婚約破棄された令嬢は第二の人生を謳歌して狭い自由を手に入れる

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その5

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マリアによって傷つけられたバビンスキーは、そのまま家に帰ろうと思ったが、マリアはそれを赦さなかった。死んだ魚のような目で、バビンスキーのことを睨み付けた。すると、面白いことに、バビンスキーはまるで退路を絶たれたかのような顔をして、その場に立ちすくんでしまった。

「バビンスキー様?あなた、このまま帰るおつもりですか?」

バビンスキーは、マリアがこれほど攻撃的な女であることを知らなかった。そして、自分に対して非常に恐怖となることを悟った。そのため、マリアの声を聞くだけでも、ぞっとした。思わず耳を塞ぎたくなるほどだった。それでも、マリアの攻撃は決して止まることはなかった。

「ああ、いいんですよ?私はもうあなたの婚約者ではありませんからね?でもね、今の私はあんまり機嫌がよくないものですからね。ですから、バビンスキー様、あんまり調子に乗らないほうがいいですよ?もし、私の言うことが聞けないと、そのときは……どれくらい暴れるか分かりませんからね?」

マリアの不気味な笑いを見て、バビンスキーは、

「はい、分かりました。お望みを聞きましょう」

と、あっさり答えてしまった。これにより、マリアの要望に逆らうことは、できなくなった。

とぼとぼと帰っていくバビンスキーの姿を見て、マリアは高笑いした。

「これでいいのよ、これで。ああ、もっとあの役立たずな王子様をこき使って……この国でも滅ぼしてやろうかしら?」

マリアは少し調子に乗っているように思われても仕方がなかった。看守はマリアの独り言を聞いていた。でも、今回は驚かなかった。王子バビンスキーに対して毅然と対応するマリアは、本当にかっこよかった。

「あの時は助けて頂きありがとうございました!!!」

看守はそう言って、マリアに対して頭を下げた。これに対して、マリアは、そんなことは決してない、とでも言いたげに首を横に振った。

「ああ、私は罪人なのですから、どうか、そう言うことはおやめください。ただ、私は昔からこういう性格なのです。納得できなかったら追及して攻め込む……まあ、これがバビンスキー様に見限られた理由なのかもしれませんが……」

マリアはしみじみと過去を回想した。そして、あれほどバビンスキーとケンカした日々がなぜだか懐かしく感じた。もしもう一度だけチャンスがあるのならば、あるいは……。


静かなる大地の夜を迎え、マリアは相変わらず料理を続けた。バビンスキーに新たに注文した食材がすぐさま届けられて、マリアはハッピーだった。そして、看守の分も作ることにした。

看守は、

「そんな、私なんかにもったいないでございますよ!!!」

と言ったが、これは全てマリアの好意だったので、遠慮なく御馳走になることとした。

「ねえ、この世界の夜は少し長すぎると思わない?」

マリアは、看守に頼んで小屋から出た。そして、二人でマリアの料理を嗜んでいた。

「それは、この世界に限った話ではありませんぜ。宇宙がそうなっているから、仕方ないのでしょうな」

「まあ、そうなんだけどね。ああ、私はあんまり暗いのが好きじゃないのよ。だってほら、暗いとまともに人の顔を見ることができないでしょう?そしたらさ、私を狙う敵が近くまでやって来ても、中々気付かないじゃない?そう考えると、本当に怖いのよ。まあ、そんなこと言ったら、バビンスキー様が気を悪くして、この小屋目がけて砲弾でも撃ち込んでくるかもしれないけどね……」

マリアは一人で吹き出した。自分で言っていることがあまりにもおかしくて、どうしてこんなことを言ってしまうのだろうか、と不思議に思ったのだ。

「まさか……いくらなんでもそんなことは、ないでしょう?」

「いやあ、それは甘いわね。最近、お城の方でガタガタうるさいでしょう?あれはきっと、鉄砲だか、大砲だかの練習をしているのよ。バビンスキー様ったら、また新しい戦争でも始めようとしているんじゃないかしら?」

「戦争ですって!そりゃ、いけませんね!!!」

看守は急に立ち上がった。

「あら、どうして?」

「そんなの、決まっているじゃないですか!我々平民が、末端の兵士として死ぬ運命を植え付けられるからですよ!!!冗談じゃない、戦争なんて、歴史で十分なんだ!!!」

「なるほど……確かにそうよね。私たち貴族がのほほんとしているわけだけど、あなたのお仲間が死ぬことになるわけだからね……」

「ええ、ですから、貴族と言うのは非常に身勝手なのです!!!そんなことをされたら、私は絶対に戦争に行きませんよ!!!」

「大丈夫よ。今のは冗談だから。あの人に限って、そんな勇気はないでしょうから」

「本当ですか?」

「私相手にあれだけ脅えているのよ?そんな人が戦争なんてできるわけないでしょう?」

「確かに……おっしゃる通りでさあ!!!」

看守は、マリアがバビンスキーに頼んだ高級ワインをぐいぐいと飲んでしまい、調子がでてきて、歌を歌い続けた。平民の流行歌、というものなのか、あるいは、貴族を風刺する歌と言えばいいのか、とにかく、貴族が聞くと非常に下品だと感じる歌だった。でも、マリアは手拍子を添えて、看守の歌を聴き続けた。



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