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2章:学園生活
おばあちゃんはすごい人
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おばあちゃんに連れられて、私達は先程おばあちゃんがいた2階のテラスに来ていた。
ちなみに私はおばあちゃんの膝の上である。
「あら、それじゃあリーネは今先生をしているの?」
「はい、魔法学園初等1学年1組の担任をしています」
「1組の担任なんてすごいじゃない!さすが私の娘ね!」
「そんなに…すごいこと…?」
「それはそうよ!1~9組の担任は生徒の入学試験と同じように『担任試験』っていうので決めるの。つまり、リーネは現段階で担任を請け負う108人の先生の中で10位以上の強さがあるってことよ」
「へぇ…」
「えっへん!」
ママが自慢げに胸をはる。
たしかにあんな式も見えない魔法出されたらね…。
「ちなみに、私も昔1度先生をしていたことがあるのよ」
「おばあちゃんも…?」
「えぇ、その頃は私の風魔法で1位をもぎ取ったわ」
おぉう…時折物騒だな…おばあちゃん…。
「お母様、一般の人相手に風魔法使ったの?」
「あの頃は若かったのよ。邪魔な人はなぎ倒してね」
「おばあちゃんの…魔法…見てみたい」
「あらあら。リンちゃん、それはダメよ?」
私はせっかくならおばあちゃんの魔法を見てみたかったのだが、ママに止められた。
「ふふふ、私の風魔法はちょっと特殊なのよ」
おばあちゃんがそう言いながら紅茶を飲む。
しかし、私はどうしても見てみたいのでお願いしてみることにした。
「どうしても…ダメ…?」
私のお願いを受けておばあちゃんが少し動揺したようだった。
「も、もーしょうがないわねー」
そう言っておばあちゃんが魔筆を取り出したところでママがガタッと立ち上がった。
「お、お母様!ここでは使わないって王様と!」
「はっ…そうだったわ…」
ママに言われておばあちゃんは魔筆をしまってまた紅茶の入ったカップを手に持った。
「リンちゃん、実はお母様の魔法は規模が大きすぎて王都にいる間は使っちゃいけないって王様と約束されてるのよ」
「え…王様…と?」
「そうよ。ディアナ家は九花の一族だから」
「九花の…一族?」
「あ、リンちゃんはまだ知らないのね。ほら、あそこの庭に旗が立ってるのが見えるかしら?」
そう言っておばあちゃんが指差す方を見ると9枚の花びらがある花が描かれた旗があった。
「あの旗のある家は九花の一族って言って、昔、王様に認められた特殊属性以外の各属性の天才がいる一族のことよ。私達ディアナ家は代々風魔法を司っているの。それで、九花の一族は名前と家名の間に王様から賜った勲名を入れているのよ」
「へぇ…」
おばあちゃんの説明の後にママがちょっと呆れたように付け足した。
「でも魔法を見せる時に、お母様の魔法は『規模が大きすぎるゆえ、全力での魔法行使は王都外のみとする』なんて言われちゃって非常時以外は本気の魔法を使えないのよ」
王様が止めるって…どんな規模なんだろ…。
私がそんなことを考えているとふわっと甘い匂いが漂ってきた。
そして扉がノックされ、ナターニャさんが入ってきた。
「失礼致します。リリー様、お菓子の用意ができました」
「ありがとうナターニャ。それじゃあいただきましょうか」
おばあちゃんがそう言うと、ナターニャさんはテキパキと机の上に人数分のケーキを用意した。
「わぁ…」
私は目の前に出されたケーキを見て感動してしまった。
前に王都で見たことのある白いクリームの乗ったケーキとは違って、薄い黄色と白色の層が何層にもなっているもので、初めて見る美味しそうな物を目の前につい興奮してしまった。
(((可愛い…)))
「ふふふ…リンちゃん、あーん」
そう言っておばあちゃんはケーキをフォークで一口サイズに切り分け、1つを私の口に近づける。
私はつい条件反射で大きく口を開けて目の前のケーキを入れる。
「んー!」
私は初めて食べた物をゆっくり味わう。
黄色の層の優しい甘さと白色の層のふわっとした甘さが口いっぱいに広がりなんとも言えない絶妙な味が私の幸福感を満たしていく。
「おい…しい…!」
(((天使…!)))
