最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

文字の大きさ
303 / 353

三〇四話 

しおりを挟む

 なんてこともあったが、その後、結局は全員分のトロッコを作って速やかに移動を完了。
 徒歩では片道三〇分くらい掛かっていたが、トロッコなら一〇分とかからなかったな。
 下り坂も相まって、ちょっとしたソリ遊び気分で滑り降りてしまった。
 まぁ、多少ガタガタと揺れたのは気になったが、それくらいか。
 一応、トロッコ内にはムッションを敷き詰めておいたので、痛いということもなかったしな。
 
 その後、一番の目的である百貫百足の取り出しも、調整後は特に何の問題も起きることなく、無事完了。
 終わってしまえばあっけないものである。

 というわけで、早速三人で百貫百足の内部に乗り込むことに。

 余談だが、百貫百足への乗り込み、また退出には明確に順番が決められていた。
 乗る時は、セレス、マレア、俺の順であり、出るときは真逆の俺、マレア、セレスの順である。
 というのも、昨日の改造作業時に、ちょっとした事故が起きたのだ。
 
 空間拡張の改造が一通り終了し、次は内装の改造に取り掛かろうとした時のことだ。
 百貫百足は出入り口が背中、つまり潜水艦の様に、上部にハッチが設けられており、そこから梯子を使って内部に乗り込む仕様になっていた。
 で、俺が内部で作業している時に、セレスも中を見たいというので、その時は特に何も考えずに許可を出した。
 そう、安易に許可を出してしまったのだ……

 百貫百足は、初めから中に乗り込むことを前提にした作りではない為、所々でかなり無理をした構造をしている。
 その一つが乗り込み用のハッチだった。
 どんな無理をしていたかというと、このハッチ、とにかく狭いのだ。
 俺の肩幅いっぱいだからな。成人男性が一人ギリギリ通れる狭さ、とそう想像すれば、その入り口がいかに狭いか理解できよう。

 で、そんな狭い入り口を、セレスはあろうことかスカート・・・・で入って来てしまったのだ。
 
 次に何が起きたかといえば、もう言葉にする必要もないのだが、案の定ハッチにスカートが引っ掛かり、ひくっり返った傘状態に。
 内部に居た俺からすると、天井から少女の下半身が生えているという、シュールな光景を目の当たりにすることとなったわけだ。

 これに慌てたセレスが、咄嗟にスカートを戻そうと梯子から手を放してしまい、バランスを崩して落下。
 俺も急いで受け止めようと、セレスの下へと飛び込んだのはいいのだが、この虚弱な体で落下する少女を受け止めるなんて芸当が出来るはずもなく、あえなくセレスの尻の下敷きになった、というようなことがあったのだ。

 俺がセレスの尻の下敷きになった甲斐もあってか、セレスにケガがなかったのだけは不幸中の幸いである。
 代わりに、俺がHPの半分くらいが吹っ飛ぶ程の大ダメージを食らったがな。

 とまぁ、そんなことがあったので、乗り込む順番が明確化された、というわけだ。
 昨日と同じ轍を踏まないよう、今回の探索ではセレスもズボンスタイルでの参戦ではあるが、この順番は厳守されることとなっている。

 スカートといえば、マレアは相も変わらずのメイド服スタイルだがな。
 今日、出発前にセレスが、自身の経験を踏まえたうえでズボンにした方がいいと指摘をしていたが、肝心のマレアはというと、見られても減るもんじゃないから別にいいと、あっけらかんに答えていた。
 なんなら見る? とか言って、スカートを自らたくし上げようとしたので、セレスの手前ということもあり教育的指導として一発ブン殴っておいた。

 俺は真の男女平等主義者なので、場合によっては女であろうと平気で手を打上げるぞっ!

 まぁ、俺の力で殴ったところで、マレアにとっては痛くもかゆくもないだろうけど。 
 と、昨日と今朝の話はさておいて。
 
 百貫百足に乗り込んだあと色々と確認したが、空間保持に必要なMP消費量が三倍程度増加していること、あとエテナイトと同じく操作感度が低下していること以外は、特に問題はなさそうだった。

 この空間拡張を維持するためのMPは、キャリッジホーム同様、クリスタルケージというMPを外部保存しておくアイテムを利用していた。
 なので、クリスタルケージに定期的にMPの補給をしていれば問題ないが……

 ただ、消費量が三倍というのは想定より多く、それはつまり、通常時に比べ単純に三倍の頻度での補給が必要になる、ということでもあった。
 消費量事態は然して問題ではないのだが、頻繁に補給するのもそれはそれで面倒だなと、MPの供給優先をクリスタルケージから俺個人へと設定変更することにした。
 これなら、基本は俺からの供給となるため、クリスタルケージのMP消費をかなり抑えることが出来る。
 俺からの供給が断たれた場合のみ、クリスタルケージから供給すればいいわけだからな。
 結果、クリスタルケージへの補給の回数が減り、手間が省けるという寸法だ。

「よし、こっちは問題なさそうだな。そっちはどうだ?」

 自分の確認が終わったところで、別の場所で確認作業をしていたセレスへと声を掛ける。

「ええ、こっちも問題ないみたいね。全部綺麗に映っているわ」

 と、そう答えるセレスの下へと足を運ぶ。
 場所にして、前進方向の一番前。そこがセレスの指定席となる場所だ。
 で、そこには壁一面に合計六枚の大型パネルが設置され、そのパネルには外部の様子が映し出されていた。
 これらはすべて、百貫百足の目を通して見えている光景である。

「おお、上手くいってよかったよかった」

 ただし、マキナバハムートに利用されている様な真映鏡しんえいきょう虚映鏡きょえいきょうといった撮影用のアイテムを使ったものではない。
 これは、古いタイプの潜水艦に使われていたような潜望鏡の様に、百貫百足の眼球が写した光景を、光学的にここまで引っ張って来たものだ。
 とはいえ、完全に物理だけで構成しているわけではなく、要所要所でスキルによる補強をしていたので、遺跡内で上手く機能するかは実際に確認するまでは未知数だったのだが、結果的には上手く稼働したようである。

 このモニタールーム的な場所は、セレスの要望によって急遽制作した場所だった。
 外の風景を見るだけなら、俺の【感覚共有シェア・センス】系のスキルを使えば済む話ではあるのだが、これには一つ大きな欠点があった。
 それが、視界が重複してしまう、という点だ。
 自分の視界と共有している別視点の視界、それが常に一つの視界に二重写しになってしまうのだ。
 これでは、手元で何かメモを書こうとした時でも、別視界が写り込んでしまうことになり、碌に文字すら書けなくなってしまうため非常に邪魔になるのだ。

 なにせ、セレスの目的は遺跡の研究だからな。メモの一つも碌に取れないなど、論外でしかない。

 その都度、俺がオン・オフを制御すればいいといえばその通りだが、それはそれでまた面倒な話だ。
 ということで、互いに面倒な部分を取っ払った結果、こういう形で落ち着いたのである。
 
 セレスは一通りの確認作業を終了すると、モニターの前に用意された特等席にその小さな尻を下す。
 昨日はあれに下敷きにされたんだよなぁ……と、ふとそんなことを思い出す。

 今なら椅子の気持ちが少しは分かる気がするよ……

「さぁ! スグミ行くわよっ!」

 と、椅子に座り安全の為のシートベルトを締めたところで、セレスが意気揚々とそう宣言するのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...