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捜査15日目
捜査15日目~クリーガーの帰還
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夕刻、五日ぶりにクリーガーはズーデハーフェンシュタットに帰還した。
オストハーフェンシュタットでは警察からクリスティアーネ・ヴェールテの殺害の疑いをかけられ、一時的に警察の監視下にあった。しかし、ルツコイ司令官の手はずで、二日後には解放されることとなり、二日かけて駅馬車でズーデハーフェンシュタットに戻ってきたのだ。
駅馬車は時間通りの運行だったので、到着は夕方の遅い時間だった。あたりは暗くなり始めていた。
早く城へ行き、ルツコイに会ってオストハーフェンシュタットでの状況と、こちらでの捜査の状況も確認したい。マイヤーとクラクスにも早急に会わなければ。
クリーガーは早足に城へと向かう。
城に到着する頃には、夜も更けて松明の明かりのみが辺りを照らしている。
城門の衛兵敬礼し中へ、ルツコイの執務室へと急ぐ。
ルツコイの執務室の扉をノックし、中にから入るように声がしたので、クリーガーは扉を開けた。
ルツコイは執務室で帰り支度の準備をしていたようだ。入ってきた人物がクリーガーだと気が付くと、手を止めた。
「クリーガー、戻ったか」。
「はい、帰還いたしました」。
クリーガーは敬礼をする。
「長旅で疲れているだろう。まあ、座ってくれ」。
ルツコイは自分の椅子に座ると、クリーガーにも座るように促す。クリーガーが椅子に座るのを確認すると改めて話しかけた。
「オストハーフェンシュタットでの報告を簡単に頼む」。
「はい」。クリーガーは椅子に座りながらも姿勢を正して話を始める。「まず、オストハーフェンシュタットに到着してすぐに、ヴェールテ貿易のクリスティアーネ・ヴェールテに会いに行きました。そこで、事件について話を聞きました。私見ですが、彼女は関係無いように思いました。そして、私がヴェールテ貿易を去って、宿屋で休憩をしているとき、地元の警察がやってきて、クリスティアーネが殺害されたと。ワインに毒が入っていたそうです。それで警察は私が毒を扱っているのを知っていて疑いを」。
「なるほど。こちらの誰も君が殺害したとは思っていない」。
「司令官が文書を送ってくれたおかげで解放されました。ありがとうございました」。
クリーガーは少々険しい顔で話を続ける。
「あと、向こうで刺客に襲われました」。
「刺客だと?」
「はい。二人組でした。宿屋にいると突然現れて、剣で襲い掛かってきましたが、返り討ちにしました。その後、遺体を警察に調べてもらいましたが、身元が分かるものはなかったそうです」。
「襲われたのは、いつのことだ?」
「オストハーフェンシュタットに到着した、その日の夜です」。
「襲われるような心当たりは?」
「ありません。しかし、元共和国軍兵士は私を裏切り者と言っているようですから、彼らかもしれません」。
クリーガーは傭兵部隊として反乱を起こしそうな元共和国軍の者を取り締まっている。クリーガーも元共和国軍で、今は帝国軍と仕事をしているので、彼を “裏切り者” と呼ぶものは少なくない。
「オストハーフェンシュタットにも反乱分子は居るだろうが、君の到着がすぐに知れるとは思えない」。
「ヴェールテ事件の犯人が捜査を妨害すために刺客を雇ったとしたら?」
「考えすぎでは?」
「あくまで可能性としてだ。しかし、もし、そうなると、他の者にも危険が及ぶかもしれんな」。
「マイヤーとクラクスは?」
「実は、君が居ない五日間で、いろいろ動きがあった」。ルツコイは前のめりなって話をつづけた。「まず、クラクスにエストゥスとクリスティアーネの殺害の疑いがかかった」。
「なんですって?」
クリーガーは思わず立ち上がった。
「そんな馬鹿な!」
クリーガーはさほど感情的ではない方だが、珍しく感情を露わにした彼の驚き方に、ルツコイも少々驚いて目を見開いた。
