前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました

初昔 茶ノ介

文字の大きさ
141 / 145
番外編

episode R & L 9

しおりを挟む
「しょうがない。ここは僕が引き受けるよ」

「え?」

レオン先輩は少し考えた後に言った。
でも、この人正気か?今はこの相手が張ったであろう霧の中で、相手の人数も不明。それを自分一人で引き受ける?

「相手の人数はおそらく三人はいるね。ここまで大規模の魔法だ。敵は困惑するだろうけどこの霧自体を目印にすれば集合くらいすぐできるだろうし」

「だ、だったら俺もいたほうが!」

「いいや、ラロック。霧を発生させている本人が霧の中にいるのは考えにくい。だから君は霧を出てそいつを倒せ。そうすれば霧もなくなって他のみんなも動きやすくなる」

「でも…」

「なぁに、僕はこう見えても公爵家。無茶な後輩の尻拭いくらいできるさ。さ、わかったらいくんだ。このままこっちの方へ進めば霧を抜けられる可能性が高い」

「………頼みます」

「うん、頼まれた!」

そう言ってレオン先輩は岩陰を飛び出した。
レオン先輩を狙って、先程の炎の魔法が飛んでくる音がきこえて、俺も岩陰から移動する。
レオン先輩に言われた方へ走っていくと、霧が少しずつ薄れてきているのがわかった。
霧を抜けた俺は、すぐに霧を出している相手を探す。

霧に再び入らないように霧の周囲を走る。
そして、人が立っている岩を見つけた。

あいつは…さっき俺に喧嘩売ってきたジェルノか?
なるほど…水魔法が得意なブローニュ家ならこんな大規模な霧も簡単ってわけだ。

俺はその岩目掛けて走り、魔法を放つ。

第三トリルクリエイト・ショット!」

俺の魔法はジェルノにまっすぐ飛んでいくが、向こうも攻撃に気がついたのか、水魔法で俺の攻撃を防ぐ。

「これはこれは。ブロクディス家のラロック君じゃないか。あのまま霧の中にいた方がよかったんじゃないかい?わざわざ先輩を囮にしてまで僕の元に向かってくるなんて、愚策にもほどがあるというものだよ」

「うるせぇ、てめぇ一人なら俺だけでじゅうぶんなんだよ!」

俺は風魔法で大きく跳躍し、ジェルノのいる岩の上に来たところで手をジェルノへ向ける。

第三トリルクリエイト・ショット!」

俺が土魔法を撃つと、ジェルノも手をこちらに向ける。

第四クアルアクア・ウォール」

俺の魔法が水の壁に防がれる。
そして、ジェルノが手の形を変えると、水の壁の形が変わる。

第三トリルアクア・ショット」

水の壁が手くらいの大きさにバラけて俺に向かってくる。

「くっ!第三トリルウィンド!」

俺は空中で風魔法を使って水の球を避ける。
だが、数が多すぎて避けきれない。

「うぅ!」

俺の左足に球が当たってバランスを崩してしまい、俺は地面に落ちる。
風魔法でなんとか着地できた。

「くそっ!」

「休んでる暇なんて、ないよ!」

ジェルノは再び水の球を撃ってくる。

第四クアルクリエイト・ウォール!」

土魔法で壁を作り、球を防ぐが壁の上から水が渦を巻いて俺に向かってきていた。

第四クアルアクア・トルネード!」

「……つっ!」

俺は横に避けるが、渦は俺を追いかけるように向かってくる。
もう一度避けようとした時、さっき攻撃が当たった足が痛み回避が遅れる。

俺は水に轢かれてそのまま岩に衝突する。

「ぐぅ…ゴホッ…ゴホッ…」

攻撃の強さに咳き込む。
くそ…ほんとにこいつ同学年か?

「ふん。所詮はその程度なんだよ。聞けば、君は実の兄からも落ちこぼれと言われ、自分は別に跡は継ぐ気がないと思って気にもしていないらしいじゃないか。そんな貴族の責務からも、貴族の血からも逃げている君如きに、私が負けるわけがない」

貴族の血…責務…言葉を聞くだけで怒りがこみ上げてくる。
たしかに俺は草魔法から逃げたのかもな…でも…。

「そうだな…逃げたことは…否定しねーよ…。でもな…魔法が使えないだけで罵り、見下す…そんなゴミみてーな考え方がお貴族様の常識ってやつなら…やっぱり俺は跡を継ぐなんてことしたくねぇな!リリアもかわいそうなやつだ!こんな考え方しかできねー連中に振り回されてな!」

「…貴様ぁ!」

俺の煽りにジェルノが手を大きく上げる。
それを見て、俺も仕掛けた。

しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。