最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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二九九話

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「気になる言い方をするな? 枯れている、じゃなくて、枯れていると言われている、ってのはどういう意味なんだ?」
「言葉通りの意味よ。
 七号遺跡が発見された当時の調査で、ガードナーの活動痕跡が発見されなかった、とそう報告されているの。
 さっきも言ったけど、七号遺跡は奥へと続く道が崩落によって通行不能になっているから、暫定的に、枯れている遺跡、として認知されてるってわけ」

 遺跡の一部が崩落していて、ちゃんとした調査が出来てないから正直分からん、ってことか。
 
「なるほど。調べられる範囲には居ないけど、崩落したその先には居ねかもよ? ってことで、枯れいると言われている、ってことか」
「そういうことね」

 そんなセレスの説明に納得する。が……

「掘り起こそうとかしなかったのか?」

 という、当然の疑問が湧いて来た。
 遺跡は資源だ。
 となれば、崩落して塞がれているから諦める、といよりはむしろ、掘り起こしてでも調べる、という流れになりそうなものだが……

「当然。当時の人達もそうしようと試みたわ。でも、かなり不安定に崩れているみたいで、断念するしかなかったようね」

 セレスの更に詳しい解説によれば、費用対効果が見合わない、と判断されたようだ。
 崩落の危険性の高い現場、かつ、遺跡の内部という特殊な環境。
 そこに投入する人材と費用、そして危険性。更には、瓦礫を撤去したからといって、その先に必ずガードナーが出る、という保証もない。

 それら諸々を天秤にかけた結果、放棄する、という決定をしたらしい。

 そこに来てのこの俺だ。
 つまり、俺が個人で勝手に遺跡を掘り起こしてくれるなら、王国側の懐が痛むことも無く、喩え崩落に巻き込まれたとしても、何処から来たかも分からないよそ者が一匹生き埋めになる程度である。

 まぁ、セレスとの約束で、遺跡調査には神秘学研究会の人間を最低一人は同行させること、となっているので、俺と一緒に巻き込まれる奴が最低一人はいることになるが……それでも二人なら損害としては軽微なものだろう。
 
 そのうえで、掘り起こしたその先で運よくガードナーが出現しようものなら、国側としては生きている遺跡を丸々一つ何の労力も無く手に入れることが出来る、というわけだ。

「なるほど。したたかなこって……」
 
 とはいえ、俺に選択の余地などクソ程も無いので、お国側からの条件を飲む他なし、である。

 しかし、崩落しているとなると、掘り起こす方法について追々考えないとな……

「分かった。そこでいい。で、その七号遺跡って行くのにどれくらいの時間が掛かるんだ?」

 近い、とはいえこの世界基準での、近い、である。
 隣の村まで馬車で一〇時間。これでも近いらしいからな。額面通りには受け取れない。

「そうね……王都からなら馬車で半日もしない場所なのだけど……
 ああ、ほら、以前ベルヘモスの調査に行く時に、広い平原に行ったでしょ? その近くよ」
「ああ、あそこか……」

 と、俺の疑問に答えてくれたのはセレスだった。で、思ったより本当に近かったござる。 
 なんでも、あの土地の開拓が進まないのは、あの開拓し難い起伏の激しい地形も然ることながら、その七号遺跡が近くにあるから、というのも理由らしい。

 要は、遺跡保全の観点から、下手に掘り起こして地下の遺跡を傷つけないように、ということのようだ。
 そういえば日本でも、土地開発中に遺跡が出て来て工事が中断した、なんて話をよく聞くな。

 だから、そんなことになっては面倒だと、施工側が遺跡を見つけても黙ったまましれっと工事を進めてしまう事例も少なくないとかなんとかかんとか……
 
 なんてことはさておき。

 確か、あの時は馬車で片道二、三時間くらいだったか? なら、キャリッジホームなら、数十分で着くような距離だな。

「りょ。それじゃそう連絡しておくけど……入るならいつくらいからの予定にする? 
 入るなら入るで、用意しておかないといけない物があるんだけど?」
「そうだな……今回は自由に出来る時間が限られてるから、早いなら早いだけ良いな。明日とかどうだ?」

 ちょっと無茶振りか? とも思ったが、ダメ元でマレアに聞いてみる。

「オケ。それじゃあそれで伝えておくよ」

 が、案外すんなり通ったな。
 
「でも、用意するって何を用意するんだ? 通行書とか、手形的な物とか?」
「鍵よ」

 なんとなく気になりマレアにそう問い掛けたのたが、答えたのセレスだった。

「鍵?」
「ええ。遺跡には許可のない者が不用意に近づかないよう、結界が施されているの」
「そ。遺跡ってほら、魔石とか、古代のアイテムとか、とにかくそういうお金になりそうなものがあるでしょ?
 そういうのを目当てにした邪な奴らが勝手に入らないように、結界が張られてるってわけ」

 そう、セレスに続きマレアが説明をしてくれた。要は、盗掘防止ということらしい。
 まぁ、確かに魔石は国の貴重な資金源らしいし、古代アイテムとかだって勝手に持ち出されたらたまらんわな。

