!?」
サガリ君に改めて言われ顔が真っ赤になる僕。
自分が分かるタイミングで反応があれば大丈夫なのだけど、今回みたいに少しでもズレると、不意打ちみたいな気持ちになっちゃって顔が赤くなっちゃうんだよね。
「サガリ君……」
「ん?」
「あ、ありがとう」
「うん」
このやり取りだって自分で聞いといて……って思うけど、「可愛い」と言われたらなるべく「ありがとう」って言えるようになってきた。
これは職場のパートさんのおかげでもある。
「サガリ君はさ、本当に芸能界には興味ないの?こんなにカッコイイんだったら目指してもいいのにって僕は思うんだけど」
「興味無ぇかな。ラキを推すのは好きだけど、同じ土俵に立ちたいと思わない。あとは……キリを磨くのに忙しいし?」
サガリ君はニヤっと笑って僕の肩を抱いた。
ぐぬ、と言葉を詰まらせていると、今度はサガリ君が僕に聞いてきた。
「キリこそどうなんだよ?ミシナミさん、態度は軽率だけど多分キリには本気だと思う。じゃなきゃ毎回誘って来ねぇだろ」
「うーん……僕も考えた事無かったし、これからも無いかな。ラキちゃんは客席から見るのが1番可愛い」
それに僕の見た目がスッキリしたのはサガリ君のおかげだし、サガリ君に出会わなければ僕はきっとミシナミさんの目に止まらなかった筈だ。
だから……
「僕はこれからもラキちゃんを応援して、その隣にサガリ君が居てくれたら充分に幸せだな」
今の気持ちをサガリ君に伝えた。
「 ……そ、そうか」
「うん。だからこれからも一緒にラキちゃんを応援しよ?」
「お、おう……」
僕の生活にラキちゃんが居て、サガリ君が居る。
ちょっと前までは僕の楽しみは、ラキちゃん一色だったけど、そこにサガリ君と出会って推し活もプライベートももっともっと楽しくなった。
ずっとことまま続けばいいのになぁ。
「だからね、これからもサガリ君は僕の隣に居てね?」
僕にしては、かなり強気な言い方になってしまったけど……
「じゃぁ、キリもずっとオレの傍に居ろよ?」
サガリ君も笑って僕に言ってくれた。
最初は、話しかけられて怖いなと思う事もあったけど、今はサガリ君に話しかけられて良かったと思ってる。
サガリ君と出会った事で、僕はたくさんの経験をした。
これからも、たくさんの楽しいとか嬉しいを、サガリ君と一緒に過ごせたらいいなって、改めて思った。
勿論、ラキちゃんの推し活もねっ!
僕が笑うと、サガリ君もフワッと笑って僕の頭を撫でてくれた。
おしまい
ミシナミさんは、ラキちゃんが所属している芸能事務所の社員なんだって。
アイドル現場って、アイドルに憧れて現場に足を運ぶタイプの子も居るらしくて、スカウトするには良い場所らしい。
あくまでも、ミシナミさんの経験上の話とは言ってたけど。
「で、マチキリ君の気はいつ変わるのかな?」
ミシナミさんは、サガリ君と僕をセットで呼ぶし、会う度に挨拶するみたいにスカウトしてくるし、名刺のデザインが変わると毎回くれる。
僕の周りのラキちゃんファン達の間では、このやり取りはお馴染みになってるみたいだし、ミシナミさんも断られる事を分かって聞いてくる。
「んもぅ、僕はラキちゃんの推し活と仕事で精一杯だし、何度も言いますが芸能界には興味無いんですよぅ」
ミシナミさんにも慣れたお陰で、かなりハッキリと言えるようになった。
「他当たってください」
サガリ君も容赦ない。
それでもミシナミさんは楽しそうに笑ってた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「アイツ、絶対に面白がってるよな」
ライブの帰り、勿論ミシナミさんにはスカウトされたし、ナントカマークが名刺に付いたからと新しい名刺も貰った。
「なんか、憎めないよね。ミシナミさんて」
僕がまだ陰キャ丸出しで断っていた時、ミシナミさんが、
「君もアイドルになればそのうちラキと同じステージに上がれるし、なんらツーマンとかコラボも出来るんじゃない?どう?魅力的でしょ?」
と、ラキちゃんの名前を出てきたものだから、僕は一瞬だけ脳内でステージでラキちゃんと僕が一緒になって歌って踊る姿を想像してしまった。
