1 / 37
その1
しおりを挟む
それは、華々しいロイヤルウェディングを祝うパーティーでの出来事だった。いつになく気難しい顔で会場の中央に居合わせた第一王子のバビンスキーは、他の貴族たちに分かるように、あからさまな顔で、このパーティーには何も意味がないと言っているようだった。
暫くして、高位の侍従が、バビンスキーの元により、何かを耳打ちした。すると、バビンスキーは、
「それはまことか!!!」
と、大声で子供のように、はしゃいだ。これを聞いて、招待された客人たちは、ますます謎が深まるばかりだった。
バビンスキーの座っている場所から一番近いドアがゆっくりと開き、そこから優美な令嬢がやって来た。これを見て、客人たちはようやく納得したようだった。つまり、ロイヤルウェディングの相手、第一王子バビンスキーの婚約者に決まった令嬢マリアが、ようやく現れたのだと分かった。本来、このような式典には最初から夫婦が揃っているものなのだが、何らかの理由でマリアが遅れて到着し、その到着をバビンスキーが歓迎した……誰もがそう思っていた。
「お待ちになって!!!どうして、私ではないのですか!!!」
と、別の方から、今度は令嬢の声が聞こえた。客人たちは、そちらの方を見た。その容姿は……決して悪くはないのだが、婚約者にはさすがに劣る……みんながそう思っていた。
「おいおい、一体どうしたんだよ?どこの誰かは知らないが……お嬢さん?無暗に声をかけないほうがいいぜ?なんてったって、相手は第一王子のバビンスキー様と、その婚約者である公爵令嬢のマリア様なんだから……」
令嬢がバビンスキーと令嬢の元へ歩み寄るのを、何人かの客人が注意した。
「そんなこと、分かってるわよ!だって、私がマリアなんですから!!!」
次の瞬間、辺りの客人たちは、
「なんだって?」
と騒ぎ立てた。
「マリア様ってのは……あちらにいらっしゃる御令嬢じゃないのか?君もマリアと言うのか?そうかそうか、それはめでたいものだなあ。王妃様と同じ名前だなんて、いやあ、めでたいめでたい!」
しかしながら、客人たちは、この事態の重さに気が付いていなかった。当然のことである。この令嬢こそ、正真正銘、第一王子バビンスキーの婚約者である公爵令嬢マリアだったのだ。
「マリア……君ってやつは……」
第一王子バビンスキーは、マリアを見て、ちっ、と舌打ちをした。
「バビンスキー様。そちらにいらっしゃる令嬢様がどなたか、ご説明願いましょうか?」
マリアの剣幕に負けて、バビンスキーの横を歩いていた令嬢は、すかさず、バビンスキーの後ろに隠れた。
「やはり……噂は本当だったのか……」
バビンスキーはそう言った。
「噂ですって?いったい、何の噂だと言いますの?」
マリアは余計に声を張り上げた。
「私の口から一々説明しないといけないのかね?全く……困ったものだ……。今ここで、私が説明すれば、君の醜態を世間様に曝すことになるのだぞ?それがいやだったら、潔くここから出ていきたまえ!!!」
バビンスキーはマリアに忠告した。
「そんなこと、できません!!!」
しかしながら、マリアは食い下がらなかった。
「そうかそうか……どうやら、君は相当の愚か者のようだな。まあ、いいさ。お望みとあらば、君がこちらにいらっしゃる令嬢チャーリーに何をしたのか、彼女の口から説明してもらうことにしようじゃないか?」
バビンスキーがこのように言うと、近くにいたバビンスキーの友人たちも寄って来た。
「彼らは一種の証人だ。君が何を言ったところで、君の罪は覆ることはないのだよ。さあ、チャーリー。怖がらなくて大丈夫だからね、令嬢マリアの犯した罪を全てぶちまけるのだ!!!」
勇敢なるバビンスキーに扇動される形で、チャーリーはもう一度姿を現した。そして、ものすごい形相のマリアに対して、臆することなく主張を始めた。
「こちらにいらっしゃいますマリア様は……公爵令嬢様として一目置かれる存在ではありました。ですから、マリア様が何か命令をなさりますと、そのコマのような役割を致します令嬢の皆様が存在するわけでございまして……自分よりも成績の優れた令嬢様であったりとか、自分よりも容姿の優れた令嬢様たちを排除しようと試みることがあったのでございます!!!」
「そんなこと……私がするわけないじゃない!!!」
「マリア!!!口を慎め!!!この者たちも、マリアがそのようなことを行っていた、と証言しているのだ!!!」
「一体、この方たちは何者なんですか?私、学園でこのような方たちを見たことなんてございませんわ!!!ですから、それは全部ウソなのです!!!」