「それを解除する為の、もしくは無効化するための鍵が必要ってことか……」
「そゆこと♪」

 だが……
 セレスとマレアの話しからすると、七号遺跡、つまりは枯れている遺跡にも、その結界が施されている、ということになる。
 碌に守る必要がない場所を、そこまで厳重に警備する必要があるのだろうか?
 という疑問が湧いて来たので、ついでに聞いてみた。

「当然でしょ? 枯れている遺跡は、あくまで魔石が産出されない、つまり、ガードナーが出ないだけだもの。
 だからって、盗掘を許して古代のアイテムとか持ち逃げされたらたまったものじゃないわ」

 まぁ、確かにな。セレスの言い分もその通りである。
 七号遺跡はたまたま崩落によって通行止め状態になっているが、他はそうではないらしいからな。

「それに、遺跡に使われている石材そのものが、一種の古代アイテムになっているの。だから、魔石の産出云々以前に、遺跡、という一点で盗掘は絶対に防がなくてはいけないのよ」
「? 遺跡がアイテム? どういうこった?」

 いまいち理解が出来なかったので、セレスに更なる説明を求めることにした。
 曰く。
 遺跡に使われている石材は、魔術的な効果が一切通用しない、また阻害する特殊な材質で作られている、とのことだった。

 その特殊素材が及ぼす影響だが、まず、この素材が周辺にあると魔術の効果が低下する、というのがあるようだ。
 少量であれば大した影響もないようなのだが、全方位をこの特殊素材で囲まれていてる遺跡の内部ともなると、その影響はバカに出来ないものになるらしい。

 腕に相当の自信のある者なら、遺跡の内部でも魔術を使うこと自体は可能みたいだが……
 それでも、威力や効率に関しては、遺跡の外と比べると著しく低下してしまうようなのだ。
 これが一般的な魔術士となれば言わずもがなである。

 また、この特殊素材は放たれた魔術も無効化する力があるようで、喩えなんとか魔術を行使出来たとしても、威力が一定値以下の場合は、壁などに触れただけで霧散してしまうのだとか。

 要は、この特殊素材は魔術士にデバフを与えると共に、弱い魔術なら弾いてしまうという性質を持っている、ということだった。
 そんな特性もあり、この素材を魔術で破壊するのはほぼほぼ無理、ということらしい。
 
 七号遺跡の瓦礫撤去が思うように進められないのは、こうした魔術効果が弱体化、無効化されてしまうことも影響しているのだという。
 要は、魔術で爆破したり、魔術で運搬したり、といったことがほぼ出来ないから作業効率が低い、ということのようだ。

 余談だが、遺跡で魔石採取を生業としている自由騎士も、専ら剣や斧、槍といった物理攻撃主体の肉体派ばかりで、魔術士は皆無なんだとか。

 更には、この特殊素材を一定量身に着けていたりすると、魔術そのものが利用出来なくなってしまうらしい。
 おいおい、それって……

「抗魔鉱……」
「そっ。スグミくんなら知ってると思うけど、異種族を拉致する時に賊が使ってる魔術封じの首輪……あれの材料が遺跡の石材なんだよね。
 で、遺跡は大体この抗魔鉱で造られてるってわけ」

 まさに、ソアラの首に付けられていたあれである。 

「まっ、そういうことよ。
 遺跡内部の物は石ころ一つでも外に出したら大変ってことで、ノールデン王国ではそうした悪用を警戒して、昔から発見された遺跡は生きている、枯れているを問わず、すべてに結界を施すようにしているの」

 と、それが枯れている遺跡であっても不用意に人を遺跡に入れてはいけない理由なのだと、セレスが話してくれたのだった。

 ちなみに、自由騎士が魔石採取で入っている生きている方の遺跡は、入り口に結界解除用の衛兵が常時立っており、必要に応じて開閉してくれるシステムになっているらしい。
 ホテルのドアマンみたいなもんだな。

 しかも、生きている遺跡には、入り口付近に衛兵の詰め所が設置されており、常に一〇人以上が駐屯し、不審者の接近を警戒しているとのことだった。

 余談だが、国内のすべての遺跡は王家の私有地、つまり直轄地扱いであるため、許可がない者が不用意に近づき過ぎたり、警告を無視したりすると問答無用で殺されることもあるとかなんとか。
 実際、過去にはそうした死亡例もいくつかあるらしい。
 セキュリティが思っていた以上に厳しいんだな……

「だから、奴らがあれをどうやって手に入れているか……そこがちょっと分っかんないんだよねぇ~。
 国内流出しているとは思えないから、多分、他国で発見された遺跡から作ってると思うんだけど……
 もしくは、お国が把握してない遺跡があるか……まぁ、なんにしても傍迷惑なことしてくれるよね、ホント」

 とは、マレアの談である。
 まぁ、抗魔鉱の件はさておき、取り合えずは調査の申請を出して、その鍵とやらをもらわないとな。

 瓦礫を撤去出来るかどうかは、ぶっちゃけ現地に行ってみないことにはなんともなので、出来ればそれでよし、ダメならそれまでだ。
 抗魔鉱は魔術だけでなく、俺の一部のスキルまで無効化してしまうので、それが作業にどれだけ影響するか……そこが一番のネックになるだろう。

 っと、その前に百貫百足の魔改造を終わらせるのが先だな。
 こいつの改造が終わらんことには話にならん。
 ということで、今日一日、せっせと魔改造に勤しむのであった。
 
 
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