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その13

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一方、エリーナとグラハムは一旦実家に帰った。貴族裁判の準備をしつつ、久しぶりにのんびりすることができそうだった。

「ただいま!今帰ったよ!」

エリーナが玄関をくぐると、真っ先に飛び出してきたのが、弟のテイルだった。

「お姉様お姉様お姉様!!!お帰りをお待ちしておりました!」

「どうして私が帰って来るって知ってたの?」

「知ってるも何も、私はこの通り、朝から晩までお姉様が帰っていらっしゃるのを首を長くして待っているのでございますよ!」

これが将来の第15代リヒテル公爵になるというのだから、エリーナは少し心配だった。幼い頃から姉を慕う弟だとは思っていたが、遂にここまで来たかと思うと……言葉が見つからなかった。

「はいはい、それはどうもありがとう。姉として嬉しいよ」

「嬉しいんでございますか、お姉様!」

子犬のように引っ付いて来る弟のことを、少しだけ可愛いと思ったのはここだけの話。

「それはそうと、第一王子様との婚約はいかがなさったのですか?」

「えっとね、その話なんだけど……」

エリーナは中々話を始めたがらなかった。すると、テイルはますます興味を持ち始めた。

「私に隠しごとなんてしないでくださいよ。それとも……ひょっとして何か問題でもあったのですか?」

テイルの表情が暗くなった。

「そんなことはないのよ。ただね…………」

エリーナは一向に話すことができなかった。
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