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ずるい鼠は真面目な牛に恋をする
7.お互いの自己紹介
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次の街に向かって歩いているなか、私たちは自己紹介をしてなかったということで、お互いのことを話し合うことにした。
「あらためまして、ウシワカと申します。歳は19歳で、牛族です。」
「私はネムです。歳は16で鼠族です。」
「……」
「……」
((は、話が続かない……!?))
私はもちろん、どうやらウシワカさんもあまり話が得意な方ではないらしい。
しばらく無言で歩いて5分ほどたっただろうか。
「う、ウシワカさんの家族ってどんな方ですか?」
私はとっさに思いついたことを聞いた。
「俺の家族ですか?この旅にでるまでは妹と2人で暮らしていました。今は預かってくれるところがあったので、いったんそちらへ。」
妹さんの話をしている時のウシワカさんはとてもいい顔をしていた。
そんな風に話ができる家族がいるのはとても羨ましいと思う。
「ご両親は…?」
「2人とも死にました。父も母も病で」
ウシワカさんはすごく辛そうに、でもどこか優しい表情で私に言った。
「ご、ごめんなさい…私…」
「いえいえ、気にしなくてもいいですよ。病はネムさんのせいじゃない。それにここで俺が怒ったり悲しんだりしても両親は帰ってきませんからね」
「ウシワカさん…」
あぁ、この人はなんて強い人なんだろう…。
私はウシワカさんの話を聞いててそう思った。
母が亡くなった日から私は今までこんなことを考えられたことがあっただろうか。母を失って寂しい、また会いたい、声が聞きたい、また抱きしめて欲しい、しかし、もう母がいないという喪失感が襲いずっと泣き続けていたのだ。
今でもたまに辛くなった時は泣いてしまう。
私もこんなに強くなれるだろうか…。いつかこんなふうに…。
「ネムさん?」
「あ、はい!すみません…ぼーとしちゃって…」
「大丈夫ですか?疲れたなら少し休憩を…」
「い、いえ!大丈夫です!」
「そうですか?疲れたら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
ウシワカさんの笑顔を見て私はつい下を向いてしまった。
「ところで、ネムさんのご家族はどのような方なのですか?」
「私の家族は…父が鼠族の族長をしてて…母は亡くなりました…。私の母も病です…」
「そうでしたか…すみません…」
「謝らないでください…寂しいのは変わらないですけど…ウシワカさんの言う通り悲しんでもなにも変わらないですもんね」
「ネムさん…ネムさんはお強いですね」
私はウシワカさんの言葉に驚いてしまった。
私なんか全然強くない。お母さんが死んでしまったことを全然忘れられずにズルズルと引きずって生きている私なんか…。
「私なんかより…ウシワカさんのほうがよっぽど…」
「いいえ、俺なんかよりもずっとお強い心を持ってらっしゃると思いますよ。俺はさっきのは口先だけみたいなものです…。妹がいる手前で悲しんでなんていられない、だから親はいないものと諦めて生きてきたんです。ネムさんのように抱えて生きていくような強さを持っていないから…」
ウシワカさんは困ったような笑顔で私に言う。
確かに私のようにずっと忘れられずに生きている姿をいい風に言い換えるとそうなのだろう。
でも、私からすれば妹のため自分の気持ちを殺し生きてきたウシワカさんは弱くなんかない。
その後もしばらくは他愛もない会話をしていた。
そのたびにウシワカさんは少し自分を下に見ているように感じていた。
「あ、あれが街ですかね」
ウシワカさんが指さすほうにはおそらく目的の街だろうものが見えていた。
「あらためまして、ウシワカと申します。歳は19歳で、牛族です。」
「私はネムです。歳は16で鼠族です。」
「……」
「……」
((は、話が続かない……!?))
私はもちろん、どうやらウシワカさんもあまり話が得意な方ではないらしい。
しばらく無言で歩いて5分ほどたっただろうか。
「う、ウシワカさんの家族ってどんな方ですか?」
私はとっさに思いついたことを聞いた。
「俺の家族ですか?この旅にでるまでは妹と2人で暮らしていました。今は預かってくれるところがあったので、いったんそちらへ。」
妹さんの話をしている時のウシワカさんはとてもいい顔をしていた。
そんな風に話ができる家族がいるのはとても羨ましいと思う。
「ご両親は…?」
「2人とも死にました。父も母も病で」
ウシワカさんはすごく辛そうに、でもどこか優しい表情で私に言った。
「ご、ごめんなさい…私…」
「いえいえ、気にしなくてもいいですよ。病はネムさんのせいじゃない。それにここで俺が怒ったり悲しんだりしても両親は帰ってきませんからね」
「ウシワカさん…」
あぁ、この人はなんて強い人なんだろう…。
私はウシワカさんの話を聞いててそう思った。
母が亡くなった日から私は今までこんなことを考えられたことがあっただろうか。母を失って寂しい、また会いたい、声が聞きたい、また抱きしめて欲しい、しかし、もう母がいないという喪失感が襲いずっと泣き続けていたのだ。
今でもたまに辛くなった時は泣いてしまう。
私もこんなに強くなれるだろうか…。いつかこんなふうに…。
「ネムさん?」
「あ、はい!すみません…ぼーとしちゃって…」
「大丈夫ですか?疲れたなら少し休憩を…」
「い、いえ!大丈夫です!」
「そうですか?疲れたら言ってくださいね」
「ありがとうございます」
ウシワカさんの笑顔を見て私はつい下を向いてしまった。
「ところで、ネムさんのご家族はどのような方なのですか?」
「私の家族は…父が鼠族の族長をしてて…母は亡くなりました…。私の母も病です…」
「そうでしたか…すみません…」
「謝らないでください…寂しいのは変わらないですけど…ウシワカさんの言う通り悲しんでもなにも変わらないですもんね」
「ネムさん…ネムさんはお強いですね」
私はウシワカさんの言葉に驚いてしまった。
私なんか全然強くない。お母さんが死んでしまったことを全然忘れられずにズルズルと引きずって生きている私なんか…。
「私なんかより…ウシワカさんのほうがよっぽど…」
「いいえ、俺なんかよりもずっとお強い心を持ってらっしゃると思いますよ。俺はさっきのは口先だけみたいなものです…。妹がいる手前で悲しんでなんていられない、だから親はいないものと諦めて生きてきたんです。ネムさんのように抱えて生きていくような強さを持っていないから…」
ウシワカさんは困ったような笑顔で私に言う。
確かに私のようにずっと忘れられずに生きている姿をいい風に言い換えるとそうなのだろう。
でも、私からすれば妹のため自分の気持ちを殺し生きてきたウシワカさんは弱くなんかない。
その後もしばらくは他愛もない会話をしていた。
そのたびにウシワカさんは少し自分を下に見ているように感じていた。
「あ、あれが街ですかね」
ウシワカさんが指さすほうにはおそらく目的の街だろうものが見えていた。
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