マリアの主張があまりにも熱を帯びたせいか、チャーリーは再びバビンスキーの背後に隠れてしまった。
「チャーリー!!!ほら、見た通りだろう!!!現に、君はいま、チャーリーを虐めているじゃないか!!!前にも、こんな感じでか弱いチャーリーを虐めていたのだろう!!!」
「ですから、そんなことは一切ございません!!!」
マリアは一歩も譲らなかった。犯していない罪を認めることなんてできなかった。そして……これをもとに、一方的に婚約破棄を通告しようとするバビンスキーのやり方が気に食わなかった。
「どうする?マリア。君の罪はもう明白なのだ。しかしながら、チャーリーは君と違って非常に優しい少女なのだ。君が犯した罪を正直に認め、この場で謝罪をすれば、これ以上の処罰は望まない、と言っている。どうだ、ここで謝れば、君の爵位については、手を触れないこととしよう」
マリアは、バビンスキーの提案した取引に、余計腹が立った。
「犯していない罪をでっち上げ、それについて謝る必要はございません。ですから、私は謝罪致しません!!!」
マリアは強硬に押し切ろうとした。これを聞いたバビンスキーは、
「相変わらず強情な女だ!!!だから、婚約破棄してやるのさ!!!」
と言い放った。
マリアのテンションは高まる一方だった。その声が大きくなって、驚いた侍従たちが、次々にやってきたりもした。だが、マリアは何も慌てなかった。
「バビンスキー様……。婚約破棄なさりたいとおっしゃるのでしたら、それはそれで結構でございます。私は、あなた様が婚約破棄したい理由を心得ているつもりでございます。ですから、どうぞ、ご遠慮なさらずに婚約破棄を宣言してください。ただ……その理由に関しては、このような姑息な手段を用いるのではなく、きちんと説明をして下さい。私が望んでおりますのは、それだけです……」
これを聞いたバビンスキーは少し考えた。しかし、チャーリーが必死にバビンスキーのシャツの裾を引っ張るので、考えを変えるつもりは無くなった。
「ハハハハ……君が何を言おうと、犯した罪が変わることはないのだ。そして……その罪を認めず、謝ることもしない。君はもはや、貴族でいる資格はないようだ!」
バビンスキーは宣言した。心の中の葛藤……それはある種の真実だった。マリアとの婚約は、半ば政略結婚によるものだった。しかしながら、王子が両親の決めた話に口を挟むことはできない。個人の意思なんて関係がない。貴族の婚約とはそう言うものだった。そして、婚約者マリアは、確かに不釣り合いだった。バビンスキーも、そして、マリアも、互いを認め合うことができなかった。
その成れの果てが婚約破棄に帰結する……当たり前の展開だった。でも、結局、不幸になるのは、婚約者であるマリアの方だった。
「今ここに宣言をする。私はこの場で公爵令嬢マリアの爵位を剥奪する!!!」
貴族にとって、爵位の剥奪は死を意味していた。つまり、何も活動できなくなるのだ。かといって、いまさら平民のような暮らしをすることも容易ではない。自分で生活する術を何も身につけていないからだ。
しかしながら、唯一の救いと言えようか、マリアは普通の貴族と違って、自らの生活を演出することに長けていた。炊事洗濯など、生活技能は一通り身につけていたし、その高いコミュニケーション能力を生かして、新しい人生を始めることができる……そんなことを一瞬期待した。
「あら、そうなんですか……。それはそれでようございますよ。だいたい、あなた様と婚約したら、後継ぎの問題とか、両親の顔色伺いだとか、王家のしきたりだとか、いちいち神経質になってしまうでしょう!とても健康的な生活とは言えませんわ!私は確かに両親に感謝しておりますし、バビンスキー様、そして、バビンスキー様のご両親にも一度は感謝しました。ですが、私は人形じゃありませんわ!王家の操り人形になるくらいでしたら、私は喜んで平民の元に行きます。そこで、新たな人生を歩み出しますわ!!!こんなバカみたいな話に巻き込まれるくらいだったら、貴族なんて止めて正解ですわよ!!!」
マリアの主張は筋が通っていて、会場に居合わせた客人の中には、マリアの言っていることが正しいと考える者も一定数いた。そして、そのことに薄々気が付いたバビンスキーは、マリアに太い釘を刺した。
「おい、マリアよ。誰が君に自由を与えると言ったのだ?爵位を奪うだけではないぞ。これから、君を監禁するのだ!」
「監禁ですって?」
「そうだ、王宮の近くの森に、君専用の監禁小屋を作るから、そこで生活するんだ。ああ、とは言っても、君は外に出ることはできない。一生、部屋の中で生活するんだ!そうだな……君が罪を認めて謝罪する気持ちが芽生えたとき、解放してあげよう。それでどうだ???」
