最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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二九一話

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「それじゃ、はい、これは返すな」

 まぁ、変な事には巻き込まないでくれよ? と心の中で願いつつ、俺はブローチをプレセアへと差し出した。
 大体なんでこんな物を俺に渡したのかはよく分からないが、王家の紋章とやらを確認したので、もうこのブローチも用無しだろう。
 と思ったのだが……

「いえ、そのブローチはスグミ様に差し上げます。初めからそのつもりで持って来た物ですから」
「は? 差し上げるって……なんでまた?」
「実はですね。今回討伐したベルヘモスの素材の価値を市場価値で試算したところ、スグミ様にお渡しした報酬額が少な過ぎる、という結果が出たのです」

 どういうことかと詳しく聞くと、簡単にいってしまえば、報酬の不足分の補填としてこのブローチが俺へと下賜されることになった、ということらしい。

 別にこんなブローチを渡さなくても、追加の報酬を現金で支払えばいいんじゃね? と聞いてみたのだが、どうもそう簡単なことではなく、組合の規則の関係上不可能なのだという話しだった。

 そういえば、一度に支払える報酬の限度額、みたいなのが決まってるんだっけ?
 確か一件に付き上限5000万で、今回の依頼は探索と討伐の二つで合計1億となっていたはずだ。

 ちなみに、一度に支払える金額が決まっいるのなら支払う項目自体を増やす、という力業も出来ないわけではないらしいが、依頼完了後の内容変更はぶっちゃけガチの不正行為なのでバレた時点で一発アウトだとマレアが笑いながら教えてくれた。

「ちな、罰則は?」
「首がぴょ~んするかな?」
 
 とは、マレアの談である。
 この国、首ぴょ~んしずぎじゃね? と、思わなくもない。

 いや……別にプレセアやラルグスさんを危ない橋に渡してまでカネとかいらんしなぁ。

 だったらいっそ、追加の報酬なんぞいらない、と言ったらこれにはプレセアが猛反発して来た。

「働きに対して正当に評価をしなければ、人の上に立つ資格などありませんっ!」

 と、鼻息荒く捲し立てられてしまった。
 ただなぁ……言ってることは正しいのだが……なんか……こう……必死にブローチを渡そうとして来るところに、それ以外の思惑というか何かが透けて見えるというかなんというか……

 で、結果として組合からの追加報酬というのが無理そうなので、別件として国王であるプレセアからの恩賞として、このブローチを下賜することになった、ということらしい。

「下世話な話で悪いが、おそらく純金製で王家の紋章入りの装飾品となると、価値ってどれくらいになるんだ?
 てか、大体、こういうのって超貴重品なんじゃないのか?」
「はい、超貴重品ですね。
 ただ、申し訳ないのですが、基本的に王家の紋章の入った装飾品は王家に所縁のある身分の者しか所有を認められておりませんので……おそらく現金化は不可能だと思われます」
「闇市でもない限り、普通の店に売りに行っても見せた瞬間追い返されるのがオチかな?
 てか、ソレ持ってるのが下手にバレると、アホな奴らが奪おうと押しかけて来るかもね~」

 プレセアの言葉に続く様に、マレアがそう補足してくれた。
 持ってるだけで無条件で襲われるとか……それは報酬ではなく最早呪いのアイテムなのでは? と思わなくもない。
 
「ですが、その紋章を見せれば大概の場合で便宜を図って頂けるかと存じます。
 スグミ様は以前から申しておりましたよね? 折に触れて便宜を図って欲しい、と。
 それと、それがあれば古代迷宮へも進入不可領域への立ち入りも許可されますので、スグミ様の目的とも合致すると思います」

 言った。言いましたよ? 確かに、古代迷宮に入るのが目的だからねっ!
 しかし……だからってマジか?
 持っている自分が価値を理解していないのは拙いと思い、軽く確認するだけのつもりだったが……聞いて後悔しかない。

 余談だが、金級以上の自由騎士になると、王家から特殊なギルドタグを発行されることになるそうなのだが、これはその代わりも兼ねているとのことだった。
 どうやら、俺の場合、金級自由騎士への推薦がかなり特殊な形らしく、世間一般には金級として発表されるとのことだが、ギルドタグ自体は銀級のままだと言われた。
 まったくそのまま、ということでもないらしいが、通常の金級自由騎士のギルドタグとは別扱い、ということになるらしい。

 まぁ、遺跡調査に限り金級自由騎士扱いって感じだからな。銀以上金未満。いわば、準金級といった感じだろう。 

「あっ、先に断っておくと、陛下から下賜された物を拒否るとか返すとかするのは、王族侮辱罪になるから気を付けてね♪」

 そんな打ちひしがれる俺の隣で、マレアが満面の笑みを浮かべてそう教えてくれた。

「マ?」
「マ」

 嘘だろ……俺が欲しかったのはちょっと色々と融通してくれる程度のことであって、こんな受け取り拒否も捨てることも出来ない呪われたアイテムが欲しかったわけじゃねぇっ! 
 どうすんだコレ……

「ちな、罰則は?」
「首がぴょ~んするかな?」

 またそれかよ……
 仕方ないので、ため息一つ、ブローチをそっと亜空間倉庫にしまう俺だった。

 その後は、ラルグスさんから今後の予定についての話しを聞かされた。
 ベルヘモスのお披露目式典は二〇日後に決まったらしい。
 それまで俺は自由にしていていいとのことだったが、基本はあまり遠くには行かないでくれと言われた。
 俺がいないとベルヘモスの運搬とか無理だろうからな。これはラルグスさん側からすれば妥当の要求だろう。
 とはいえ、ぶっちゃけワープ……というか一瞬で拠点に移動出来るアイテムを持っているので、余程のことでもない限り、その気になれば何処からでも一瞬で帰って来れるのだが……まぁ、その話はしなくてもいいか。
 二〇日と少し長いが、まとまった休暇だと思ってのんびりすることにしよう。

 ラルグスさんとの話し合いが終わると、今度はプレセアから屋敷の見学がしたいという申し出があった。

 とはいっても、案内する場所なんて限られている。
 現状見せられる場所なんて、玄関と食堂、あと厨房と風呂場くらいなものだ。他はまだまだ廃墟同然である。
 それら以外で整えられている場所といえば、あとは各自の私室とか、プライベートな場所ばかりだかりなので、流石にそこは見せて回るわけにもいかないしな。
 まぁ、俺の私室兼執務室くらいなら別にいいけど……

 ということを説明したのだが、それでも見たいと言うので、まぁ、それならと案内することに。
 ルートとしては、玄関、食堂、厨房、風呂場といった感じだな。

 というわけで、プレセアそしてラルグスさんを連れて屋敷内を案内することになった。
 で、一通りの視察を終えたプレセア一行はというと……
 他の公務があるからと、昼少し前には連れて来た視察団全員を案の定置き去りにしてさっさと帰っていきましたとさ。

 で、置き去りにされた研究員達はというと……
 そんなことまるでお構いなしに、なんか早速ベルヘモスの血を抜いたり肉やら甲羅をバラしたりと、元気に色々と始めておりました。
 ただ……なぁ……
 解体場内では、素人お断り的な、ある意味現場特有の空気感が漂っていたので、俺は入り口からこっそり様子を窺うだけにして、そっと帰ることにしたのだった。
 なんか、下手に近づくと碌なことにならないような気がすんだよ。うん。
 こういう時は、君子危うきに近寄らず、である。
 やべぇーとこには近づかない。ということで帰ろ帰ろ。
 
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