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その1
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その瞬間、僕の胸は異様なまでに高鳴った。これほど美しい少女に出会ったことなんてなかった。もう少し手を伸ばしたら届くだろうか?どうして木陰に隠れていなくてはならないのか?そんな疑問を、僕は幼いながらも頭の中で考えていた。
女の子にしては少し身体が太いだろうか?でも、かえってその方が健康的なのだろう。決して絹のように透き通っているわけではない。太陽の光を一心に浴びて、少しばかり褐色じみている。そうだ、ずっと家の中にいても仕方がない。子供は外で遊ぶ生き物と決まっているのだ。
そんなことも分からないんだったら、親として失格じゃないのか?僕は、少女とその父親らしき大柄な大人が会話しているのを、遠くから見ていた。
「貴様はアッシュ家の傷物だ!とっとと出ていけ!」
男はそう言って、少女を置き去りにしようとした。
「お父様!お待ちくださいませ!リリーが悪うございました!もう一度……私に婚約のチャンスを頂けないでしょうか!」
少女の名はリリーと言うみたいだ。男は振り返って、鬼のような形相でリリーを睨み付けた。
「婚約だと?貴様みたいな子供の相手など、もういないのだ!どうして、私の言いつけを守らなかったのだ?貴様は、王家に嫁ぐことが最初から決まっていたのだ!それなのに……貴様はその自覚が全くなかった!外で遊びたいだの、気に入った菓子を食べるだの、本当にろくでもない娘だ!貴様のように干からびた女を貰ってくれる奴なんて、この世界にはもういないだろうさ!」
「お父様!!!」
リリーは必死に涙を堪えていた。自分の想いを何とかして、父親に伝えようと、懸命に涙を堪えていたのだ。
「もう親でも子でもないんだ!好きにしろ!このまま死んでしまえばいい!」
リリーは力尽きて、男を追いかけることすらできなかった。ただ、
「ももも……もうしわけ……ございません……」
と、涙ながらに男の行く方を向いて言った。
少女が名門アッシュ家の令嬢として育ったリリーだと知った僕は、それでも、放っておくことができなかった。ものすごい緊張で、胸が破裂しそうだった。
それでも、僕はリリーと話をしてみたいと思った。これが、恋なのかどうか、その時はよく分からなかった。でも、いくらアッシュ家に到底及ばないとしても、一応は田舎貴族の倅だから、口をきいてもいいと思った。
「こんにちは。僕の名前はハルクって言うんだ。よろしくね……」
思い返すと、こんな話し方ではダメだった。それでも、リリーの心を少しでもつなぎとめることはできたのだ。
リリーは何も言わずに、僕の胸に飛び込んできた。僕は浮かれていて、この瞬間、恋は実ったのだと思った。リリーはしばらく何も言わなかった。ただ泣いていた。
泣きっぱなしのリリーを、僕は優しく抱きしめた。
女の子にしては少し身体が太いだろうか?でも、かえってその方が健康的なのだろう。決して絹のように透き通っているわけではない。太陽の光を一心に浴びて、少しばかり褐色じみている。そうだ、ずっと家の中にいても仕方がない。子供は外で遊ぶ生き物と決まっているのだ。
そんなことも分からないんだったら、親として失格じゃないのか?僕は、少女とその父親らしき大柄な大人が会話しているのを、遠くから見ていた。
「貴様はアッシュ家の傷物だ!とっとと出ていけ!」
男はそう言って、少女を置き去りにしようとした。
「お父様!お待ちくださいませ!リリーが悪うございました!もう一度……私に婚約のチャンスを頂けないでしょうか!」
少女の名はリリーと言うみたいだ。男は振り返って、鬼のような形相でリリーを睨み付けた。
「婚約だと?貴様みたいな子供の相手など、もういないのだ!どうして、私の言いつけを守らなかったのだ?貴様は、王家に嫁ぐことが最初から決まっていたのだ!それなのに……貴様はその自覚が全くなかった!外で遊びたいだの、気に入った菓子を食べるだの、本当にろくでもない娘だ!貴様のように干からびた女を貰ってくれる奴なんて、この世界にはもういないだろうさ!」
「お父様!!!」
リリーは必死に涙を堪えていた。自分の想いを何とかして、父親に伝えようと、懸命に涙を堪えていたのだ。
「もう親でも子でもないんだ!好きにしろ!このまま死んでしまえばいい!」
リリーは力尽きて、男を追いかけることすらできなかった。ただ、
「ももも……もうしわけ……ございません……」
と、涙ながらに男の行く方を向いて言った。
少女が名門アッシュ家の令嬢として育ったリリーだと知った僕は、それでも、放っておくことができなかった。ものすごい緊張で、胸が破裂しそうだった。
それでも、僕はリリーと話をしてみたいと思った。これが、恋なのかどうか、その時はよく分からなかった。でも、いくらアッシュ家に到底及ばないとしても、一応は田舎貴族の倅だから、口をきいてもいいと思った。
「こんにちは。僕の名前はハルクって言うんだ。よろしくね……」
思い返すと、こんな話し方ではダメだった。それでも、リリーの心を少しでもつなぎとめることはできたのだ。
リリーは何も言わずに、僕の胸に飛び込んできた。僕は浮かれていて、この瞬間、恋は実ったのだと思った。リリーはしばらく何も言わなかった。ただ泣いていた。
泣きっぱなしのリリーを、僕は優しく抱きしめた。
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