どこまでも意地汚い……マリアはバビンスキーのことをそう思った。だが、今のままでは確かに罪人なのだから、このような仕打ちは仕方ないと思った。
「分かりました。良いでしょう。その代わり、私は決して罪を認めるつもりなんてございませんから、一生監禁小屋で生活することになると思いましょうが……生活のための食事とか、衣装とか、そのようなものは永久的に支給してくださるのですね?」
マリアがこのように質問すると、バビンスキーは、苦虫をかみつぶしたかのような表情に一瞬なった。しかしながら、よくよく考えてみれば、今回の婚約破棄の全貌をあからさまに暴かれず終結させられると思えば、それはそれで悪くない話だと思った。
「まあ、いいだろう。しかしながら、人は常に自由を求める生き物だ。いずれ、罪を認めることになると思うがな……」
そう言って、バビンスキーは、本来ならば自分の警護に当たる侍従たちを何人か呼びつけて指示を出した。
「元公爵令嬢のマリーを一時的に隔離しろ。そして、隔離小屋が完成したら、そこまで移送するんだ」
侍従たちはさっそくマリアの身柄を拘束し、ひとまず牢屋にぶち込んだ。
隔離小屋は2日後に完成し、マリアは完成してすぐに、移送された。
小屋の鍵が閉められる前に、侍従たちが最後の説明をマリアにした。
「申し上げておきます。バビンスキー様のご提案により、食事や衣装に関するご要望につきましては、柔軟に対応なさるとのことであります。また、隔離解除の条件でございますが、この度の罪を認め、正式に謝罪することとなっております」
「ありがとう。承知しました」
マリアは、ここまで手厚く移送してくれた侍従たちに礼を述べた。侍従たちは、
「お元気で」
と言い残し、ドアを閉め、鍵をかけた。
暫くして、高位の侍従が、バビンスキーの元により、何かを耳打ちした。すると、バビンスキーは、
「それはまことか!!!」
と、大声で子供のように、はしゃいだ。これを聞いて、招待された客人たちは、ますます謎が深まるばかりだった。
バビンスキーの座っている場所から一番近いドアがゆっくりと開き、そこから優美な令嬢がやって来た。これを見て、客人たちはようやく納得したようだった。つまり、ロイヤルウェディングの相手、第一王子バビンスキーの婚約者に決まった令嬢マリアが、ようやく現れたのだと分かった。本来、このような式典には最初から夫婦が揃っているものなのだが、何らかの理由でマリアが遅れて到着し、その到着をバビンスキーが歓迎した……誰もがそう思っていた。
「お待ちになって!!!どうして、私ではないのですか!!!」
と、別の方から、今度は令嬢の声が聞こえた。客人たちは、そちらの方を見た。その容姿は……決して悪くはないのだが、婚約者にはさすがに劣る……みんながそう思っていた。
「おいおい、一体どうしたんだよ?どこの誰かは知らないが……お嬢さん?無暗に声をかけないほうがいいぜ?なんてったって、相手は第一王子のバビンスキー様と、その婚約者である公爵令嬢のマリア様なんだから……」
令嬢がバビンスキーと令嬢の元へ歩み寄るのを、何人かの客人が注意した。
「そんなこと、分かってるわよ!だって、私がマリアなんですから!!!」
次の瞬間、辺りの客人たちは、
「なんだって?」
と騒ぎ立てた。
「マリア様ってのは……あちらにいらっしゃる御令嬢じゃないのか?君もマリアと言うのか?そうかそうか、それはめでたいものだなあ。王妃様と同じ名前だなんて、いやあ、めでたいめでたい!」
しかしながら、客人たちは、この事態の重さに気が付いていなかった。当然のことである。この令嬢こそ、正真正銘、第一王子バビンスキーの婚約者である公爵令嬢マリアだったのだ。
「マリア……君ってやつは……」
第一王子バビンスキーは、マリアを見て、ちっ、と舌打ちをした。
「バビンスキー様。そちらにいらっしゃる令嬢様がどなたか、ご説明願いましょうか?」
マリアの剣幕に負けて、バビンスキーの横を歩いていた令嬢は、すかさず、バビンスキーの後ろに隠れた。
「やはり……噂は本当だったのか……」
バビンスキーはそう言った。
「噂ですって?いったい、何の噂だと言いますの?」
マリアは余計に声を張り上げた。
「私の口から一々説明しないといけないのかね?全く……困ったものだ……。今ここで、私が説明すれば、君の醜態を世間様に曝すことになるのだぞ?それがいやだったら、潔くここから出ていきたまえ!!!」
バビンスキーはマリアに忠告した。
「そんなこと、できません!!!」
しかしながら、マリアは食い下がらなかった。
