上 下
12 / 55

その12

しおりを挟む
「あの事故に巻き込まれた少女は、令嬢エリーナ様のご友人だと判明いたしました!」

「ご友人だって?」

「はい、名前を…………」

ツァイスは、事件の詳細について、改めて聞いた。

「よくよく考えてみると、ツァイス様がおっしゃる話には、不可解な点がいくつかございます。やはり、聖女様が人間世界にやって来て、人助けをするなんてことはあり得ないのだと思いますよ……」

しかしながら、ツァイスは、自分の意見を決して曲げようとしなかった。

「だとすれば、その友人とやらが、聖女クロルなのだ!そうだろう?」

「ツァイス様、あなたはどうして、頑なに聖女様の話を持ち出すのですか?」

侍従がつっこみをいれると、ツァイスは、少し慌てて、

「私がそうだと言えば、それが正しいのだ!」

と怒鳴った。

「とにかく、令嬢エリーナ一族の流刑は変えない!そのように心得よ!」

ツァイスは一人で突っ走った。
しおりを挟む

処理中です...