アポクリファの黄昏

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第一章

赤き空 その2

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「俺がお前らを地獄まで叩き落してやる。どうした?怖いのか?お前らは神様に祈ることしかできねえっていうのか?笑わせてくれるな!」

 それにしてもどうして?父はこれほど勇ましいの?
 彼を突き動かしているものは何?

「おぅっ、隆司!そんなところにいたのか!」
 父は私がすぐ近くにいることに気が付いた。
「いいか、戦争って言うのは、相手の大将を殺せばそれでいいんだ。大将は……間違いねぇ、あの一番でけえトンボに乗っているんだ。隆司!あのトンボを打ち落とすぞ!」
「父さん……気を確かに持ってください。どうやって打ち落とすことができましょうか?」
「できるに決まってるさ!あいつらはみんな不届きものだ。お天道様は常に正しい者の味方だ。俺が死んで……隆司、お前がそれをやってくれたなら……俺はもう満足だぁ!」
「そんなこと……」
「時間がないんだ!隆司、有りっ丈の鉄砲と竹やりを持ってこい。空まで届けてやるぞ!ごちゃごちゃ言わずにすぐ準備しろ!」
「父さん……!」
「このまま村が無くなってもいいっていうのか?隆司!お前の育った大切な故郷じゃねえか!それを……こんなふうにぶっ壊されて……悔しくはねえのか!」

 怪物が次々と増殖し、牙をむく。

 通い慣れた学校……。跡形もなく消滅した。
 よく買い物をした商店街が……間もなく消滅しようとしている。秘密基地を作った雑木林は……勢いよく燃えている……。


 碁石浜は?あそこは無事だろうか?
 フィッシャーは……?

「お前は……俺と正反対でガキの時分から優しかった……。俺と正反対で泣き虫だった……。俺と正反対でバカだった……。物心ついた頃には、俺の言うことを聞かなくなった。でもなぁ……!」

 あの父が……空を見上げて泣いている。
 自分の死を悟ったから?怖気づいたから?

「俺も隆司も………この村で育ったんだぁ!」

 私は今まで戦いを好まなかった。戦いに意義を見出さなかった。父の言う通り、バカで泣き虫で……優しかった。人が、動物が、植物が……その姿をとどめたまま命を終えていく様を見続けてきた。私は無性に泣き叫んだ。

「一度しかない命だ。好きなように使っていいが、決して無駄にはするなよ。お天道様はいつもお前を照らしている。笑って手を振り返してやれ。それが自然にできればいいんだ」

 父と一緒に碁石浜を歩いた日々……。それはあの夏の思い出だった。

 
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