「そうかそうか……どうやら、君は相当の愚か者のようだな。まあ、いいさ。お望みとあらば、君がこちらにいらっしゃる令嬢チャーリーに何をしたのか、彼女の口から説明してもらうことにしようじゃないか?」
バビンスキーがこのように言うと、近くにいたバビンスキーの友人たちも寄って来た。
「彼らは一種の証人だ。君が何を言ったところで、君の罪は覆ることはないのだよ。さあ、チャーリー。怖がらなくて大丈夫だからね、令嬢マリアの犯した罪を全てぶちまけるのだ!!!」
勇敢なるバビンスキーに扇動される形で、チャーリーはもう一度姿を現した。そして、ものすごい形相のマリアに対して、臆することなく主張を始めた。
「こちらにいらっしゃいますマリア様は……公爵令嬢様として一目置かれる存在ではありました。ですから、マリア様が何か命令をなさりますと、そのコマのような役割を致します令嬢の皆様が存在するわけでございまして……自分よりも成績の優れた令嬢様であったりとか、自分よりも容姿の優れた令嬢様たちを排除しようと試みることがあったのでございます!!!」
「そんなこと……私がするわけないじゃない!!!」
「マリア!!!口を慎め!!!この者たちも、マリアがそのようなことを行っていた、と証言しているのだ!!!」
「一体、この方たちは何者なんですか?私、学園でこのような方たちを見たことなんてございませんわ!!!ですから、それは全部ウソなのです!!!」
マリアの主張があまりにも熱を帯びたせいか、チャーリーは再びバビンスキーの背後に隠れてしまった。
「チャーリー!!!ほら、見た通りだろう!!!現に、君はいま、チャーリーを虐めているじゃないか!!!前にも、こんな感じでか弱いチャーリーを虐めていたのだろう!!!」
「ですから、そんなことは一切ございません!!!」
マリアは一歩も譲らなかった。犯していない罪を認めることなんてできなかった。そして……これをもとに、一方的に婚約破棄を通告しようとするバビンスキーのやり方が気に食わなかった。
「どうする?マリア。君の罪はもう明白なのだ。しかしながら、チャーリーは君と違って非常に優しい少女なのだ。君が犯した罪を正直に認め、この場で謝罪をすれば、これ以上の処罰は望まない、と言っている。どうだ、ここで謝れば、君の爵位については、手を触れないこととしよう」
マリアは、バビンスキーの提案した取引に、余計腹が立った。
「犯していない罪をでっち上げ、それについて謝る必要はございません。ですから、私は謝罪致しません!!!」
マリアは強硬に押し切ろうとした。これを聞いたバビンスキーは、
「相変わらず強情な女だ!!!だから、婚約破棄してやるのさ!!!」
と言い放った。
マリアのテンションは高まる一方だった。その声が大きくなって、驚いた侍従たちが、次々にやってきたりもした。だが、マリアは何も慌てなかった。
「バビンスキー様……。婚約破棄なさりたいとおっしゃるのでしたら、それはそれで結構でございます。私は、あなた様が婚約破棄したい理由を心得ているつもりでございます。ですから、どうぞ、ご遠慮なさらずに婚約破棄を宣言してください。ただ……その理由に関しては、このような姑息な手段を用いるのではなく、きちんと説明をして下さい。私が望んでおりますのは、それだけです……」
これを聞いたバビンスキーは少し考えた。しかし、チャーリーが必死にバビンスキーのシャツの裾を引っ張るので、考えを変えるつもりは無くなった。
「ハハハハ……君が何を言おうと、犯した罪が変わることはないのだ。そして……その罪を認めず、謝ることもしない。君はもはや、貴族でいる資格はないようだ!」
バビンスキーは宣言した。心の中の葛藤……それはある種の真実だった。マリアとの婚約は、半ば政略結婚によるものだった。しかしながら、王子が両親の決めた話に口を挟むことはできない。個人の意思なんて関係がない。貴族の婚約とはそう言うものだった。そして、婚約者マリアは、確かに不釣り合いだった。バビンスキーも、そして、マリアも、互いを認め合うことができなかった。
その成れの果てが婚約破棄に帰結する……当たり前の展開だった。でも、結局、不幸になるのは、婚約者であるマリアの方だった。
「今ここに宣言をする。私はこの場で公爵令嬢マリアの爵位を剥奪する!!!」
貴族にとって、爵位の剥奪は死を意味していた。つまり、何も活動できなくなるのだ。かといって、いまさら平民のような暮らしをすることも容易ではない。自分で生活する術を何も身につけていないからだ。