「落ち着いて聞いてくれ」。ルツコイは静かに話す。「我々も彼が犯人とは思っていないが、警察が執事から忠告されたらしい?」
「忠告?」
「クラクスがヴェールテ家に恨みを持っているようだと。そして、彼は確かにヴェールテ家に恨みを持っていた」。
「恨み?」
「ヴェールテ一族が帝国軍の兵士を買収し、クラクス達を差し置いて、モルデンから逃げ出したと。その事を恨んでいると、本人も認めていた」。
「しかし、殺人までは」。
「私もそう思っているが、警察が疑っている。疑いのある者に捜査を続けさせるわけにはいかないので、捜査からは外した」。
「で、いま、捜査をしているのはマイヤーだけですか?」
「タウゼントシュタインがクラクスの後を引き継いだ」。
「そうですか」。
「クラクスの話には続きがある」。
「はい」。
「彼を捜査から外した次の日、つまり昨日なのだが、失踪した」。
「えっ?」
クリーガーは再び驚いてみせた。
「そうだ、昨日の朝から見当たらない」。
「それでクラクスの捜索は?」
「傭兵部隊から二十名ほどを出して、街の中を捜している」。
グリーガーはうつむいて黙ってしまった。
「まだまだ、あるぞ」。ルツコイは軽くため息をついてから話を続ける。「ヴェールテ家の屋敷にいた残りの者達、母親スザンネと執事、召使いが失踪した」。
「彼らの行方の捜索は?」
「スザンネ達はどうやら、船で街を出たらしい。マイヤーとタウゼントシュタインが海軍の船で追跡している」。
「いつ出発したのですか?」
「二人が出発したのは昨日だ。君と行き違いだが、彼らはオストハーフェンシュタットに向かった」。
「私も後を追います」。
「しかし、もう海軍の船は、他の任務ですべて出航していて足がない」。
「では、馬で向かいます」。
「それでは、追いつけないぞ」。
そうだ、馬では到底追いつけない。クリーガーは力が抜けるように椅子に座り込んだ。
「ここは、マイヤーとタウゼントシュタインに任せるほかない」。
クリーガーは諦めて納得した。
「わかりました。彼らに任せましょう」。
オストハーフェンシュタットでは警察からクリスティアーネ・ヴェールテの殺害の疑いをかけられ、一時的に警察の監視下にあった。しかし、ルツコイ司令官の手はずで、二日後には解放されることとなり、二日かけて駅馬車でズーデハーフェンシュタットに戻ってきたのだ。
駅馬車は時間通りの運行だったので、到着は夕方の遅い時間だった。あたりは暗くなり始めていた。
早く城へ行き、ルツコイに会ってオストハーフェンシュタットでの状況と、こちらでの捜査の状況も確認したい。マイヤーとクラクスにも早急に会わなければ。
クリーガーは早足に城へと向かう。
城に到着する頃には、夜も更けて松明の明かりのみが辺りを照らしている。
城門の衛兵敬礼し中へ、ルツコイの執務室へと急ぐ。
ルツコイの執務室の扉をノックし、中にから入るように声がしたので、クリーガーは扉を開けた。
ルツコイは執務室で帰り支度の準備をしていたようだ。入ってきた人物がクリーガーだと気が付くと、手を止めた。
「クリーガー、戻ったか」。
「はい、帰還いたしました」。
クリーガーは敬礼をする。
「長旅で疲れているだろう。まあ、座ってくれ」。
ルツコイは自分の椅子に座ると、クリーガーにも座るように促す。クリーガーが椅子に座るのを確認すると改めて話しかけた。
「オストハーフェンシュタットでの報告を簡単に頼む」。
「はい」。クリーガーは椅子に座りながらも姿勢を正して話を始める。「まず、オストハーフェンシュタットに到着してすぐに、ヴェールテ貿易のクリスティアーネ・ヴェールテに会いに行きました。そこで、事件について話を聞きました。私見ですが、彼女は関係無いように思いました。そして、私がヴェールテ貿易を去って、宿屋で休憩をしているとき、地元の警察がやってきて、クリスティアーネが殺害されたと。ワインに毒が入っていたそうです。それで警察は私が毒を扱っているのを知っていて疑いを」。
