マッチ売りと坊や

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クリスマスを呼ぶ

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「マッチはいりませんか」
 
 高く澄み切った、まるで聖歌を歌う子供のような声でした。雪のように白くすき通ったはだに、きちんと整った顔立ちのお母さんは町中の人気者でした。

「一つくださいな」

 坊やと同い年くらいの子供がやってきました。お母さんは、

「あら、お使い?えらいわねえっ」

 と言いました。子供はほめられて、すごくうれしそうでした。

「いいクリスマスがやってきますように」

 お母さんは子供に言いました。

「ありがとう!」

 そう言って子供は来た道を帰って行きました。

「今日はずいぶん寒いわねえ……」

 次にやってきたのは、近くのパン屋さんでした。

「本当にそうですね。お体は大丈夫だいじょうぶですか?」

 パン屋さんは、坊やから見るとおばあさんくらいの人でした。心配になるのは当然でした。

「これくらい問題ないわよ。昔の方が寒かったんじゃない?」

 パン屋さんは白い息をはき続けながら笑いました。

「30本くらいまとめてもらうよ」

 
「そんなにいいんですか?」

 お母さんはおどろきました。1日10本売るのも大変なのに、1人で30本も買ってくれるというのですから。お母さんは、あわててマッチを数え始めました。

 パン屋さんはそっと坊やの方を指さして、

「あなたの大切な坊やに洋服でも買ってあげてちょうだい」

 と言いました。

「ありがとうございます」

 お母さんはパン屋さんに感謝かんしゃしました。

 結局けっきょく、ほとんど全てのマッチを売り切りました。お母さんは坊やが座っているベンチに向かいました。坊やはお母さんがにっこりと笑っているのを見て、目をぱあっと光らせました。

「よかったね!」

 坊やはそう言いました。

「ありがとう。坊やのおかげだよ」

 お母さんは坊やをぎゅっときしめました。

「そうだ、お母さん。余ったマッチはないの?」

 お母さんは3本のマッチを取り出しました。

「今日はいつもより少ないけれど……これからお祝いしましょう!」

「うんっ!」

 お母さんは坊やの手をつないで、歩き始めました。




 
 
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