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一六〇話
しおりを挟む「おにいさん。お母さんのおっぱい見過ぎですよぉ~。やぁらしぃ~んだぁ~!」
「げらっはっ! ごふっごふっ……」
唐突な爆弾発言に、俺、咽る。
「ば、バレてたのか?」
「そりゃ、あれだけガン見してれば分かりますよぉ。多分、お母さんも気づいてたんじゃないですかねぇ~?」
「おふんっ……」
恥ずかしさのあまり、その場に膝から崩れ落ちる俺。
やっべ……次ぎ会う時、どんな顔して会えばいいっていうんだ……穴があったら入りたい……
これでは、完全に俺がおっぱい星人だということがバレてしまったではないか。
ちなみに、“性人”でも可である。
あの人、私の胸ガン見してたんだけど……キモっ。と、思われながら顔を合わせていられるほど、俺のメンタルは強くはないので、こうなってしまった以上仕方ない。最後の手段に出なければいけないようだな……
「……宿、変えようかな」
「なっ! なんて怖いことを言ってるんですかっ! け、契約は成立しているのでお、おか、お金は返金しませんよっ!」
これ以上顔を合わせずに済む方法はこれしかないと、そう俺が呟くと、ミラちゃんが血相を変えてそんなことを言い出した。
だが……
「ん? ……確か、料金表には宿泊期間短縮による返金には対応しますって、そう書いてあったぞ?」
「んぁー! 嘘ですっ! ごめんなさいっ! もうこの際、お母さんのおっぱいなんていくら見てもいいですから、ここを出て行かないでくださいっ!」
と、さっきまでのニヤニヤ顔は何処へやら。
今度は一転、今にも泣き出しそうな顔で、ミラちゃんがよよよよっと俺へと縋りついて来た。
「ほっっっっとうに、おにいさんが久しぶりのお客さんなんですぅ!
しかも、金貨をポンと出すような上客なんて、滅多にいないしっ!
今でもギリっギリのギリな生活なのに、ここでおにいさんに出て行かれたら、生活がっ! わたし達の生活が大変が危険なことになるんですよぉ~!
もう、お野菜のヘタと皮しか入ってない、うっすい塩味のスープは飲みたくないんですよぉ~。
それにそれにっ! お母さんもそんなに気にしてないと思いますしっ!」
「……それ、ホント?」
「ホントもホントですよっ! お母さんの胸ってアレですから、出かける先々で男の人の目を集めちゃうんですよっ!
あんな凶悪な物ぶら下げてるお母さんも悪いちゃ悪いですし……
だから、もう慣れてますって! ……きっと」
最後に小さく呟いていた言葉が気にはなったが……
てか、それって慣れているのではなく、単にうんざりして相手にしていないだけなのでは? と、思わなくもないのだが……
それにしてもこの子。生活の為とはいえ、今、自分の母親をあっさりと売った挙句さらっとディスらなかったか?
「あっ!」
で、急に何かを思いついたの、ミラちゃんがぱっと俺から離れると、
「なんらわたしのおっぱいも見ていいですからっ!」
と、俺の前で胸を反らして見せるのたが……
そこに秩父の香りは微塵も感じることは出来なかった。むしろ東尋坊である。
親子のはずなのに、えらい違いだ。
遺伝子はちゃんと仕事をしているのだろうか?
てか、泣いて縋るほど困窮してるって、一体どんだけ儲かってないんだよこの宿屋は……
何かが色々と不安になって来る。
「だから、宿を変えるなんて言わないでくださいぃ~! よよよ~」
で、また俺へとしがみ付いて来るミラちゃん。
「分かった分かった! 宿は変えないから、取り敢えず離れなさいっ!」
中学生くらいの女の子が成人男性の腰にしがみ付くとか、絵面的に色々と宜しくないので、乱暴にならない様に無理やり引きは剥がす。
しかし、だ。
「あ~、なんだ……この宿の経営が厳しい状況にある、ってのは何となく分かったが、だからって“胸を見てもいいから”っていうのは間違っていると思うぞ?」
と、優しく諭す。
「そ、そうですよね……わたしも言ってから、ちょっと恥ずかしなって思いました……」
自分でも自覚していたのか、ミラちゃんは照れた様にテヘヘっと笑っていた。
「そうだろうそうだろう。
いいかい? ミラちゃん。君にお母さん程の見せる、いや、魅せる胸はない。いいね?」
「そういう意味かよっ! さり気に酷いこと言いますね! おにいさんっ!」
あれはお相子だと思うぞ? 君も大概だ。
「だが、まだ慌てる時間じゃない。
ミラちゃんも成長期だし、お母さんが巨乳だからね。大丈夫。
きっとそのうち大きくなるさ!」
そう、俺はミラちゃんを励ましたつもりだったのだが、気付けば何故かミラちゃんの瞳からハイライトが消えていた。
何故に種っているのだろうか?
