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三〇四話
しおりを挟むなんてこともあったが、その後、結局は全員分のトロッコを作って速やかに移動を完了。
徒歩では片道三〇分くらい掛かっていたが、トロッコなら一〇分とかからなかったな。
下り坂も相まって、ちょっとしたソリ遊び気分で滑り降りてしまった。
まぁ、多少ガタガタと揺れたのは気になったが、それくらいか。
一応、トロッコ内にはムッションを敷き詰めておいたので、痛いということもなかったしな。
その後、一番の目的である百貫百足の取り出しも、調整後は特に何の問題も起きることなく、無事完了。
終わってしまえばあっけないものである。
というわけで、早速三人で百貫百足の内部に乗り込むことに。
余談だが、百貫百足への乗り込み、また退出には明確に順番が決められていた。
乗る時は、セレス、マレア、俺の順であり、出るときは真逆の俺、マレア、セレスの順である。
というのも、昨日の改造作業時に、ちょっとした事故が起きたのだ。
空間拡張の改造が一通り終了し、次は内装の改造に取り掛かろうとした時のことだ。
百貫百足は出入り口が背中、つまり潜水艦の様に、上部にハッチが設けられており、そこから梯子を使って内部に乗り込む仕様になっていた。
で、俺が内部で作業している時に、セレスも中を見たいというので、その時は特に何も考えずに許可を出した。
そう、安易に許可を出してしまったのだ……
百貫百足は、初めから中に乗り込むことを前提にした作りではない為、所々でかなり無理をした構造をしている。
その一つが乗り込み用のハッチだった。
どんな無理をしていたかというと、このハッチ、とにかく狭いのだ。
俺の肩幅いっぱいだからな。成人男性が一人ギリギリ通れる狭さ、とそう想像すれば、その入り口がいかに狭いか理解できよう。
で、そんな狭い入り口を、セレスはあろうことかスカートで入って来てしまったのだ。
次に何が起きたかといえば、もう言葉にする必要もないのだが、案の定ハッチにスカートが引っ掛かり、ひくっり返った傘状態に。
内部に居た俺からすると、天井から少女の下半身が生えているという、シュールな光景を目の当たりにすることとなったわけだ。
これに慌てたセレスが、咄嗟にスカートを戻そうと梯子から手を放してしまい、バランスを崩して落下。
俺も急いで受け止めようと、セレスの下へと飛び込んだのはいいのだが、この虚弱な体で落下する少女を受け止めるなんて芸当が出来るはずもなく、あえなくセレスの尻の下敷きになった、というようなことがあったのだ。
俺がセレスの尻の下敷きになった甲斐もあってか、セレスにケガがなかったのだけは不幸中の幸いである。
代わりに、俺がHPの半分くらいが吹っ飛ぶ程の大ダメージを食らったがな。
とまぁ、そんなことがあったので、乗り込む順番が明確化された、というわけだ。
昨日と同じ轍を踏まないよう、今回の探索ではセレスもズボンスタイルでの参戦ではあるが、この順番は厳守されることとなっている。
スカートといえば、マレアは相も変わらずのメイド服スタイルだがな。
今日、出発前にセレスが、自身の経験を踏まえたうえでズボンにした方がいいと指摘をしていたが、肝心のマレアはというと、見られても減るもんじゃないから別にいいと、あっけらかんに答えていた。
なんなら見る? とか言って、スカートを自らたくし上げようとしたので、セレスの手前ということもあり教育的指導として一発ブン殴っておいた。
俺は真の男女平等主義者なので、場合によっては女であろうと平気で手を打上げるぞっ!
まぁ、俺の力で殴ったところで、マレアにとっては痛くもかゆくもないだろうけど。
と、昨日と今朝の話はさておいて。
百貫百足に乗り込んだあと色々と確認したが、空間保持に必要なMP消費量が三倍程度増加していること、あとエテナイトと同じく操作感度が低下していること以外は、特に問題はなさそうだった。
この空間拡張を維持するためのMPは、キャリッジホーム同様、クリスタルケージというMPを外部保存しておくアイテムを利用していた。
なので、クリスタルケージに定期的にMPの補給をしていれば問題ないが……
ただ、消費量が三倍というのは想定より多く、それはつまり、通常時に比べ単純に三倍の頻度での補給が必要になる、ということでもあった。
消費量事態は然して問題ではないのだが、頻繁に補給するのもそれはそれで面倒だなと、MPの供給優先をクリスタルケージから俺個人へと設定変更することにした。
これなら、基本は俺からの供給となるため、クリスタルケージのMP消費をかなり抑えることが出来る。
俺からの供給が断たれた場合のみ、クリスタルケージから供給すればいいわけだからな。
結果、クリスタルケージへの補給の回数が減り、手間が省けるという寸法だ。
「よし、こっちは問題なさそうだな。そっちはどうだ?」
自分の確認が終わったところで、別の場所で確認作業をしていたセレスへと声を掛ける。
「ええ、こっちも問題ないみたいね。全部綺麗に映っているわ」
と、そう答えるセレスの下へと足を運ぶ。
場所にして、前進方向の一番前。そこがセレスの指定席となる場所だ。
で、そこには壁一面に合計六枚の大型パネルが設置され、そのパネルには外部の様子が映し出されていた。
これらはすべて、百貫百足の目を通して見えている光景である。
「おお、上手くいってよかったよかった」
ただし、マキナバハムートに利用されている様な真映鏡や虚映鏡といった撮影用のアイテムを使ったものではない。
これは、古いタイプの潜水艦に使われていたような潜望鏡の様に、百貫百足の眼球が写した光景を、光学的にここまで引っ張って来たものだ。
とはいえ、完全に物理だけで構成しているわけではなく、要所要所でスキルによる補強をしていたので、遺跡内で上手く機能するかは実際に確認するまでは未知数だったのだが、結果的には上手く稼働したようである。
このモニタールーム的な場所は、セレスの要望によって急遽制作した場所だった。
外の風景を見るだけなら、俺の【感覚共有】系のスキルを使えば済む話ではあるのだが、これには一つ大きな欠点があった。
それが、視界が重複してしまう、という点だ。
自分の視界と共有している別視点の視界、それが常に一つの視界に二重写しになってしまうのだ。
これでは、手元で何かメモを書こうとした時でも、別視界が写り込んでしまうことになり、碌に文字すら書けなくなってしまうため非常に邪魔になるのだ。
なにせ、セレスの目的は遺跡の研究だからな。メモの一つも碌に取れないなど、論外でしかない。
その都度、俺がオン・オフを制御すればいいといえばその通りだが、それはそれでまた面倒な話だ。
ということで、互いに面倒な部分を取っ払った結果、こういう形で落ち着いたのである。
セレスは一通りの確認作業を終了すると、モニターの前に用意された特等席にその小さな尻を下す。
昨日はあれに下敷きにされたんだよなぁ……と、ふとそんなことを思い出す。
今なら椅子の気持ちが少しは分かる気がするよ……
「さぁ! スグミ行くわよっ!」
と、椅子に座り安全の為のシートベルトを締めたところで、セレスが意気揚々とそう宣言するのだった。
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