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パーティー その2

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そして、皇帝陛下は、立ち上がって、

「この大バカ者が!!!」

と叫んだ。周囲の貴族たちも、この一瞬の出来事を疑った。到底信じることの出来ない現実だった。聖女をないがしろにして、他の女と婚約する……一歩間違えなくても、大スキャンダルだった。中には、お抱えのゴシップ記者を呼ぼうとする者まで現れるほどだった。

「皇帝陛下、私は本気なのです!」

「貴様の本気など聞いておらん!!!貴様は聖女様との婚約を不意にしたのだな!!!おのれ……この場で切り捨ててくれるわ!!!」

皇帝陛下は逆上を抑えることができなかった。

「覚悟致せ!!!」

皇帝陛下が懐から剣を抜き、ハマーの元へ駆け寄ろうとした瞬間、

「お待ちください!!!」

と、声がした。そして、パーティーの司会がマリアの入場を宣言した。扉が開き、この世界の美しさを凝集した娘が、煌びやかな衣装に身を包んで、ゆっくりと入ってきた。この姿は、皇帝陛下にも映った。

「貴様たちの策略か!!!二人まとめて切り捨ててくれるわ!!!」

皇帝陛下が、今度はマリアの元に急いだ。

「お待ちなさいと言っているでしょう!!!」

マリアの背後から、クリスが姿を見せた。

「はあっ…………聖女様!!!」

皇帝陛下は、聖女クリスの姿を見て、剣を懐に納めた。

「あのお方が聖女様なのか?」

会場がざわついた。皇帝陛下はすぐさま、貴族たちの方を向いて、

「各々方!!!聖女様の御出座にございますぞ!!!頭をお下げなさい!!!」

皇帝陛下に促されて、貴族たちは、はっと我に返った。自分たちがいかに不敬なことをしているのか、気がついた。


「皇帝陛下……この者たちの言い分をどうか聞いてください」

クリスは、皇帝陛下に頼んだ。
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