アポクリファの黄昏

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第一章

夜の情景 その2

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 奇遇だ。
 私と同じことを言っている。星たちの舞踏会……。
「シャーロットが仕切りに言っていました。善い行いをした者は神様の下に集められ、次の世界へ飛んでいくんです。夜空は宇宙に住む同胞の魂が行きかう場所です。残念ながら私は一度地獄にでも落ちなければなりませんかね。神様がインストールした性とはいえ、善い行いではないでしょう?あなたはそう思いますよね」
「えっ……ええ、はい」
「あなたは私と違って人を殺していない。善良な市民だ。一足早く星になるでしょう。私の仲間があなたの命を奪うことがあっても……そしたら星になって戦いを終わらせればいい」

 戦いを終わらせる?私一人で?
 理想だ。現実逃避したいだけだ。そんなメルヘンは存在しない。
「間もなく始まりますよ……」
 フィッシャーはにこりと微笑んだ。始まるって……。何が…………?


 まさか……!


「始まるって…………何がですか!」

 私はその答えを悟った。フィッシャーの口からすでに聴いている!
 今夜、アメリカ空軍が本土に奇襲をしかけるということだ。ハワイと東京を直線で結ぶと片取村は………!

「くそっ……!こんなことしてる場合じゃない!」
「お気をつけて……!あなたには神様の御加護が……」

 神様のご加護があります! God bless you!
 あぁ、いい響きだ。みんな丸めて天国にいければいいことだ!碁石浜が……片取村が……私が……全てが終わろうとしているんだ!

 あの分からず屋の父に……何か伝えることがあれば……いまさら……時間がない!

 実家まで全速力で駆けた。大量の爆弾を積んだ戦闘機の軍団がすぐそこに迫っていることには気が付かなかった。
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