最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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一三九話

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「スグミさん、何やってるんですか?」

 俺がチェストボックスから出した大型の姿見を前に、色々とポーズをとっていると、背後からソアラの声が聞こえてきた。
 とはいっても、実は鏡にソアラが近づいて来ていたのは見えていたんだけどな。

 一応断っておくが、ウルトラとかライダーや戦隊のような、そんな変なポーズなどはとっていないからな?
 普通に、客観的に自分がどう見えているか確認していただけだ。

「何って、貰った素材でちょっと服を作ってみたんだよ」

 そう答えつつ、ゆっくりと振り返る。
 まぁ、ほぼほぼ自前素材ではあるんだが……

「どうよ? 鎧ほど物々しくなく、普段着としても利用可能なフレキシブルなコートでありながら、その防御能力は並みの鎧以上という性能を実現っ!
 戦える普段着、いうなればバトルコートといった感じなんだが……いいだろ?」

 そう言って、俺はソアラの前でクルリと回る。


「え? あ~、はぁ……まぁ、スグミさんが良いと思うなら良いんじゃないですか?」

 と、そう俺は得意げにソアラに話したのだが、ソアラの反応はというと実に淡白な感じなものだった。

「何だよ? 随分と歯切れの悪い言い方じゃないか。言いたいことがあるならはっきり言え、はっきりと」
「……いいんですか?」
「忌憚のない意見が聞きたい」
「では……」

 そこでソアラは一旦言葉を止めて、すっと息を深く吸う。で……

「ダっさ! ぶっちゃけ、もの凄くダサいですよその服?」

 そんなソアラの遠慮も配慮も、欠片も感じられない言葉に、俺は我が耳を疑った。


「ウソやん! カッコイイやろ?」
「何処がですか? そもそも、何で肩に装甲版みたいなのが付いてるんですか? 意味あるんですかそれ?」
「バッカキャロー! 戦闘用の服っていった、太古の昔から肩パットって相場が決まってんだよ!
 世紀末の拳法家は、みんなジャケットに肩パットが付いてんだよ!」
「……何のことかさっぱりですけど、少なくとも一緒に歩きたいとは思わない格好ですよ、それ」
「そんな……そんなバカなっ……」

 自信作を頭から全否定され、失意のあまり膝から崩れ落ち、そのままパタリと地面へと横たわる。
 あぁ~、なんか草がチクチクして気持ちええなぁ~。こんな草の上に直に横になるなんて、何時振りだろうか……
 と、軽く現実逃避。


「今時、そんなデザインの服着て喜ぶのなんて、小さな男の子くらいなものじゃないですか?」

 言うに事欠いて、そんな・・・……だと?
 つまり何か? 俺のセンスは小学生男子並みだと、そう言いたいのか?

 ……まぁ、その世代が喜ぶ物を作るのが、元の世界での俺の仕事なんだけどな。
 裏を返せば、この世界でも俺のセンスは子どもには刺さると、そうポジティブに受け止めることにした。

「ふっ……まぁ、あれだ。男の浪漫なんて、所詮女には理解で出来ないってことだな、うん」
「どう受け取ってもらっても構いませんけど……そんなことよりですね」

 あっ、またそんなことって言った……

「実はスグミさんにちょっと頼みたいことがあるんですよ」
「……何だよ」

 そう答えるも、俺はゴロリと寝返りを打ってソアラに背を向ける。


「そんなあからさまに拗ねないでくださいよ。子どもですか?」
「ええ、ええ、どうせ俺のセンスは子ども並みですし?」
「もぉ、面倒臭い人ですね。そもそもスグミさんが、はっきり言え、って言ったんじゃないですか?」

 まぁ、そうなんだがね? でも、もう少しオブラートに包んでくれてもいいのよ?

「で? その“いじけゴッコ”何時まで続けるんですか?」
「おや? 気付いてたか?」

 あからさまな呆れ口調のソアラにそう言われ、俺は何事もなかったかのようにすくっと立ち上がった。

 確かに、俺のセンスを否定されたのは悲しいが、実のところ、そこまで堪えてはいないっていうね。
 俺のセンスが否定されがちなのは、何も今に始まったことではない。
 以前から、知り合いには色々と「ダサい、ダサい」と言われていたからな。主に、俺が人形に付ける名前に対してなっ!

 ああ! 認めるのよ! 確かに俺のネーミングセンスはダサい! 悪いかこのやろー!
 というわけで、だ。俺は既に十分な耐性を身に着けているのだっ!