しばらく味わって飲み込んだとき、私は全員から見られていることに気づきはっとする。そして、いい子アピールのためおすましを決め込んだ。
……遅いかもしれないけど。
「あらあら、おすまししちゃって」
そう言ってママがくすくすと笑って私を見る。
うん…やっぱりしばらくママって呼ばない。
「気に入っていただけて何よりです。作った甲斐があります」
そう言ってナターニャさんもニコッと笑っていた。
その後もしばらくお茶は続き、そろそろ帰るということでおばあちゃんとナターニャさんが門の前まで見送ってくれた。
「リンちゃん、またいつでも遊びに来てもいいからね。なんなら来週にでも」
「うん…また…くるね」
「リーネも、ほんとはこの屋敷から通えばいいと思うのだけど…」
「それだと周りの目がね…」
「わかってるわよ。担任を1度引き受けたのなら最後までしっかりやりなさい」
「うん、わかってる」
そう言っておばあちゃんとママはお互いに笑っていた。
私はおばあちゃんのところに行き、抱きついた。
「おばあちゃん…バイバイ」
「えぇ、次に会いに来てくれるのを楽しみにしているわ」
おばあちゃんはそっと私の頭を撫でてくれた。
次に私はナターニャさんに抱きついた。
「ナターニャさん…お菓子美味しかった。ありがと…」
そう言うとナターニャさんはしゃがんで私の両手を取って笑う。
「美味しくいただけてもらえて私も嬉しいです。次はもっと美味しいお菓子をご用意いたしますね」
「うん…楽しみ…」
私は再びママの元へ戻り、手を握った。
「バイバイ」
「それじゃあお母様、ナターニャ。また時間があったら帰ってくるから」
そう言って私達は寮への帰路についた。
街はもう夕日でオレンジ色に姿を変えていた。
「リンちゃん、ママはこれから先生として忙しくなっちゃうけど、リンちゃんはもし時間があったらお母様に会いに行ってあげて」
「いい…けど…。どうして…?」
「お母様はナターニャがいるけどほんとは寂しいのよ。お父様はどこにいるかわからないし…だからリンちゃんがお母様のお話相手になってあげてほしいの」
「……ん。わかった…」
「ありがとう…」
そう言ってママは私の頭を撫でながら微笑んでいた。
一方その頃…
「リンちゃん…可愛かったわねぇ…」
「はい…あんなに美味しそうにお菓子を食べていただけるなんて幸せです…」
「そうだわ!次に来た時のためにリンちゃんに新しい服をあげなくちゃ!あの服を着ても可愛かったけど、もっと可愛くなれるはずよ!」
「私も次までにまた新しいお菓子を作れるようにいたします!」
「これから忙しくなるわよー!」
普段は静かなお屋敷が、今日は賑やかになったのだった。
ちなみに私はおばあちゃんの膝の上である。
「あら、それじゃあリーネは今先生をしているの?」
「はい、魔法学園初等1学年1組の担任をしています」
「1組の担任なんてすごいじゃない!さすが私の娘ね!」
「そんなに…すごいこと…?」
「それはそうよ!1~9組の担任は生徒の入学試験と同じように『担任試験』っていうので決めるの。つまり、リーネは現段階で担任を請け負う108人の先生の中で10位以上の強さがあるってことよ」
「へぇ…」
「えっへん!」
ママが自慢げに胸をはる。
たしかにあんな式も見えない魔法出されたらね…。
「ちなみに、私も昔1度先生をしていたことがあるのよ」
「おばあちゃんも…?」
「えぇ、その頃は私の風魔法で1位をもぎ取ったわ」
おぉう…時折物騒だな…おばあちゃん…。
「お母様、一般の人相手に風魔法使ったの?」
「あの頃は若かったのよ。邪魔な人はなぎ倒してね」
「おばあちゃんの…魔法…見てみたい」
「あらあら。リンちゃん、それはダメよ?」
私はせっかくならおばあちゃんの魔法を見てみたかったのだが、ママに止められた。
「ふふふ、私の風魔法はちょっと特殊なのよ」
おばあちゃんがそう言いながら紅茶を飲む。
しかし、私はどうしても見てみたいのでお願いしてみることにした。
「どうしても…ダメ…?」
私のお願いを受けておばあちゃんが少し動揺したようだった。
「も、もーしょうがないわねー」
そう言っておばあちゃんが魔筆を取り出したところでママがガタッと立ち上がった。
「お、お母様!ここでは使わないって王様と!」
「はっ…そうだったわ…」
ママに言われておばあちゃんは魔筆をしまってまた紅茶の入ったカップを手に持った。
「リンちゃん、実はお母様の魔法は規模が大きすぎて王都にいる間は使っちゃいけないって王様と約束されてるのよ」
「え…王様…と?」
「そうよ。ディアナ家は九花の一族だから」
「九花の…一族?」