当然ながら僕はなんて恐れ多い事を想像してしまったのだろうと両手で顔を隠して「無理……無理です……余計に無理……」と恐怖で泣いてしまった。
オタク、感情昂ると直ぐ泣くからね。
その姿にミシナミさんがドン引いちゃったみたいで、ちょっと強引な感じから、態度が優しくなった。
それから、だんだん慣れて今みたいな気軽な会話が出来るようになったんだ。
「毎回声をかけてくれるけど、真剣味は無いよね。おはよーって言うノリとおなじに芸能界どう?って言ってる感じ」
「それな」
ふふっと、2人で笑う。
「もっと可愛い子をスカウトすればいいのにね」
ファンの中には、ラキちゃんみたいなアイドルになりたいって努力している子だって居るはず。
毎回断っている僕なんかに声かけるより、そう言う子に声かければいいのに。
「あの現場で言ったらキリより可愛いやついねーだろ。せいぜいラキくらいじゃねーの?」
「へ……えへへ」
相変わらずサガリ君は僕のことを可愛いと言ってくれる。
他の人からも言われるし、ミシナミさんのスカウトの事を考えたら、自覚みたいなものが芽生えてきた。
なので、僕も自分のことを可愛いと少し思うようになってきた。
「あ、あのサガリ君」
「あ?」
「えっと……僕ってそんなに可愛いかな?」
もう一度聞きたくて尋ねちゃう。
しつこかったかな?
「…………」
サガリ君の事だから直ぐにでも「かわいい」と返してくれると思ったのに、無言だった。
あ、あれ? もしかして変な事聞いちゃったのかな? そう思い不安になっていると、サガリ君が急に僕の頭を撫でてくれた。
「え? あの……」
「可愛いよ」
「っ!?」
サガリ君に改めて言われ顔が真っ赤になる僕。
自分が分かるタイミングで反応があれば大丈夫なのだけど、今回みたいに少しでもズレると、不意打ちみたいな気持ちになっちゃって顔が赤くなっちゃうんだよね。
「サガリ君……」
「ん?」
「あ、ありがとう」
「うん」
このやり取りだって自分で聞いといて……って思うけど、「可愛い」と言われたらなるべく「ありがとう」って言えるようになってきた。
これは職場のパートさんのおかげでもある。
「サガリ君はさ、本当に芸能界には興味ないの?こんなにカッコイイんだったら目指してもいいのにって僕は思うんだけど」
「興味無ぇかな。ラキを推すのは好きだけど、同じ土俵に立ちたいと思わない。あとは……キリを磨くのに忙しいし?」
サガリ君はニヤっと笑って僕の肩を抱いた。
ぐぬ、と言葉を詰まらせていると、今度はサガリ君が僕に聞いてきた。
「キリこそどうなんだよ?ミシナミさん、態度は軽率だけど多分キリには本気だと思う。じゃなきゃ毎回誘って来ねぇだろ」
「うーん……僕も考えた事無かったし、これからも無いかな。ラキちゃんは客席から見るのが1番可愛い」
それに僕の見た目がスッキリしたのはサガリ君のおかげだし、サガリ君に出会わなければ僕はきっとミシナミさんの目に止まらなかった筈だ。
だから……
「僕はこれからもラキちゃんを応援して、その隣にサガリ君が居てくれたら充分に幸せだな」
今の気持ちをサガリ君に伝えた。
「 ……そ、そうか」
「うん。だからこれからも一緒にラキちゃんを応援しよ?」
「お、おう……」
僕の生活にラキちゃんが居て、サガリ君が居る。
ちょっと前までは僕の楽しみは、ラキちゃん一色だったけど、そこにサガリ君と出会って推し活もプライベートももっともっと楽しくなった。
ずっとことまま続けばいいのになぁ。
「だからね、これからもサガリ君は僕の隣に居てね?」
僕にしては、かなり強気な言い方になってしまったけど……
「じゃぁ、キリもずっとオレの傍に居ろよ?」
サガリ君も笑って僕に言ってくれた。
最初は、話しかけられて怖いなと思う事もあったけど、今はサガリ君に話しかけられて良かったと思ってる。
サガリ君と出会った事で、僕はたくさんの経験をした。
これからも、たくさんの楽しいとか嬉しいを、サガリ君と一緒に過ごせたらいいなって、改めて思った。
勿論、ラキちゃんの推し活もねっ!
僕が笑うと、サガリ君もフワッと笑って僕の頭を撫でてくれた。
おしまい
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