「ははは……実はわたし。ここ数年サイズが変わってないんですよね……」
何が、とは言わずとも、察らせれることもある。
「……希望は、希望はあるから」
「希望って残酷な言葉ですよね……だってそれって、結局は絶望を先送りにしているだけなんですから……」
ハイライトを失った彼女の瞳が、何処か遠くを見つめていた。
♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢ ♢♢♢
「そ、それで、おにいさんはこれからどうするんですかっ?」
お互いに何故か精神ダメージを応酬するという、無意味な時間を過ごした後。
ここぞとばかりに、ミラちゃんが急激な話題転換を図ったってきた。
ナイス! ミラちゃん! このビックウェーブ、乗るしかないっ!
というか、これ以上この話題を引き伸ばしいはいけない。それはどちらの為にもならないからな。
「あ、ああ……取り敢えず、まだ日も高いから街中を散策してみようかと思ってるよ。
チェックしておきたい場所もあるしな」
すべては明日次第のところはあるが、学者先生に会えなかった時の為に、王都にあるというセリカの実家、フューズ家の場所も調べておかなくてはいけないし、仕事を受ける受けないは別として、預けたお金を引き出す為にも、自由騎士組合の場所も知っておく必要はあった。
それでまだ時間が余るようなら、王都観光をしてもいいかもしれない。折角、立派なパンフもあることだしな。
「そういうことでしたら、わたしが王都を案内しましょうか?
わたし、生まれも育ちも王都の、生粋の王都っ子ですから!」
と、ミラちゃんが誇らしげにない胸を張る。
ならばと、ミラちゃんに王都案内を任せることにした。
特に何もないが、一応部屋に鍵をかけて、その鍵を女将さんに預け、いざ街へ。
まずは近くから、ということで自由騎士組合へと向かい、アグリスタとは比にならない人の多さに度肝を抜かれた。
その人の多さといったら、まるで競り市場のそれだ。なんだかよく分からない怒号がそこかしこで飛び交っていた。
で、セリカの実家フューズ家の方だが、こっちは一般人は立ち入り出来ない貴族区と呼ばれる区画にあるらしく、俺達は入れないとのことだった。
そういえば、アグリスタにもあったな貴族区。
まぁ、一応ブルックから貰った手紙を見せれば通れるだろうけど、今は直に行く必要はないだろう。
一般区と貴族区を隔てる所には門があり、そこには常に門番も居るようだし、用がある時は彼らに声を掛ければ十分事足りる。
その後は、食料品や雑貨を売っている店の場所を教えてもらいつつ、街を巡り歩いた。
今は食料も雑貨も、手持ちで事足りているので早急に必要ということはないが、必要になった時に場所を知らないと不便だからな。
道中、クリーニング店のような場所を見つけ、ここは要チェックしておく。
洗い物が増えてきたら頼まないとな。
ゲームの時は着ている服が汚れるなんてことはなかったが、今は現実だからな。
当然、普通に汚れもする。
エルフ村に居た時は、俺の洗濯ものもカテラさんやソアラ達がまとめて洗っていてくれていたから助かったが、今後はそうもいかないからな。
……見ず知らずの女性に下着を洗われるというのには、ちょっとばかり抵抗もあっだがな。
と、言う様なことをミラちゃんに話したら、普段はやっていないそうだが、頼めば俺の分の洗濯も一緒にしてくれるようなことを言ってくれた。
勿論、有料である。ちゃっかりしているな……
それらの下調べが終わってもまだ時間が余っていたので、ミラちゃんお薦めの観光スポットを巡ることにした。
王室管理の立派な公園に、(ダンジョンではない)古代遺跡の跡地に歴史的史跡、広場で行われている大道芸などなど。
それなりに王都観光を楽しんだところで、日も傾き始め、俺達は宿屋への帰路に就いたのだった。
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