「あ、リンちゃんはまだ知らないのね。ほら、あそこの庭に旗が立ってるのが見えるかしら?」
そう言っておばあちゃんが指差す方を見ると9枚の花びらがある花が描かれた旗があった。
「あの旗のある家は九花の一族って言って、昔、王様に認められた特殊属性以外の各属性の天才がいる一族のことよ。私達ディアナ家は代々風魔法を司っているの。それで、九花の一族は名前と家名の間に王様から賜った勲名を入れているのよ」
「へぇ…」
おばあちゃんの説明の後にママがちょっと呆れたように付け足した。
「でも魔法を見せる時に、お母様の魔法は『規模が大きすぎるゆえ、全力での魔法行使は王都外のみとする』なんて言われちゃって非常時以外は本気の魔法を使えないのよ」
王様が止めるって…どんな規模なんだろ…。
私がそんなことを考えているとふわっと甘い匂いが漂ってきた。
そして扉がノックされ、ナターニャさんが入ってきた。
「失礼致します。リリー様、お菓子の用意ができました」
「ありがとうナターニャ。それじゃあいただきましょうか」
おばあちゃんがそう言うと、ナターニャさんはテキパキと机の上に人数分のケーキを用意した。
「わぁ…」
私は目の前に出されたケーキを見て感動してしまった。
前に王都で見たことのある白いクリームの乗ったケーキとは違って、薄い黄色と白色の層が何層にもなっているもので、初めて見る美味しそうな物を目の前につい興奮してしまった。
(((可愛い…)))
「ふふふ…リンちゃん、あーん」
そう言っておばあちゃんはケーキをフォークで一口サイズに切り分け、1つを私の口に近づける。
私はつい条件反射で大きく口を開けて目の前のケーキを入れる。
「んー!」
私は初めて食べた物をゆっくり味わう。
黄色の層の優しい甘さと白色の層のふわっとした甘さが口いっぱいに広がりなんとも言えない絶妙な味が私の幸福感を満たしていく。
「おい…しい…!」
(((天使…!)))
しばらく味わって飲み込んだとき、私は全員から見られていることに気づきはっとする。そして、いい子アピールのためおすましを決め込んだ。
……遅いかもしれないけど。
「あらあら、おすまししちゃって」
そう言ってママがくすくすと笑って私を見る。
うん…やっぱりしばらくママって呼ばない。
「気に入っていただけて何よりです。作った甲斐があります」
そう言ってナターニャさんもニコッと笑っていた。
その後もしばらくお茶は続き、そろそろ帰るということでおばあちゃんとナターニャさんが門の前まで見送ってくれた。
「リンちゃん、またいつでも遊びに来てもいいからね。なんなら来週にでも」
「うん…また…くるね」
「リーネも、ほんとはこの屋敷から通えばいいと思うのだけど…」
「それだと周りの目がね…」
「わかってるわよ。担任を1度引き受けたのなら最後までしっかりやりなさい」
「うん、わかってる」
そう言っておばあちゃんとママはお互いに笑っていた。
私はおばあちゃんのところに行き、抱きついた。
「おばあちゃん…バイバイ」
「えぇ、次に会いに来てくれるのを楽しみにしているわ」
おばあちゃんはそっと私の頭を撫でてくれた。
次に私はナターニャさんに抱きついた。
「ナターニャさん…お菓子美味しかった。ありがと…」
そう言うとナターニャさんはしゃがんで私の両手を取って笑う。
「美味しくいただけてもらえて私も嬉しいです。次はもっと美味しいお菓子をご用意いたしますね」
「うん…楽しみ…」
私は再びママの元へ戻り、手を握った。
「バイバイ」
「それじゃあお母様、ナターニャ。また時間があったら帰ってくるから」
そう言って私達は寮への帰路についた。
街はもう夕日でオレンジ色に姿を変えていた。
「リンちゃん、ママはこれから先生として忙しくなっちゃうけど、リンちゃんはもし時間があったらお母様に会いに行ってあげて」
「いい…けど…。どうして…?」
「お母様はナターニャがいるけどほんとは寂しいのよ。お父様はどこにいるかわからないし…だからリンちゃんがお母様のお話相手になってあげてほしいの」
「……ん。わかった…」
「ありがとう…」
そう言ってママは私の頭を撫でながら微笑んでいた。
一方その頃…
「リンちゃん…可愛かったわねぇ…」
「はい…あんなに美味しそうにお菓子を食べていただけるなんて幸せです…」
「そうだわ!次に来た時のためにリンちゃんに新しい服をあげなくちゃ!あの服を着ても可愛かったけど、もっと可愛くなれるはずよ!」
「私も次までにまた新しいお菓子を作れるようにいたします!」
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