「なるほど。こちらの誰も君が殺害したとは思っていない」。
「司令官が文書を送ってくれたおかげで解放されました。ありがとうございました」。
クリーガーは少々険しい顔で話を続ける。
「あと、向こうで刺客に襲われました」。
「刺客だと?」
「はい。二人組でした。宿屋にいると突然現れて、剣で襲い掛かってきましたが、返り討ちにしました。その後、遺体を警察に調べてもらいましたが、身元が分かるものはなかったそうです」。
「襲われたのは、いつのことだ?」
「オストハーフェンシュタットに到着した、その日の夜です」。
「襲われるような心当たりは?」
「ありません。しかし、元共和国軍兵士は私を裏切り者と言っているようですから、彼らかもしれません」。
クリーガーは傭兵部隊として反乱を起こしそうな元共和国軍の者を取り締まっている。クリーガーも元共和国軍で、今は帝国軍と仕事をしているので、彼を “裏切り者” と呼ぶものは少なくない。
「オストハーフェンシュタットにも反乱分子は居るだろうが、君の到着がすぐに知れるとは思えない」。
「ヴェールテ事件の犯人が捜査を妨害すために刺客を雇ったとしたら?」
「考えすぎでは?」
「あくまで可能性としてだ。しかし、もし、そうなると、他の者にも危険が及ぶかもしれんな」。
「マイヤーとクラクスは?」
「実は、君が居ない五日間で、いろいろ動きがあった」。ルツコイは前のめりなって話をつづけた。「まず、クラクスにエストゥスとクリスティアーネの殺害の疑いがかかった」。
「なんですって?」
クリーガーは思わず立ち上がった。
「そんな馬鹿な!」
クリーガーはさほど感情的ではない方だが、珍しく感情を露わにした彼の驚き方に、ルツコイも少々驚いて目を見開いた。
「落ち着いて聞いてくれ」。ルツコイは静かに話す。「我々も彼が犯人とは思っていないが、警察が執事から忠告されたらしい?」
「忠告?」
「クラクスがヴェールテ家に恨みを持っているようだと。そして、彼は確かにヴェールテ家に恨みを持っていた」。
「恨み?」
「ヴェールテ一族が帝国軍の兵士を買収し、クラクス達を差し置いて、モルデンから逃げ出したと。その事を恨んでいると、本人も認めていた」。
「しかし、殺人までは」。
「私もそう思っているが、警察が疑っている。疑いのある者に捜査を続けさせるわけにはいかないので、捜査からは外した」。
「で、いま、捜査をしているのはマイヤーだけですか?」
「タウゼントシュタインがクラクスの後を引き継いだ」。
「そうですか」。
「クラクスの話には続きがある」。
「はい」。
「彼を捜査から外した次の日、つまり昨日なのだが、失踪した」。
「えっ?」
クリーガーは再び驚いてみせた。
「そうだ、昨日の朝から見当たらない」。
「それでクラクスの捜索は?」
「傭兵部隊から二十名ほどを出して、街の中を捜している」。
グリーガーはうつむいて黙ってしまった。
「まだまだ、あるぞ」。ルツコイは軽くため息をついてから話を続ける。「ヴェールテ家の屋敷にいた残りの者達、母親スザンネと執事、召使いが失踪した」。
「彼らの行方の捜索は?」
「スザンネ達はどうやら、船で街を出たらしい。マイヤーとタウゼントシュタインが海軍の船で追跡している」。
「いつ出発したのですか?」
「二人が出発したのは昨日だ。君と行き違いだが、彼らはオストハーフェンシュタットに向かった」。
「私も後を追います」。
「しかし、もう海軍の船は、他の任務ですべて出航していて足がない」。
「では、馬で向かいます」。
「それでは、追いつけないぞ」。
そうだ、馬では到底追いつけない。クリーガーは力が抜けるように椅子に座り込んだ。
「ここは、マイヤーとタウゼントシュタインに任せるほかない」。
クリーガーは諦めて納得した。
「わかりました。彼らに任せましょう」。
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