しかしながら、唯一の救いと言えようか、マリアは普通の貴族と違って、自らの生活を演出することに長けていた。炊事洗濯など、生活技能は一通り身につけていたし、その高いコミュニケーション能力を生かして、新しい人生を始めることができる……そんなことを一瞬期待した。
「あら、そうなんですか……。それはそれでようございますよ。だいたい、あなた様と婚約したら、後継ぎの問題とか、両親の顔色伺いだとか、王家のしきたりだとか、いちいち神経質になってしまうでしょう!とても健康的な生活とは言えませんわ!私は確かに両親に感謝しておりますし、バビンスキー様、そして、バビンスキー様のご両親にも一度は感謝しました。ですが、私は人形じゃありませんわ!王家の操り人形になるくらいでしたら、私は喜んで平民の元に行きます。そこで、新たな人生を歩み出しますわ!!!こんなバカみたいな話に巻き込まれるくらいだったら、貴族なんて止めて正解ですわよ!!!」
マリアの主張は筋が通っていて、会場に居合わせた客人の中には、マリアの言っていることが正しいと考える者も一定数いた。そして、そのことに薄々気が付いたバビンスキーは、マリアに太い釘を刺した。
「おい、マリアよ。誰が君に自由を与えると言ったのだ?爵位を奪うだけではないぞ。これから、君を監禁するのだ!」
「監禁ですって?」
「そうだ、王宮の近くの森に、君専用の監禁小屋を作るから、そこで生活するんだ。ああ、とは言っても、君は外に出ることはできない。一生、部屋の中で生活するんだ!そうだな……君が罪を認めて謝罪する気持ちが芽生えたとき、解放してあげよう。それでどうだ???」
どこまでも意地汚い……マリアはバビンスキーのことをそう思った。だが、今のままでは確かに罪人なのだから、このような仕打ちは仕方ないと思った。
「分かりました。良いでしょう。その代わり、私は決して罪を認めるつもりなんてございませんから、一生監禁小屋で生活することになると思いましょうが……生活のための食事とか、衣装とか、そのようなものは永久的に支給してくださるのですね?」
マリアがこのように質問すると、バビンスキーは、苦虫をかみつぶしたかのような表情に一瞬なった。しかしながら、よくよく考えてみれば、今回の婚約破棄の全貌をあからさまに暴かれず終結させられると思えば、それはそれで悪くない話だと思った。
「まあ、いいだろう。しかしながら、人は常に自由を求める生き物だ。いずれ、罪を認めることになると思うがな……」
そう言って、バビンスキーは、本来ならば自分の警護に当たる侍従たちを何人か呼びつけて指示を出した。
「元公爵令嬢のマリーを一時的に隔離しろ。そして、隔離小屋が完成したら、そこまで移送するんだ」
侍従たちはさっそくマリアの身柄を拘束し、ひとまず牢屋にぶち込んだ。
隔離小屋は2日後に完成し、マリアは完成してすぐに、移送された。
小屋の鍵が閉められる前に、侍従たちが最後の説明をマリアにした。
「申し上げておきます。バビンスキー様のご提案により、食事や衣装に関するご要望につきましては、柔軟に対応なさるとのことであります。また、隔離解除の条件でございますが、この度の罪を認め、正式に謝罪することとなっております」
「ありがとう。承知しました」
マリアは、ここまで手厚く移送してくれた侍従たちに礼を述べた。侍従たちは、
「お元気で」
と言い残し、ドアを閉め、鍵をかけた。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
捨てられた悪役はきっと幸せになる
ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。
強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。
その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。
それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。
「ヴィヴィア、あなたを愛してます」
ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。
そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは?
愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。
※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる