ぼくの淫魔ちゃん

黒川

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淫魔ちゃんは自分を召喚した男の真意が分からなかった。だから、召喚の契約を解消させるための手筈を考えていた。



コタツの中で。



「だって!!外寒いんだもん!」




外では、都会には珍しくチラチラと雪が舞っている。淫魔ちゃんは男に買って貰った手触りの良い猫耳パーカーのセットアップを着込んでいた。

「淫魔ちゃん……」

男は淫魔ちゃんの隣に座り、その手触りの良い生地に触れ楽しんでいた。

「可愛い。可愛い格好だね。とても可愛い」

「やだ!」

「えぇ?何をもってヤダなの?脈絡無くない?」

「お前きらい!」

「もしかして、触り過ぎた?だったらゴメン」

「きらい!きらいきらい!」

きらいと言いつつも、男に引っ付く淫魔ちゃん。
にやけ顔で淫魔ちゃんの衣服を撫で回す男。
傍から見ればカップルのじゃれ合いだ。
男は淫魔ちゃんの頬に1つ、キスを落としてから優しく腕の中に収めた。

「なんで……なんで俺を召喚したんだよ……?」

淫魔ちゃんは俯いて男に聞いた。
いつも、はぐらかされる質問だったが、いい加減季節は3つ過ぎ、4つ目を迎えた。
淫魔ちゃんは、召喚されて直ぐ男に名を付けられた。それは男が淫魔ちゃんを従属させるための誓約だった。
男が淫魔ちゃんの名を呼べば、淫魔ちゃんは逆らえない。
なのに男は従属の契約以降、名を呼ばない。
淫魔ちゃんが家を飛び出しても、手元に縛り付けず、名を呼ばず、ただ隣に居るだけだった。

「なんでだろーね?」

男はニッコリ笑って淫魔ちゃんを見つめた。
いつもそうだ。
聞けば答えをはぐらかす。
淫魔ちゃんは不満に思えど、この男を憎からずと思ってもいる。
契約を終えてもたまには遊びに来てやろうと言う位には気に入っているが、一向に契約は終わらない。

「冬が終わって、春が来たらさ、一緒にお花見行こうか?綺麗だよ、日本の桜。ね?」

「お弁当、持ってくのか?」

「お弁当でもいいし、出店の美味しいものを買ってもいいね」

「わたあめ!!わたあめあるか?」

「どうだろうねぇ、行ってみないと分からないかなぁ」

「なら!行かないとだな!しかたないな!」

春うらら、そんな先の季節を誘惑片手に、今日も男は淫魔ちゃんを自分の手元に置き続ける事に成功した。
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