聖女様を事故死させてしまったので、即刻悪役令嬢認定されて、婚約破棄されました

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その1

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「グラハム!早くこの馬車を止めてちょうだい!」

「お嬢様!しかしながら、馬が言うことを聞かないのでございます!!」


第一王子ツァイスとの会談を終えて、王宮を後にした令嬢エリーナの乗る馬車が暴走し始めたのは、ほんの五分も前のことだった。それまで、エリーナは側近のグラハムと車内で歓談していた。

「それにしてもお嬢様。この度、第一王子ツァイス様との婚約が成就いたしませば、我がリヒテル家にとって、これほど栄誉なことはございません!」

「グラハム、これもあなたの尽力の賜物です。私は、あなたに深く感謝しています」

「お嬢様!とんでもないお言葉です!」

エリーナは、先祖代々公爵の地位にあるリヒテル家の長女だった。エリーナの父に当たる、第14代リヒテル公爵は、今までの中で最も皇帝に近いポジションまで上り詰めた。この度の婚約は、そんな父、いや、リヒテル家にとって非常に栄誉なことだった。

「ツァイス様も非常に喜んでいらしたようですぞ!エリーナ様があまりにも美しいので、目を回してしまったのですな!」

「まあ、グラハム。冗談はよしてよ。私なんかより、王宮にいらした方々の方が、よっぽど魅力的だったわよ」

「エリーナ様。それはいけませんな。この世界において、近親婚は最も重大なタブーでございますからな。いくら、王家の方々が魅力的だとはいっても、ツァイス様と婚約することはできません!」

「ああ、そうだったわね!とすると、私は次にこの世界で美しい令嬢と言うことになるのかしら?」

話が盛り上がってきたところで、事件は起きた。馬車のスピードが急に速くなったのだ。グラハムは身を乗り出して、馬に鞭を打った。

「もう少しゆっくり走れ!」

ところが、馬はスピードを落とすことはなく、逆にどんどんどんどん速く走りだした。

「グラハム!どうしたのよ?」

「馬が言うことを聞かなんです!どんどんどんどん走るものだから、このままいくと、あの森に突っ込みますよ!」

あの森とは、王家が所有している別荘の入り口だった。森自体の出入りは自由だが、非常に広大であるため、無暗に足を踏み入れると、自分の居場所が分からなくなるので危険、と言われていた。

「突っ込みます!!!」

「いやああっ!!」

二人の意識は遠のいていった。しばらくして目を醒ますと、馬車は森の入り口で止まっていた。

「助かったのか……ああっ、お嬢様!」

先に目を醒ましたグラハムが、エリーナを介抱した。エリーナも少しして目を醒ました。

「グラハム……私たち、助かったの?」

「さようでございます!この通り、傷一つありません!」

「ああっ、良かった……」

エリーナはぼんやりとしていた。グラハムは立ち上がって、辺りを見回してみた。

「それにしても不思議だ。あれだけ暴れてた馬車が、どうして急に止まったんだろう?」


馬車は横倒しになっていた。そして、馬車の下に、誰か人がいることが分かった。

「おい!しっかりしてください!大丈夫ですか?」

グラハムは顔を真っ青にして、必死に馬車を引き起こそうとしたが、とても無理だった。

「いいんです……あなたたちに……怪我がなければそれで……」

か弱い女の声だった。

「しっかりしなさい!お嬢さん。今、助けを呼んできますから、もう少し頑張ってください!!」

グラハムは、助けを呼ぶため、辺りの町に駆け込んだ。

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