 まぁ、そんな感じで否定的なことは言われ慣れているので、そういった意見はあまり気にしないことにしている。
 豆腐メンタルな俺ではあるが、絹ごし豆腐だって集めて崩して押し潰せば、木綿豆腐くらいの強度にはなるのである。


「今まで散々スグミさんにはからかわれて来ましたからね、何となく分かるようになって来たんですよ」
「なるほど。つまり、それだけ俺のことをよく理解してくれていると?」
「不本意ですけどね」
「まさか、ソアラにそこまで強く想われていたなんてな……照れるぜ」
「……何か、変な勘違いしてませんか? そう言うのじゃないですからね?」
「照れんなよ」
「そう言うのじゃないって言ってますよね?」


 と、ほぼ日常と化した軽口の応酬が続く。
 しかし、ソアラの蟀谷こめかみに青筋が浮かびそうな勢いだったので、これ以上続けると色々爆発しそうなの雰囲気を感じ、頃合いを見て引き下がることにした。
 戦いとは、時には引くことも大切なのだ。
 戦略的撤退というやつだな。うん。

「で? 俺に頼みたいことって?」

 そして、何事もなかったかのように俺は体に付いた草を軽く叩き落としながら、真面目にソアラに本題を問う。

「もぉ、話を聞く気があるなら、初めからちゃんと聞いてくださいよ……
 何なんですか、この無駄な時間は?」
「主に、俺の暇つぶしだな。午後は特に誰からも声が掛からなかったから、ずっと暇してたんだよ」

 そう答えつつ、出しっぱなしになっている姿身を片付ける。
 まぁ、赤鎧素材で服を作っていたので、完全に暇だったわけではないのだが、ずっと一人での作業だったため、人恋しくはあったことに間違いはない。
 そんなところに、丁度ソアラが来たらのだ。なら、もうソアラをからかって遊ぶしかないじゃない。


「だから、私で遊ぶのはいい加減って……はぁ、もういいです。実はですね……」

 ソアラの話しでは、切り分けていた肉を食料保管庫にしまっていたのだが、保管庫がいっぱいになってしまったと言うのだ。
 赤鎧のサイズを考えれば、現在の保管場所だけでは絶対に足りなくなるだろうことは、昨日の段階から分かっていたことなので、昨日の時点で昔使っていた倉庫の片付けを大急ぎで行っている最中らしいのだが、実際に使用可能になるまでには暫し時間がかかるのだと言う。

 そこで、保管庫の用意が出来るまでの間、俺に余っている肉を保管して欲しい、というのがソアラの言う頼みごとだった。
 そういうことならと、二つ返事で引き受けると、俺とソアラは連れ立って肉を加工している場所を目指して歩き出した。

 一応、近くで作業をしていた人にもそのことを伝ておく。これでもし、俺に用があれば向こうから呼びに来るだろう。
 で、現場へ向かう道すがら……

「それにしてもスグミさん。この季節に、そんな厚手のコートを着ていて暑くないんですか?」

 と、ソアラが至極真っ当なことを聞いて来た。
 ぶっちゃけ、メッチャ暑かったっすよ! 革製だから空気も碌に通さない所為でメッチャ蒸すし……

「普通だったら暑いだろうな。けどそこは、あれこれ手を加えて“着ている間は快適な温度になる”機能を付けたから、真冬だろうが真夏だろうが快適そのものだ」
「また、とんでもない技術の無駄遣いを……」

 バカを言ってはいけない。そもそも技術とは無駄遣いするためにあるのだ。
 普段から何気なく活用しているインターネットだって、元はといえば歴とした軍事技術がその始まりだ。
 それが今となっては、動画を見るか買い物をするか、もしくはエロサイトを見るかくらいにしか使われてはいない。(スグミ個人の意見です)
 つまり、技術というのは突き詰めれば、娯楽か利便性の向上の為に使用されるようになる、ということだ。
 そして、利用頻度が上がるからこそ、更に技術が向上して行く……
 人間の飽くなき探求心って、ホント凄いと思うわ。

 なんて話をソアラにしてみたが、どうにも理解はしてもらえなかったようだ。
 ちなみに、何ならコートを着て体感してみるかと聞いてみたが、全力で拒否られた。
 そこまでこのコートを着たくないのか……まぁ、いいけど。

 で、現場に着いたところで、食料保管用のチェストボックスを出し、加工済みの余っているという肉を片っ端からしまって行くことにした。
 こうして、俺は下処理の終わった肉をチェストボックスにしまうという行為で、この日一日が終わって行った。

 流石に、一日では赤鎧をすべて解体するには至らなかったので、続きはまた明日だ。
 解体途中の赤鎧をそのままにも出来ないので、俺はもう一度広場へ戻り、赤鎧を回収。その後、解散となって一日が終わった。
 続きはまた明日からだ。

 余談ではあるが。
 俺のコートは、何故かアイラちゃんにはめっさ刺さったようで、カッコイイ、カッコイイと目を輝かせてベタ褒めされた。
 いや~、やっぱり分かる人には分かるようだ。
 同じ病を患っている物同士……まぁ、俺はではあるが……何か相通じるものがあるのかもしれないな。
 あと評判が良かったのは、ソアラが言っていた通りガキんちょどもくらいか。
 ヨームやイオスに見せたら、何とも言えない微妙な表情をしていたからな。ノマドさんに至っては、目すら合わせてくれなかったよ。
 カテラさんは終始ニコニコしているだけで、何を考えているのかさっぱりだったな。
 まぁ、あれだ。
 何処の世界でも、前衛過ぎるデザインというものは、理解されるまでには時間が掛かる物だ。


 きっと彼らも、そのうちこのデザインの良さに気づく日も来るだろう。
 何せ、絵画の巨匠たるゴッホだって、その絵が評価されるようになったのは、彼が死んだ後からなのだからっ!
 芸術とはそういうものなのだっ! きっと……たぶん……
 
 
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